外用剤(塗り薬)を混ぜるということ(2)

(前の記事より続き) [皮膚科医必携! 外用療法・外用指導のポイント]MB Derma デルマ (大谷道輝先生))yより

皮膚の塗り薬は本来1つの製剤ごとに安全性と安定性が確認されて世にでてきます(保険収載)。しかし、利便性(2種類の薬を塗るのは面倒)から現場では混ぜて処方することがあります。でも、まったく異なる薬を混ぜるので注意が必要です。

混ぜると効果が落ちるかもしれない組み合わせについて説明します。

関連記事:研修医のころ教えてもらった軟膏学と包帯の巻き方

記事とは関係ありません。kitakitsune@utoro (石狩浜の野良犬じゃないです為念)

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外用剤(塗り薬)を混ぜるということ(1)

今日は連休の最終日です。当地は気持ちよく晴れて、まさに秋晴れでした。先週届いたMB Dermaという雑誌の特集号 [皮膚科医必携! 外用療法・外用指導のポイント]は外用剤についてでした。外用剤は皮膚科で最もよく使うお薬です。外用剤(塗り薬)は同じようなチューブに入っているので似たような感じにみえますが、全く効果の異なるたくさんの種類があるのです。今回は軟膏を混ぜる、ということの是非についてです。

昔から皮膚科医は自分が良いと思ういくつかの種類の軟膏を混ぜて独自の製剤を作ってきました。先輩に昔の皮膚科の外来は独特のにおいがしていたと聞きました。(現在のように科学的に効果が証明された薬が少なかったため)経験に基づいた様々な薬効があるとされる外用剤を外来で混ぜていたからです。ホーローの板の上で(油絵につかう)パレットナイフで軟膏を混ぜる光景も見たことがあります。皮膚科医にはそれぞれ自分が最もお気に入りの混合があるのです。

しかし、チューブに入った外用剤は、メーカーが安定性(時間がたっても品質が変わらない)を証明し、お上に承認されて、世に出てきます。よもや別の種類の軟膏と混ぜられることをメーカーはまったく想定していません。

異なる二つの外用剤(軟膏)を混ぜるとき、組み合わせによっては、効果が落ちたり、安定性(保存性)が落ちたりします。前振りが長くなりましたので以下は次の階層で。

記事と関係ありません。この夏の思い出

@yorozui river

@shakotan

 

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蚊に刺された 腫れ方は個人個人で違う

今日、当地は雲一つない晴天で、でも心地よい風が吹いていて、なんとなく秋がしのんできているような感じがします。夏はもう終わってしまうのでしょうか(昨年は10月頃まで暑かったのでわかりませんが)。今年の夏も休日は自然の中で(必然的に人ごみを避けて)過ごしました。毎年吸血昆虫に多大な寄付を行っていますが、今年もたくさん刺されました。良く行く露天風呂につかっているときに右腕に痛みを感じ、3-4㎜程で、ずんぐりむっくりした小さな蝉のような黒い虫がかじりついていました。ブユが自分を吸血するところを初めて確認しました。アブと同じでかじって吸血するようなので痛いのです。2日ほどヒリヒリして(もちろん)腫れて、今は硬いしこり(痒疹ようしん、といいます)になっています。

今日のお題は、蚊に刺されたときに、すぐにかゆくなって腫れる場合と数日経って腫れてくる場合があり(小さなお子さんは明らかに虫刺され様のぶつぶつが出ているのに、この2-3日は外に出ていない・・とお母さんが言うことがあります)、その理由についてのリバイバル記事です。たかが虫刺されですが、何かにアレルギー(合わなくなる)ときの初期の反応(感作かんさ、と、誘発ゆうはつ)と何度も繰り返していると症状が軽くなる状況(脱感作、免疫学的寛容)を考えるうえでとても面白い現象です。2007年、13年前の記事です。

蚊に刺された!赤ちゃんとお爺ちゃんで反応が違うわけ

子供の手足にすごく痒い腫れものができた。虫刺されかな?外にも出ていないのに。 これから虫に刺される季節が来ます。蚊などに刺されると痒く盛り上がった赤い発疹ができます。特に子供では、大型で水ぶくれになったり、じくじくした状態になるなど、大人に比べて激しい症状を呈します。また、症状に気づいた日は1日家にいて、外には出なかったと言う患者さんも時々います。また、初めて訪れた場所で虫に刺され、それまでにない激しい症状が起きて皮膚科を受診し、「この土地の虫は毒が強い」と不満をもらした患者さんもいました。 ・・・虫の種類と個人の問題だろうと思っていました・・・ しかし・・・

