今週末の札幌は晴天で最高気温が30度近くまで上がりました。強い紫外線で街中を彩る花や新緑の色が際立ち、スマホを向ければどこを撮っても美しい写真になります。
さて、偶然入った古本屋で「日本の色」という本に目が留まりました。大岡信さんによる朝日選書(1976)版講談社(1980)版が並んでいたので両方購入しました。日本人は色というもの(あるいは色を表現する言葉)をどのようにとらえてきたのか、ということに関して源氏物語や枕草子などを題材にした座談会や言語学者、染色家、歌舞伎役者、画家、などにより、いろいろな分野からの意見が掲載されています。どの項も面白かったのですが、特に気に入った記述を書き留めておきます。
草森神一(評論家:音更町出身)
日本人にとって色=物だった。それは自然から盗み取ったものであり、したがって色を表現する名詞は数限りない。ある物体の色は固有のものではなく照らされた光の強弱によって移ろう。したがって固有の物に関連付けられた色は定まった色ではない。日本人は色の分類に物足りなさとむなしさを感じたのではないか、と述べておられます。
この解釈はけっこう面白いと思いました。植物や花、動物、自然現象、などの名前が付けられた色名の始まりはそうだったのかもしれません。ただ、古代から色の名は顔料や染物の色合いを元の物質名で表現してきました。色名は様々な要素(用途)でつけられてきたんだと思います。
大野 晋(言語学者:東京出身)
西洋における色と言語との関係を解説した書籍「言語が違えば、世界も違って見えるわけ (日本語) ガイ ドイッチャー (著),椋田 直子 (翻訳)では色名は、黒、白、赤、の順に始まって、白と黒は明るいと暗いを起源にしていると解説されていました。日本でもこのような意見が多いのですが、大野は言葉のアクセントから、たとえば”黒”は”暗い”、とアクセントが異なり、むしろ顔料系(土由来)の黒系統を指す言葉を起源にしているのではないかと述べています。
皮膚科の実習時には皮疹の医学的表現を学生に教えますが、せいぜい、明るい赤、淡い赤、暗い赤(黒ずんだ赤)、紫がかった赤、白っぽい赤、程度です。
・・・色は診断上とても大事なのです。明るくて淡い色の赤はでき始めの皮疹、濃い赤は最盛期、黒ずんでくると終盤、など、皮疹ができてからどのくらいたっているかを推測できます。また、良性のリンパ腫は明るい赤、悪性リンパ腫や内臓がんの転移などは暗い赤色を示すことが多いと個人的には思っています・・・
もちろん色はグラデーションでつなぎ目はなく、3要素(色相・明度・彩度)によって多彩な調子が出せます。(個人差が大きいですが)人間の眼がどの程度区別できるのか、という問題もあります。今、皮膚科領域でもAIを用いた診断法の研究が進んでいます。完成されたAIはばらついた条件下で色をどの程度参考にしているのか興味があります。

 

COVID-19 新型コロナウイルスによる皮膚の症状

新型コロナウイルス(COVID-19)の問題が続いています。報告によってばらつきが大きいのですが、皮膚に症状が出る方もいるようで、新型コロナウイルス(COVID-19)感染で皮膚に症状が出た患者さんが報告されるようになりました。すべてを紹介することはできませんが一部を紹介します。(リンク先には実際の皮疹の画像が出ていますので見たくない方はご注意ください)(私自身は新型コロナウイルスに感染していて皮膚に症状が出た患者さんを診たことはありません。したがって、以下の記述は論文の記載に基づいたものです。)

論文1

https://www.nebraskamed.com/sites/default/files/documents/covid-19/addendum-f-cutaneous-findings-reported-in-covid-19.pdf

