妊娠中にステロイド外用剤を使用しても大丈夫か?

妊娠中は生まれてくる赤ちゃんに影響が出ないよう、薬の使用に注意します。
妊娠中に強い副腎皮質ホルモン剤(いわゆるステロイド)外用剤の使用が、生まれてくる赤ちゃんの低体重に関係するという報告が今年の3月にありました。イギリスでの研究です。口蓋裂や早産、死産との関係はなかったとのことです。参考文献
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越冬コリアンダーの花と初イチゴ
asuparanohama
アスパラガスの花
nobironohana
ノビル(野蒜)の花芽(花になるか?)


ステロイド(副腎皮質ホルモン)外用剤の説明書(医療用医薬品添付文書:いあわゆる能書)にはたいてい、
・・・妊婦又は妊娠している可能性のある婦人に対しては大量又は長期にわたる広範囲の使用を避けること。〔動物実験で催奇形作用が報告されている〕・・・
と書いてあります。皮膚科で使用するときにたぶん一番弱い薬として処方することの多いロコイドやデルモベートには負けるけれどかなり強い薬の代表であるマイザーまで、表記はだいたい同じです。
ステロイド外用剤の中で世界で一番強いデルモベートには、さらに強い制限が表記されています。
・・・妊婦又は妊娠している可能性のある婦人に対しては使用しないことが望ましい[動物実験(ラット)で催奇形作用が報告されている]・・・
と書いてあります。
これらの根拠になっている動物実験は1975年ごろや最近では1990年ごろに行われたものです。副腎皮質ホルモン剤による妊娠や胎児への影響については、動物実験(外用ではなく注射や内服による投与)で低体重、口蓋烈、胎盤機能不全などが起こることが示されていましたが、実際はどうなのかよくわかりませんでした。
今年の3月にイギリスから妊娠中のステロイド外用剤の使用が生まれてくる赤ちゃんの体重に関係するという報告がありました。参考文献
最終月経の85日前から出産までの期間にステロイド外用を行った方と行わなかった方、だいだい半分ずつ、合わせて約4万4000人について比較した報告です。
結果
・全例を対象に比較したところでは、ステロイド外用剤の使用と赤ちゃんの体重、口蓋裂、早産、死産との関連はなかった。
・強い、とても強い(イギリスにおけるステロイド外用剤のランキング表示)にランクされる外用剤を使用した方だけ(弱い、あるいは中等度の強さのステロイドを使った方を除外)について比較すると、生まれた赤ちゃんの低体重(2500g未満)との関係が認められた
・口蓋裂、早産、死産については、ステロイド外用剤の使用との関連は認められなかった。口蓋裂については妊娠初期12週に外用を行った方について比較しても差はなかった。早産については最終月経前に外用していた方について比較しても差はなかった。死産、流産については外用していたステロイドの強さとの関係についても調べてみたが関係なかった。
この研究の問題点 April 2011 Journal Club Article: Potent Topical Steroids during Pregnancy Affect Newborn Birth Weightより
要約だけみるとショッキングですが、いくつかの問題があるようです。
例えば、ステロイドを外用せざるをえない皮膚の病気自体(アトピーなど)と赤ちゃんの低体重との関係をみていない。もしかしたら病気と低体重の間に直接関係があるのであって、外用剤は関係ないのではないか?他にもアルコールの摂取、BMI,社会的背景などが考慮されていないなどです。でも、公的なデータベースを使用した研究ですから得られる情報に限りもあります。
この報告によって、妊婦さんに少し詳しく説明できるようになりました。重要な報告だと思います。
肩が凝ったので、くだらないあとがきを少し。
朝味噌汁を飲む人と飲まない人をそれぞれ100人ぐらい集めて、高血圧や糖尿や癌の有無を比較したとします。味噌汁を飲む人の方が持病が少ないという結果が出たとします(あくまでも私の創作文ですので、為念)。似たようなことはよくテレビのバラエティーで取り上げられます。毎日味噌汁を朝飲む方と全く飲まない方というのを想像してみます。習慣的に朝ご飯自体を食べないのか、和食と洋食の好み、日常的に健康に注意する方(喫煙、飲酒)なのかどうか、などいろいろな背景の差が浮かびます。こういう背景要因を考慮した比較が必要になります。多変量解析というような統計が行われます。
京都に出張したときは季節があえば必ず「すぐき」を買います。好物なんです。あるとき帰りに買おうと思ったら軒並み売切れになっていたことがありました。聞けば昼にやっているある人気番組ですぐきが前日紹介されたんだそうです。

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