この虫刺されとその後にできる痒い皮疹の出現時期に関して、なかなか面白い報告があります。(大滝倫子先生、昆虫・ダニ刺咬とアレルギー反応、皮膚疾患を起こす虫と海生動物の図鑑、皮膚病診療増刊号、協和企画、2000)より

まず、蚊に刺されて赤く腫れるのは蚊の唾液に対するアレルギーであると言われています(蚊の唾液自体が反応を起こすのではないようです)。 したがって、初めて刺されたときは、原則として反応は起きません。(アレルギーは、人間関係と同じ・・・相性の良さ悪さは初めて会った時点ではわからない・・・少しお付き合いしてから相性が悪いと判断する・・・嫌だと反応する・・・これがアレルギー)

Mellaby(英国の学者)の実験:外国に出たことのない英国人を選び、英国にいない蚊に刺させてみた。

1. 1回目・・・小さい出血のみで反応なし。

2. 何回か刺された後・・・刺された直後はなんともなく、数時間してから反応が出始め、1-2日で最高に達し、1週間で治る。

3. さらに刺されていると・・・刺された直後から痒い皮疹が出るが1-2時間で消失。しかし、数時間後から再発し、1-2日で最高に達し、1週間で治る。

4. さらに刺されていると・・・刺された直後から痒い皮疹が出るが1-2時間で消失し、その後は反応なし。

5. さらに、さらに刺されていると・・・反応が全く出なくなる。

つまり、刺される回数によって、始めは遅い反応のみ、次に早い反応と遅い反応の両方、その後は早い反応のみ、さらに何度も刺されると反応なし(虫に刺されてもなんともない)という経過をとることがわかりました。

大滝倫子先生が1-63歳の日本人で調べたところ、乳幼児では遅い反応のみ、青年期にかけては早い反応と遅い反応、壮年期にかけては早い反応のみ、その上の年代では反応なし、が多かったと述べておられます。さらに、刺された回数の少ない乳幼児ではかなり激しい反応を示すこともわかりました。また、旅行先などで今まで刺されたことのない蚊に刺された場合も、乳幼児と同じように激しい反応を起こすことが知られています。

これで、子供の虫刺されは症状が激しく、また時に刺された記憶がないこと(刺された直後は反応がないので)の理由がわかりました。夏休みにおじいちゃんの家で3世代が同じ蚊に刺されても、反応は世代ごとに違うということが普通に起きうるということです。 このお話は蚊に留まらず、ヒトがある物質に対してアレルギーを獲得していくときにどのような免疫学的経過をたどるのか、という問題を解決するモデルの1つになりうる、非常に奥の深い現象です。目の前にある現象をジーと良く見ることが大切なんですね。妙に納得。

以下、記事とは関係ない夏の思い出です。

よい丸茄子が採れたので(私のsoul food)オヤキを作った obon@mizukuma base

ちっちゃいのがひっかかっちゃった でも美人だったので写真を @date-north

 

マダニに喰いつかれた どうする?(1)

先々週(5月後半)からマダニにとりつかれた患者さんが来るようになりました。虫を付けたままの方、引っ張って取ったけれど刺し口(口器)が残ってしまった方などです。私はマダニの種類は数種類程度かと思っていましたが、国内には47種類もいるんだそうです。内、喰いつかれるなどの被害の報告のあるマダニは18種類とのことです。(日本皮膚科学会HP: https://www.dermatol.or.jp/qa/qa19/q02.html)

 

 

マダニに喰いつかれても取れば済むことのように思われますが、問題はある種のマダニが持つ菌です。菌が刺されたときに体に入って問題を起こすのです。

ライム病:シュルツェマダニがもっているボレリアというスピロヘータ(梅毒の原因菌が属する菌類です)が感染しておきる病気(最初は刺されたところを中心に丸や輪のような発赤がでる。いったん消えてから顔面神経麻痺や関節炎などが起きる・・・最初の皮膚症状はいったん消えるけれど、しばらくしてもっと重大な問題が出てくる・・・という点は梅毒と似ています。むしろ刺されてから時間がたって症状が出るので原因がわかりにくいです。コネチカット州ライムというところで関節炎を起こす小児が多発し(当初リウマチ熱?と間違われていた)、ある小児科医がマダニとの関連性を明らかにしてこの名前がつきました。