皮膚の症状はあまり特徴のない播種状型(はしゅじょうがた・・・細かい赤い斑点がたくさん出るタイプ・・・点状の出血を伴うことがある)が多いようです。このぶつぶつ型は風疹やはしか(麻疹)だけでなく、ウイルスや細菌に感染した時に出る皮膚の症状で最も多いタイプで、薬剤のアレルギー(薬疹)でも最も多いタイプです。つまり、このタイプの皮疹では皮膚の症状だけから原因の病原体を推測するのは皮膚科医であってもかなり難しいです(経過や他の症状や検査所見を参考にしますが・・・)

凍瘡型(無痛)・・・つまり、シモヤケ(しもやけ)型

凍瘡様皮疹の論文 https://onlinelibrary.wiley.com/doi/epdf/10.1111/ced.14243

手足症候群様(有痛)(てあししょうこうぐん)・・・パルボウイルス(リンゴ病)、EBウイルス(伝染性単核球症)、抗がん剤(分子標的薬)などでおこります。手の平や足の裏が真っ赤になります。焼けつくような痛みをともなうことが多いと思います。

皮斑型(ひはんがた・・・リベド型)・・・赤い網目が主にすねや腕に出る状態です。Transient Livedo Reticularis 一過性(いったん出るがすぐ消えるという意味)網状皮斑 https://www.jaad.org/article/S0190-9622(20)30558-2/pdf

Digit Ischemia 手足の先端の血流が悪く紫になる状態です。よくある病気としては、抗リン脂質抗体症候群(自分に反応する抗体(自己抗体)ができて、血液が固まりやすくなる状態)や動脈硬化などによる心臓から遠い部位(手指、足趾、耳、鼻先など)に血が回らず紫になる状態などで観察されます。

 論文2 https://www.joidairouso.com/bb/img/207_2.pdf

一部抜粋 From the collected data (88 patients), 18 patients (20.4%) developed cutaneous manifestations. 8 patients developed cutaneous involvement at the onset, 10 patients after the hospitalization.

88人の感染者のうち18人(20.4%)に皮膚の症状があった。8人は感染症状が始まった時から、10人は入院後に皮膚に症状が出た・・(うはらコメント:最初から出る方と重症化してから出る方と半々ぐらいということですね・・・つまり皮疹の経過で感染時期についてどうこう言えない)

Cutaneous manifestations were erythematous rash (14 patients)widespread urticaria (3 patients) and chickenpox-like vesicles (1 patient). Trunk was the main involved region. Itching was low or absent and usually lesions healed in few days. Apparently there was not any correlation with diseases severity.

皮膚の症状は18人中14人 はrash(ぶつぶつ型・・・風疹やはしかのような状態)、3例はじんましん型、1例は水痘(ミズボウソウ・・・小さい水ぶくれがたくさんできる)。かゆみはないか、あっても軽い。2-3日で皮膚の症状は消える。皮膚に症状が出たからと言って本体の重症度と関連しない。

中国からの報告では皮膚に症状が出た方の比率はかなり少ないです。でも皮膚の症状はいつ出るかわかりませんし、すぐに消えてしまうこともあるので正確な数字を出すのは難しいかもしれませんね。

皮膚科医の立場でいえば、全身にぶつぶつが出た方と手足の先のしもやけ様の症状、血栓症や血管炎を疑う網目状の皮膚症状があれば、新型コロナウイルスの感染を考えないといけない、ということになります。しかし、ぶつぶつ型が多いので、今のところ、皮疹の性状から新型コロナウイルス感染を否定する(あるいは疑う)のはかなり難しいということになります。皮膚症状そのものが患者さんの生命を脅かした重症型の皮疹を発症した患者さんは今のところ出ていないので、今のところはまず、皮膚以外の症状(呼吸や味覚、聴覚、発熱、下痢など)に注目して治療方針を決めたほうがいいということかもしれません。

ただ、一点気になるのは、ぶつぶつ型に小さい出血を伴うことがあること、シモヤケ型(皮膚の細い血管の破壊)、皮斑(網目状:皮膚の血管がつまっているか、血管自体がつぶれている)型です。これはウイルス感染によって自分の凝固線溶系(ぎょうこせんようけい:血を止める、あるいはサラサラにするシステム)や血管を攻撃するミサイル(抗体)ができる方がいるということかもしれません。これは怖いです。肺炎の機序とは直接関係しないかもしれませんが、脳や腎臓に問題が起きる可能性がないか心配です。

*以上、この記事は個人的な解釈を多分に含みます。まちがっているかもしれません。新型コロナウイルスについては様々な憶測が飛び交っています。まずは公的な施設からの見解を第一にしてください。

本文とは関係ありません。赤と緑が混じった若葉がきれいです。

鳥の祖先が恐竜なら・・・恐竜もカラフルだったらいいなと思った。

 

 

利き腕と反対の手が荒れている 手荒れ

コロナウイルスの感染対策でアルコールで手をしょっちゅう消毒するせいか、少し手が荒れ気味です。このアルコールもいつまでもつか心配です。

手荒れの多くは洗剤とお湯による皮膚の表面のバリア(あぶら)が落ちたところに食品などの様々なものが皮膚に染み込んでかぶれていることが多いと思います。主婦湿疹などと呼ぶことがありますが、これはちょっと(すごく?)問題のある病名かも知れませんね。一人暮らしを始めた学生や社会人1年目の男性がそろそろ外来にぽつぽつ来始める季節です。(人のことはいえませんが)お母さんにこれまでずっとやってもらってきたこと、家事、の大変さに気づくわけです。もちろん職業性のものもあります。

手荒れ、とくにかぶれ(かぶれ(接触皮膚炎:せっしょくひふえん)は、よく使う方の手が荒れますから、右利きの方は右手の方が左手より症状が強いことが多いです。でも逆だったら・・・・・。医師になったばかりの1年目、先輩の先生が患者さんに利き腕まで聞く必要性を教えられて驚いたことがあります。皮膚病は原因が身の回りの生活と密接にかかわっていることが多いので、患者さんにいろいろ聞く必要があります。

関連記事

職業による手荒れ

手が荒れているときは素手でカニを食べないほうがいいかも

手荒れの原因 ランキング

絆創膏(ばんそうこう)による皮膚炎

かぶれ(医学用語で接触皮膚炎)は皮膚に起きるアレルギーの代表的な疾患です。アレルギーでない場合もあります。たとえば洗剤やお湯などで皮膚表面の角層(大切なバリアです)が壊れ、皮膚から保湿成分が抜けてガサガサになってしまう・・・これはアレルギーではありません(ただし、バリアが壊れた皮膚から食品や植物の汁などがしみ込んで、次に本当のアレルギーになることはよくあります。)

かぶれは原因となるものに触ってなるため、触ることの多い(よく使う)部位に一番強く症状が出ます。右利きなら右手の親指と人差し指がいちばん荒れやすい部位です。右利きなのに左手の症状が強い場合はなぜそんなことが起きるのか考えなくてはなりません。

たとえば、

シャンプーやリンスや化粧品のローション剤のかぶれ・・・ローション類は右手でボトルをつかんで左手の手の平に出します。よって左手の中央に一番強い症状がでます。

たとえば左手の甲に症状が強い・・・なぜか手の水虫は利き腕と反対の手の甲に一番強い症状が出ることがあります。たぶんあまり使わない部位のほうがいごこちがいいのかもしれません(全く個人的な印象です。根拠はありません。)

最近も右利きなのに左手のほうが症状が強い方が受診されました。職業は調理師さんでした。通常包丁を持つのは右手、左手で食物を抑えます。扱っている食材の何かが合わないようです。

かぶれはよくある疾患ですが、その原因を突き止めるのは推理小説を解くのに似ていて、皮膚科医の腕の見せ所です。原因がはっきりすれば治療も不要になります。ただ手は使わずにはいられないので予防はなかなか難しいですね。