 

重症熱性血小板減少症候群 (SFTS)

文字通り恐ろしい症状を起こし、死にいたることもあります。現時点で患者さんは関西以西に限られていますが、北海道を含む東日本のダニにもウイルスが確認されています(厚労省の説明サイト:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000169522.html)。これはウイルスですので、治療薬がまだありません。今、コロナ(OVID-19)で話題になっているアビガンの効果が期待されています。

 

マダニによる回帰熱

ライム病と同じようにボレリア(ライム病とは異なる)による感染症です。シュルツェマダニ(ライム病と同じ)に刺されて感染します。2013年に北海道で国内第1例が報告されました。“回帰“かいき”の字の通り高熱と平熱を繰り返します。

 

長くなったので、マダニに喰いつかれたときの対応は次に記事で説明します。

マダニに喰いつかれたらどうする?(2)

マダニが持つ菌(ボレリア、スピロヘータ)によるライム病と回帰熱は予防が可能です。抗生物質が良く効くからです。

アメリカ疾病予防管理センター(アメリカしっぺいよぼうかんりセンター、Centers for Disease Control and Prevention:CDC)の推奨は以下です。https://www.cdc.gov/lyme/resources/FS-Guidance-for-Clinicians-Patients-after-TickBite-508.pdf

 

  • 食いつかれた虫の口器が残らないようになるべく皮膚に近い部分を先の細いセッシでつまんでゆっくり引きぬく。ねじったり、急に引き抜いたりしないこと。・・・(うはらコメント)もし取りにくければ無理をしないで病院に行ってください。虫の体の方を指で持って抜こうとするとちぎれて、ほぼ口が残ってしまいます。口器はネジ状で、時間が経つほど深く喰いこんでいるので取りにくいです。中途半端に虫を引っ張って取った後に残ってしまった口器はピンセットで引っ張ってもなかなかとれません。麻酔をしてメスを使って切り取ることも結構あります。
  • 除去したダニは保存して医療機関に持ち込む(菌を持っていることが多いダニか種類がわかり、抗生物質の予防投与の必要性が判断しやすくなる)
  • ボレリア菌を多く持つダニが生息する地域ではドキシサイクリン(抗生剤)を200㎎、1回内服する(虫を取り除いてから72時間以内(3日以内))・・・・国内における患者発生数は北海道が断トツで多いです(面積が広く、さらにメルカトル図法により極点に近いほど大きく図示されるせいで、色分けするとすごく目立ちますが・・・・図はここhttps://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/ta/mdr/392-encyclopedia/524-lyme.html
  • (これ大事)刺し口周囲に発赤、だるさ、微熱などが刺されてから2-3週後に出たらすぐ病院に連絡する。病院は検査結果を待たずテ治療を開始する。

*食いつかれた直後は虫をワセリンやバターで覆うと自然に皮膚から虫が離れることもあるそうです(病院を受診された患者さんに何度か試しましたが、時間が経っているせいかうまくいったことはありません)