先週ぐらいから延齢草(エンレイソウ)が咲き始めました エゾエンゴサク(蝦夷延胡索)も一緒

繁殖期だそうです。

感染症の世界史 石弘之著

新型コロナウイルス、coronavirus  disease (COVID-19:コビッド ナインティーン)の感染が拡大しています。”感染症の世界史 石 弘之著”は先日本屋さんで偶然みかけて購入しました。中身をチラ見したときに、(私の大好きな)ホモサピエンスの移動と感染症の関連について記述されていたからです。帯には今回のコロナウイルスの発生に関わる文言が記載されていて、便乗的な感じもしますが、本はとにかく手に取ってもらわないと読んでもらえないので仕方ないですね。平易でわかりやすい記述で一般の方にもお勧めできる内容だと思います。

 

関連記事

アフリカを出たホモサピエンスが運んだ感染症

ピロリ菌はどこから来た?

肝炎ウイルスと人類の旅路

ハンセン病はどこから来た?

ウイルスの大いなる旅路

いただいた一輪挿しにお花を生けました。買ったときにはなかった小さい白い花がポツポツと増えてきました。なんとなく2度楽しめて得した感じ。

 

本書を読むと、今回の新型コロナウイルスで起きているような問題は、過去何度も繰り返されてきたことがわかります。歴史的に感染症によるパンデミック(世界的流行)は後で振り返れば、対応に関してさまざまな問題が潜んでいたことが判明します。ただ、事態が急速に悪化している真っただ中にいるときは先がよく見えません(感染症に限りませんが)。本書を読んでいて今回の新型コロナウイルス感染やリスク管理について特に思った個人的な印象を書き留めておきます。

1)これまでの対策を振り返って対応に関する問題点をあぶりだすことは大切です。でもその目的は、(火中にいる今現在は)今後(目先)の対策に利用するための資料として使うためです。当事者を非難している暇はありません。「これからどうする」ということを皆で考え、前を向くことが大切だと思います。

2)問題が起きたときに、対策(大きければ大きいほど市民生活は制限され、経済的な問題も大きくなります)を決断をしなくてはならない者(今回は政治家や感染症対策に関わる公的機関)の負担は大きいと思います。先が見えない中で判断を迫られた事柄を描いた映画はたくさんあります(ずれているかもしれませんが、例えばジョーズ。海水浴場に巨大ザメが現れたときの遊泳禁止の決断・・・観客はみんな、早く遊泳禁止にすればいいのに、と思ったはずです。自分には利害関係がないから、ある程度冷静?な判断ができる?)。

命にかかわることであれば、少し(これが難しいのですが)大きめの対応が望ましいと個人的には思います(初診で具合の悪い患者さんをみたときの医師の対応がまさにそれです)。そして、問題が過ぎ去った後で、その対応が大きすぎたかもしれないと評価された場合(予想よりも大事なく事件が過ぎ去った場合)に、過剰な対応を決断した責任者を強く責めてはいけないと思います。もし責めすぎれば、次に起きる事件に対して過小な対応がなされる危険性が出てくるかもしれないからです(地震や津波速報なども同じだと思います)。2014年のエボラ出血熱の感染爆発のとき、(国境なき医師団の警告にも関わらず)対策が後手にまわったWHO(世界保健機構)が批判されたときのことが本書に出てきます。もちろん官僚主義的な組織の問題もあったようですが、2009年の新型インフルエンザの流行に関しての失敗が2014年のエボラ感染時の過小評価に影響を与えた可能性を著者は指摘しています(WHOは警戒レベルを最高の6に設定したが、結局弱毒株で問題にならなかった。日本も2500万回分のワクチンを320億円で輸入したが、1600万回分は破棄、800万回分は90億円の違約金を払ってキャンセル)。

レゲエの神様 ボブマーリー(Bob Marley)とメラノーマ

レゲエの神様、ボブマーリー(Bob Marley)は足の親指にできたメラノーマで亡くなりました。10年前に、このブログで書きました。(ボブマーリーとメラノーマ)。ほとんど反響はありませんでしたが、昨年ある皮膚がんの会議で演者の先生が少し触れてくれました。嬉しかったので再掲します。

記事とは関係ありません。世の中が大変なことになっているので、早く春と夏が来ないかなぁ、という気持ちを込めて、去年の夏の思い出(積丹半島)。

以下は2010年5月10日の記事

今日はこどもの日。ここ何日か気温が高くて夏のようです。
でも風は気持ちいい。No, Woman, No Cry やOne loveを聞きながら、EIGO21というサイトで訳をみていたら、Bob Marley(ボブ マーリー)はメラノーマで亡くなったと書いてありました。足の趾のメラノーマで亡くなったんだそうです。てっきり脳腫瘍だとばかり思っていました。そこで、ボブ マーリー(Bob Marley)のメラノーマについてちょっと調べてみました。2回連続です(次の記事はこちら)・・・2020/3/1コメント・・・10年前と今では治療法が大きく変わりましたので、10年前の治療についての記事は不正確なところがたくさんあります。

関連記事:
星飛雄馬の恋人・美奈さんはメラノーマじゃなかった?
爪に黒い線(スジ)が入っている

まず、言い訳から。WEB上のいろいろなサイトから仕入れた情報ですので信憑性に自信がありません。間違っているところがあればコメントください。
参考にしたWEBサイト
Melanoma – Not a Respector of Persons
How and why did Bob Marley die?
ボブ・マーリーのメラノーマの経過
右足の親趾に友人たちとサッカーをしていてできた古傷があった。1977年7月に傷が治らないことに気づいた。爪の下で腫瘍が急に増大し、ダンスにも影響が出てきたので医師の診察を受け、メラノーマ(悪性黒色腫)と診断された。切断をすすめられたが、宗教上の理由で切断せず。(不確実情報だが)、そのかわりに植皮を受けた(腫瘍の上に植皮をしてもつかないので、たぶん悪い部分のみそぎ落としたのか?・・・私の想像)。1980年の夏の終わりにはメラノーマが脳や肺や胃に転移。それから1年後の1981年5月11日、ジャマイカへ帰る機上で様態が悪化し、マイアミに緊急着陸したが病院で死去。
まず、爪(爪下)のメラノーマについて
手足の裏や爪のメラノーマは白人以外に多いという説がありますが、紫外線が原因ではないメラノーマですから、人口当たりの発生数だけみれば人種差はあまりないと思います。日本人のメラノーマは手足に多いというのと同じです。
USAの白人のメラノーマの年間発生率は10万人当たり10-15人、スペイン系が3-4人、黄色人種や黒人が1-2人です。白人のメラノーマのほとんどは日光が当たる部位にできます。人種ごとの全メラノーマ発生数に爪のメラノーマの割合をかけると、だいたいどの人種でも年間100万人に1-3人程度の指趾の爪にメラノーマができる(診断される)といえます。ボブ・マーリーはすごく珍しい病気になってしまったわけです。
さて、ここからは本題へ。私の個人的な検証と意見をちょっと
1)サッカーでできた傷がメラノーマの原因だったのか?・・・可能性はあります。
傷が関係している可能性を示すデータ:
手や足の指趾のメラノーマのほとんどは親指(趾)にできる。メラノーマは手よりも足に多いが、爪のメラノーマは手の指に多い・・・つまり傷ができやすい、外傷を受けやすい部位に多い感じがする。足の裏の皮膚に出来る場合も、趾球やかかとなどの荷重部に多い感じがします。また、初診のときに患者さんにお話を聞くと、金槌で指をつぶした、物を落として爪が割れた、などの後に傷ができ、それが治らず(ジクジクしていた)逆に盛り上がってきた・・・などという経過を良く聞きます。
でも、怪我をする前に爪に黒いスジがありませんでしたか?と聞くと「そうだった」とおっしゃる方も結構います。この場合は、早期のメラノーマがあったところに外傷を受けて、急に大きくなり始めたという可能性もあります。傷を治そうとする力(指令)が癌細胞の成長(性格変化)に影響を与えたのかもしれません。

爪に黒い線(スジ)が入っている(爪は記録用紙だ!)