近くの公園に散歩に良く行きますが、野生のシカが出る所(100年前から原始林が保護されたすばらしいところです)なのでいつも首回りが気になります。

今週末の札幌は晴天で最高気温が30度近くまで上がりました。強い紫外線で街中を彩る花や新緑の色が際立ち、スマホを向ければどこを撮っても美しい写真になります。
さて、偶然入った古本屋で「日本の色」という本に目が留まりました。大岡信さんによる朝日選書(1976)版講談社(1980)版が並んでいたので両方購入しました。日本人は色というもの(あるいは色を表現する言葉)をどのようにとらえてきたのか、ということに関して源氏物語や枕草子などを題材にした座談会や言語学者、染色家、歌舞伎役者、画家、などにより、いろいろな分野からの意見が掲載されています。どの項も面白かったのですが、特に気に入った記述を書き留めておきます。
草森神一(評論家:音更町出身)
日本人にとって色=物だった。それは自然から盗み取ったものであり、したがって色を表現する名詞は数限りない。ある物体の色は固有のものではなく照らされた光の強弱によって移ろう。したがって固有の物に関連付けられた色は定まった色ではない。日本人は色の分類に物足りなさとむなしさを感じたのではないか、と述べておられます。
この解釈はけっこう面白いと思いました。植物や花、動物、自然現象、などの名前が付けられた色名の始まりはそうだったのかもしれません。ただ、古代から色の名は顔料や染物の色合いを元の物質名で表現してきました。色名は様々な要素(用途)でつけられてきたんだと思います。
大野 晋(言語学者:東京出身)
西洋における色と言語との関係を解説した書籍「言語が違えば、世界も違って見えるわけ (日本語) ガイ ドイッチャー (著),椋田 直子 (翻訳)では色名は、黒、白、赤、の順に始まって、白と黒は明るいと暗いを起源にしていると解説されていました。日本でもこのような意見が多いのですが、大野は言葉のアクセントから、たとえば”黒”は”暗い”、とアクセントが異なり、むしろ顔料系(土由来)の黒系統を指す言葉を起源にしているのではないかと述べています。
皮膚科の実習時には皮疹の医学的表現を学生に教えますが、せいぜい、明るい赤、淡い赤、暗い赤(黒ずんだ赤)、紫がかった赤、白っぽい赤、程度です。
・・・色は診断上とても大事なのです。明るくて淡い色の赤はでき始めの皮疹、濃い赤は最盛期、黒ずんでくると終盤、など、皮疹ができてからどのくらいたっているかを推測できます。また、良性のリンパ腫は明るい赤、悪性リンパ腫や内臓がんの転移などは暗い赤色を示すことが多いと個人的には思っています・・・
もちろん色はグラデーションでつなぎ目はなく、3要素(色相・明度・彩度)によって多彩な調子が出せます。(個人差が大きいですが)人間の眼がどの程度区別できるのか、という問題もあります。今、皮膚科領域でもAIを用いた診断法の研究が進んでいます。完成されたAIはばらついた条件下で色をどの程度参考にしているのか興味があります。

 

COVID-19 新型コロナウイルスによる皮膚の症状

新型コロナウイルス(COVID-19)の問題が続いています。報告によってばらつきが大きいのですが、皮膚に症状が出る方もいるようで、新型コロナウイルス(COVID-19)感染で皮膚に症状が出た患者さんが報告されるようになりました。すべてを紹介することはできませんが一部を紹介します。(リンク先には実際の皮疹の画像が出ていますので見たくない方はご注意ください)(私自身は新型コロナウイルスに感染していて皮膚に症状が出た患者さんを診たことはありません。したがって、以下の記述は論文の記載に基づいたものです。)

論文1

https://www.nebraskamed.com/sites/default/files/documents/covid-19/addendum-f-cutaneous-findings-reported-in-covid-19.pdf

皮膚の症状はあまり特徴のない播種状型(はしゅじょうがた・・・細かい赤い斑点がたくさん出るタイプ・・・点状の出血を伴うことがある)が多いようです。このぶつぶつ型は風疹やはしか(麻疹)だけでなく、ウイルスや細菌に感染した時に出る皮膚の症状で最も多いタイプで、薬剤のアレルギー(薬疹)でも最も多いタイプです。つまり、このタイプの皮疹では皮膚の症状だけから原因の病原体を推測するのは皮膚科医であってもかなり難しいです(経過や他の症状や検査所見を参考にしますが・・・)

凍瘡型(無痛)・・・つまり、シモヤケ(しもやけ)型

凍瘡様皮疹の論文 https://onlinelibrary.wiley.com/doi/epdf/10.1111/ced.14243

手足症候群様(有痛)(てあししょうこうぐん)・・・パルボウイルス(リンゴ病)、EBウイルス(伝染性単核球症)、抗がん剤(分子標的薬)などでおこります。手の平や足の裏が真っ赤になります。焼けつくような痛みをともなうことが多いと思います。

皮斑型(ひはんがた・・・リベド型)・・・赤い網目が主にすねや腕に出る状態です。Transient Livedo Reticularis 一過性(いったん出るがすぐ消えるという意味)網状皮斑 https://www.jaad.org/article/S0190-9622(20)30558-2/pdf

Digit Ischemia 手足の先端の血流が悪く紫になる状態です。よくある病気としては、抗リン脂質抗体症候群(自分に反応する抗体(自己抗体)ができて、血液が固まりやすくなる状態)や動脈硬化などによる心臓から遠い部位(手指、足趾、耳、鼻先など)に血が回らず紫になる状態などで観察されます。

 論文2 https://www.joidairouso.com/bb/img/207_2.pdf

一部抜粋 From the collected data (88 patients), 18 patients (20.4%) developed cutaneous manifestations. 8 patients developed cutaneous involvement at the onset, 10 patients after the hospitalization.

88人の感染者のうち18人(20.4%)に皮膚の症状があった。8人は感染症状が始まった時から、10人は入院後に皮膚に症状が出た・・(うはらコメント:最初から出る方と重症化してから出る方と半々ぐらいということですね・・・つまり皮疹の経過で感染時期についてどうこう言えない)

Cutaneous manifestations were erythematous rash (14 patients)widespread urticaria (3 patients) and chickenpox-like vesicles (1 patient). Trunk was the main involved region. Itching was low or absent and usually lesions healed in few days. Apparently there was not any correlation with diseases severity.

皮膚の症状は18人中14人 はrash(ぶつぶつ型・・・風疹やはしかのような状態)、3例はじんましん型、1例は水痘(ミズボウソウ・・・小さい水ぶくれがたくさんできる)。かゆみはないか、あっても軽い。2-3日で皮膚の症状は消える。皮膚に症状が出たからと言って本体の重症度と関連しない。

中国からの報告では皮膚に症状が出た方の比率はかなり少ないです。でも皮膚の症状はいつ出るかわかりませんし、すぐに消えてしまうこともあるので正確な数字を出すのは難しいかもしれませんね。

皮膚科医の立場でいえば、全身にぶつぶつが出た方と手足の先のしもやけ様の症状、血栓症や血管炎を疑う網目状の皮膚症状があれば、新型コロナウイルスの感染を考えないといけない、ということになります。しかし、ぶつぶつ型が多いので、今のところ、皮疹の性状から新型コロナウイルス感染を否定する(あるいは疑う)のはかなり難しいということになります。皮膚症状そのものが患者さんの生命を脅かした重症型の皮疹を発症した患者さんは今のところ出ていないので、今のところはまず、皮膚以外の症状(呼吸や味覚、聴覚、発熱、下痢など)に注目して治療方針を決めたほうがいいということかもしれません。

ただ、一点気になるのは、ぶつぶつ型に小さい出血を伴うことがあること、シモヤケ型(皮膚の細い血管の破壊)、皮斑(網目状:皮膚の血管がつまっているか、血管自体がつぶれている)型です。これはウイルス感染によって自分の凝固線溶系(ぎょうこせんようけい:血を止める、あるいはサラサラにするシステム)や血管を攻撃するミサイル(抗体)ができる方がいるということかもしれません。これは怖いです。肺炎の機序とは直接関係しないかもしれませんが、脳や腎臓に問題が起きる可能性がないか心配です。

*以上、この記事は個人的な解釈を多分に含みます。まちがっているかもしれません。新型コロナウイルスについては様々な憶測が飛び交っています。まずは公的な施設からの見解を第一にしてください。

本文とは関係ありません。赤と緑が混じった若葉がきれいです。

鳥の祖先が恐竜なら・・・恐竜もカラフルだったらいいなと思った。

 

 

2019 大晦日(3)

今年を振り返っています。

6月 皮膚科医にできること、皮膚に触らせてもらうこと、について書きました。昔書いた記事のリバイバルです。4年に一度の世界皮膚科学会で10数年ぶりにミラノに行きました。最後の晩餐、はすばらしかった。15分しか見られないという制約もよかったかもしれません。

職場の同門会総会で年に2-3回しか会わない同級生と一緒にいたタイミングで、横浜に住む共通の友人が亡くなったと奥様から連絡が入りました。ここ数年、年初に今年合うべき友人、として挙げていた友です。会えませんでした。彼の職場のそばの東京駅周辺でしょっちゅう会議をしていたのに。18歳から数年間の彼との多くの思い出がよみがえりました。経済学部出身の彼は、医者よりもっと社会的に大きく貢献できる仕事をする、と、よく言ってました。