指の皮膚が割れて痛む・・・ポリウレタンフィルムがおすすめ

癌に対する新しいお薬がたくさん出ていますが、特に飲み薬の分子標的薬(細胞が増えるための指令(信号)を受ける受容体(スイッチみたいなもの)にくっついて信号を受けられなくしてしまうお薬)の中にはニキビや爪の周りの炎症や手指のひび割れを起こすお薬があります。(以下すべて商品名)、抗EGFRモノクローナル抗体薬のアービタックス、ベクティビックス)、EGFRチロシンキナーゼ阻害薬のイレッサ、タルセバ、ジオトリフ、タグリッソ、タイケルブ、スーテント、パージェタ、マイロターグ® などです。

指先や指の関節のところの皮膚が避けるととても痛いです。そこに普通の絆創膏を貼る方が結構いますが、かえってふやけて、そのあと皮膚がただれ、さらに皮膚の割れ(亀裂)がひどくなります。(皮膚がふやけた状態は、皮膚から伸びちぢみする成分が抜けてしまったような状態になるので、その後乾燥すると皮膚が乾燥して割れます)。分子標的薬以外にも日常の炊事や水を良く扱う方の指の皮膚は割れやすくなります。いわゆるアカギレです。

おすすめは、ポリウレタンフィルムです。「防水フィルム」という名前で売っています。非常に薄いフィルムで、うれしいことにあまり蒸れません(皮膚がふやけません)。ただし水がしみだしてくるような傷にはむきません。薄い膜なので張り付けている感じもほとんどなく、快適です。ただ激しい作業をする場合は剥げてしまうことが多いです。

ドラッグストアで300円から500円、百均では110円で買えます(箱の裏にとても小さい字でポリウレタンフィルム、と書いてあります)。ロールタイプは数10㎝から2m程度あり、コスパがいいです。このフィルム材は3層からなっています。まず接着面の紙をはいで皮膚に張り、次に一番表面のフィルムをはがします。つまり中央にある1枚のフィルムが皮膚に残ります。この表面の1枚をはぎ取るのにちょっと苦労します(薄いからです)。その場合はロールタイプではなく、絆創膏タイプのものを買うと楽です(コスパは下がりますが)。

*ところが、最近(昨年秋ごろ~?)このポリウレタンフィルムが私が良く行く大手ドラッグストアや100円均一のお店に見当たらなくなりました。防水フィルム、と銘打っていても材質が箱に表記されていなかったり、塩化ビニールなどの他の素材にであったりします。ネットには出ているのでそのお店の仕入れの好みかもしれませんが。

数年間指の皮膚がただれて治らない患者さんが時々きますが、絆創膏だらけの皮膚はふやけてただれ、カンジダなどのカビまでついていることがあります(蒸れているのでカビにはよい環境です)。私、個人的には”絆創膏皮膚炎”と呼んでいます。絆創膏をやめて、ワセリンなどで表面を保護してやるだけでけっこう治ります。もちろん赤みやかゆみがあれば1週間ほどステロイド軟膏の外用が必要です。

ポリウレタンフィルムは軽い擦り傷にも有用です。私はいつも常備しています(とくに旅行に行くときは。皮膚の傷以外にもちょっとした補修などにも使えますので)。

関連記事

絆創膏皮膚炎(ばんそうこうによるひふえん)

かかとが割れて痛む

この冬は札幌も雪が少なかたのですが、やはり札幌らしい冬景色になりました。最後のあがき、春近し、と思いたい。今日は2月29日、4年に一度のうるう年ですね。

 

 

2019 大晦日(3)

今年を振り返っています。

6月 皮膚科医にできること、皮膚に触らせてもらうこと、について書きました。昔書いた記事のリバイバルです。4年に一度の世界皮膚科学会で10数年ぶりにミラノに行きました。最後の晩餐、はすばらしかった。15分しか見られないという制約もよかったかもしれません。