紅白は竹内まりあの”いのちの歌”。

7月 旅行鞄などにくっついて家に持ち込むことがあるトコジラミを嘘寝作戦で退治するという論文を紹介しました。

37年ぶりに家内と函館を歩きました。トラピストもトラピスチヌもよかった。

紅白は嵐と米津さん。新しい国立競技場だ。関係ないけど、個人的には今年のNHK大河ドラマはとてもよいできだと思ったのだけれど、(いつものことだが)自分の好みと世間の好みはあまり会わなかった(視聴率の出し方が現状を反映していないのかもしれない、と信じたい)。

紅白は松任谷由実のノーサイド 「何をゴールに決めて、何を犠牲にしたの」・・・いい詩だ 結果だけを見てはいけないけど、過程は言い訳にならない、と、まだ思っていたい。

8月 アトピー性皮膚炎と汗について書きました。週末札幌にいることが決定次第、積丹でのシーカヤックを計画しました。今年は念願の神威岬先端に行けました。ソロキャンプもできて、夏をしっかり遊べたのでこれで冬も乗り切れそうだ、と思いました。義弟がこのブログのマークを新規に作ってくれました。今年は30年弱登っていたお山の診療所に行けませんでした。

紅白は松田聖子 この人もすごいなぁ 学生時代、山の中での何日か目に、松田聖子や竹内まりあやearth wind &fireの曲がラジオから流れてくると、街に帰りたくなったことを思い出した。

いつも月末ぎりぎりに記事を書いてなんとか欠落しないようにしてきたけれど、9月末にESMO(欧州臨床腫瘍学会)でバルセロナに行った帰り、トランジットのヘルシンキ空港でWifiつないだら母の危篤の報が入った。10月末に母を見送った。そして11月に医師の道を歩き始めたときの最初の指導医だった先生が逝った。

そんなさなか、新しい動きも始めました。皮膚がん患者は私が卒業した1980年代の年間5000人から、今年は6倍の3万人に増え、さらに増加しています。大学の皮膚科入院患者の6-7割は皮膚がん患者が占めるようになりました。皮膚科医は1万人いるけれど、皮膚がんを専門に扱う皮膚科医は、たぶん数百人(指導医は80余名)ぐらいしかいません。若手で皮膚がん患者を専門に診ることができる医師の育成を目的としてNPO法人(NPO法人皮膚オンコロジー若手教育機関)を作りました。11月最初の土日に大津で第1回の合宿を行いました。講師陣は旅費も自前で全国から集まってくれました。塾生の受けもよかったようですが、一番楽しかったのは私やNPO設立に走り回ってくれた京大の大塚先生や大阪国立がんセンターの爲政先生や講師陣でしょうか。

悲しいこと、うれしいことがたくさんあった1年でした。来年も何か1つ新しいことを始められたらと思います。

 

生ハム完成 今年は家内作

2019 大晦日(2)

今年1年を振りかえっています。

紅白は、椎名林檎から美空ひばり(AI)

3月 爪の水虫(爪白癬つめはくせん)は治りにくいです。でも、この数年で爪組織に浸透するタイプの薬や新しい飲み薬が出てきて、効果が上がりました。最新の状況をまとめました。

紅白は坂道合同に内村さんが参加。この人もすごいな。そしておげんさんファミリーだ。Same Thing・・・すばらしい景色だ。歌詞変えてる・・・と家内 ちょっといけない言葉は引っ込めたみたい。

4月 ダーモスコピーの本(ダーモスコピー診断アトラス)を編んだのでその紹介と眠気の来ない抗ヒスタミン剤(パイロットも飲める)について書きました。

GWの入りに美ヶ原高原に泊まりました。途中の道は樹氷に包まれていました。せっかくの長期休暇でしたが、風邪をひいてあまり遊べなかった。

紅白はたけしから石川さゆり

5月 生まれつきの黒や赤のあざ、母斑(ぼはん)と言います。この疾患(病態)に母に関する言葉を当てはめている国はもはや日本ぐらいしかない、という論文を紹介しました。ある時期ドイツから輸入した医学用語の日本語訳が残ってしまったようです。

札幌には春が来ました。今年は運動を兼ねて円山頂上までと三角山と大倉山間をよく歩きました。

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