職場の同門会総会で年に2-3回しか会わない同級生と一緒にいたタイミングで、横浜に住む共通の友人が亡くなったと奥様から連絡が入りました。ここ数年、年初に今年合うべき友人、として挙げていた友です。会えませんでした。彼の職場のそばの東京駅周辺でしょっちゅう会議をしていたのに。18歳から数年間の彼との多くの思い出がよみがえりました。経済学部出身の彼は、医者よりもっと社会的に大きく貢献できる仕事をする、と、よく言ってました。

紅白は竹内まりあの”いのちの歌”。

7月 旅行鞄などにくっついて家に持ち込むことがあるトコジラミを嘘寝作戦で退治するという論文を紹介しました。

37年ぶりに家内と函館を歩きました。トラピストもトラピスチヌもよかった。

紅白は嵐と米津さん。新しい国立競技場だ。関係ないけど、個人的には今年のNHK大河ドラマはとてもよいできだと思ったのだけれど、(いつものことだが)自分の好みと世間の好みはあまり会わなかった(視聴率の出し方が現状を反映していないのかもしれない、と信じたい)。

紅白は松任谷由実のノーサイド 「何をゴールに決めて、何を犠牲にしたの」・・・いい詩だ 結果だけを見てはいけないけど、過程は言い訳にならない、と、まだ思っていたい。

8月 アトピー性皮膚炎と汗について書きました。週末札幌にいることが決定次第、積丹でのシーカヤックを計画しました。今年は念願の神威岬先端に行けました。ソロキャンプもできて、夏をしっかり遊べたのでこれで冬も乗り切れそうだ、と思いました。義弟がこのブログのマークを新規に作ってくれました。今年は30年弱登っていたお山の診療所に行けませんでした。

紅白は松田聖子 この人もすごいなぁ 学生時代、山の中での何日か目に、松田聖子や竹内まりあやearth wind &fireの曲がラジオから流れてくると、街に帰りたくなったことを思い出した。

いつも月末ぎりぎりに記事を書いてなんとか欠落しないようにしてきたけれど、9月末にESMO(欧州臨床腫瘍学会)でバルセロナに行った帰り、トランジットのヘルシンキ空港でWifiつないだら母の危篤の報が入った。10月末に母を見送った。そして11月に医師の道を歩き始めたときの最初の指導医だった先生が逝った。

そんなさなか、新しい動きも始めました。皮膚がん患者は私が卒業した1980年代の年間5000人から、今年は6倍の3万人に増え、さらに増加しています。大学の皮膚科入院患者の6-7割は皮膚がん患者が占めるようになりました。皮膚科医は1万人いるけれど、皮膚がんを専門に扱う皮膚科医は、たぶん数百人(指導医は80余名)ぐらいしかいません。若手で皮膚がん患者を専門に診ることができる医師の育成を目的としてNPO法人(NPO法人皮膚オンコロジー若手教育機関)を作りました。11月最初の土日に大津で第1回の合宿を行いました。講師陣は旅費も自前で全国から集まってくれました。塾生の受けもよかったようですが、一番楽しかったのは私やNPO設立に走り回ってくれた京大の大塚先生や大阪国立がんセンターの爲政先生や講師陣でしょうか。

悲しいこと、うれしいことがたくさんあった1年でした。来年も何か1つ新しいことを始められたらと思います。

 

生ハム完成 今年は家内作

2019 大晦日(2)

今年1年を振りかえっています。

紅白は、椎名林檎から美空ひばり(AI)

3月 爪の水虫(爪白癬つめはくせん)は治りにくいです。でも、この数年で爪組織に浸透するタイプの薬や新しい飲み薬が出てきて、効果が上がりました。最新の状況をまとめました。

紅白は坂道合同に内村さんが参加。この人もすごいな。そしておげんさんファミリーだ。Same Thing・・・すばらしい景色だ。歌詞変えてる・・・と家内 ちょっといけない言葉は引っ込めたみたい。

4月 ダーモスコピーの本(ダーモスコピー診断アトラス)を編んだのでその紹介と眠気の来ない抗ヒスタミン剤(パイロットも飲める)について書きました。

GWの入りに美ヶ原高原に泊まりました。途中の道は樹氷に包まれていました。せっかくの長期休暇でしたが、風邪をひいてあまり遊べなかった。

紅白はたけしから石川さゆり

5月 生まれつきの黒や赤のあざ、母斑(ぼはん)と言います。この疾患(病態)に母に関する言葉を当てはめている国はもはや日本ぐらいしかない、という論文を紹介しました。ある時期ドイツから輸入した医学用語の日本語訳が残ってしまったようです。

札幌には春が来ました。今年は運動を兼ねて円山頂上までと三角山と大倉山間をよく歩きました。

2019年 大晦日(1)

8月から4カ月も更新が途絶えてしまいました。大晦日ですね。1年を振り返ります。

1月 しもやけ(凍瘡 とうそう)は普通の病気じゃない、という記事と、骨盤が立つ、という記事を書きました。シモヤケは初秋になるありふれた皮膚の症状と思われていますが、実はシェーグレン症候群や強皮症といった膠原病が隠れていることが多いと思います。子供ころにシモヤケによくなったが成長とともに治った、でも60歳以後にまたシモヤケになるようになった・・・といった病歴です。手指が赤く冷たい方は、一度皮膚科にかかってもいいと思います。内科で、”血液検査で自己抗体が陰性で他の症状がそろっていないからあなたは膠原病じゃない”と言われて、でも手が冷たくて仕方がないと受診する患者さんは珍しくありません。”診断基準”・・・何項目か当てはまれば000病という診断方法による弊害です。昨日まで3つの項目しか当てはまらなかったので000病じゃなかったが、今日4項目目の症状が出たので000病です・・という考え方は、おかしいです。3つしかなくてもつらい症状があれば生活上の指導やお薬による治療が必要ですし、項目をすべて満たしても症状が軽ければ未治療で様子をみてよいのです。診断基準の使い方(社会的保障の基準、疫学や薬剤の治療効果を評価するための基準)の理解が必要と思います。たた、膠原病を専門とする医師が足りないため、軽症の方までを十分にフォローできないという問題もあるかもしれません。

骨盤が立つ・・・の記事は、高齢者のお尻が硬く、ガサガサになって、茶色くなる症状で受診する患者さんについて書きました。背中が後ろに倒れた状態で椅子に座ると尾てい骨に体重がかかって皮膚が硬くなるのです。座り方について説明しました。

正月休みにA star is bornを見ました。邦題”スター誕生”は高校生の時にみたバーブラ・ストライサンド版がよかった(若いときに見た映画は心に強くFIXするのです)ので、”リメイク版”はどうかなぁ思ってました。家族に連れられて(仕方なく)見て、レディー・ガガが主人公であることを映画の後半で気づきました。すばらしかったです。今年1年間ずっと頭の隅で思い返していました。こんな経験は中学生のときにTVで初放映されたサウンドオブミュージック以来です。ガガのla vie en roseもよかった。マリアカラスの伝記ものをやってほしい。

紅白は、ビクトリーロードの合唱。私も、にわかラグビーファンになりました。

2月 口内炎と舌癌はなぜ白くふやけて見えるのか、という記事を書きました。口内炎は歯科に行くことが多いですが、直りが悪いときはぜひ皮膚科にかかってくださいということをお願いしました。歯肉や頬粘膜や上あごにべたーとただれがあるときは、天疱瘡(てんぽうそう)、扁平苔癬(へんぺいたいせん)を考えないといけません。2つとも皮膚科の”十八番”です。

紅白はYOSHIKIとKISSだ。高校の文化祭でKISSの仮装で4人の同級生のメイクを担当し、似ていると褒められたな。卒業アルバムで舌を出して写る彼らの写真を思い出した。メイクという仕事もいいなぁとちょっと思ったことを思い出した。そういえばその頃、所属していた写真部の部室の前には発泡スチロールで精密に模倣制作された等身大のR2-D2があった。今年42年を経てスターウオーズが完結した。来年は還暦だ。

 

上へ