炎症と腫瘍

病気はいろいろな方法で分類することができます。今回のお題は炎症(えんしょう)と腫瘍(しゅよう)にしましたが、正確には炎症と腫瘍+/-炎症かもしれません。湿疹と皮膚がんを、塗り薬に対する反応の違いから見分ける方法についてです。
パッションフルーツ
結局高さ1mまでしか育たなかったパッションフルーツ。ふと見たら花が咲いていました。
まくはり1
今週末は幕張。早朝海岸へ散歩に出かけました。
まくはり2
半世紀弱前、ここよりちょっと東京よりの浜で潮干狩りをしました。
まくはり3
ホテルのロビーにはこんなものが。


腫瘍は良性でも悪性でも、そこそこおかしくなった細胞が正常の組織の中に占拠しています。”がん”の定義としては乱暴ですが、転移しなければ良性、転移する能力が少しでもあれば悪性(がん)として扱います。転移しなくても際限なくまわりの正常組織を壊して大きくなる能力があれば、やはりがんとして扱うことが多いと思います。転移も急速な増大を起こさなくても、脳などの骨に囲まれているようなところでは、余計な組織が大きくなると正常な組織が迷惑を被るので。やはり治療が必要になります。
炎症は白血球などの細胞がいろいろな原因で集まって来てなんらかの事変が起きる現象です(すいません。ものすごく不正確です)。炎症が起きると皮膚の場合は赤くなります。熱くなります。痛みやかゆみが出ることがあります。皮膚の腫瘍でも、これが体にとっていやなものであると免疫が発動すれば炎症は起きます。つまり赤くなります。
ずいぶんまわりくどくなりました。
今日の講演では湿疹や白癬、カンジダなどの感染症と皮膚の腫瘍を区別するポイントを話しました。私の場合は、授業に限らず、教育的な行為は自分の方に大きな利益をもたらす印象があります(すいません)。何らかのポイントを話しているうちに、自分の頭の中でモヤモヤしたものが固まって来るのです。すいません。もっとまわりくどくなりました。
今、皮膚に1-2cmの赤い皮膚病変があったとします。ステロイド外用剤を塗りますと血管が収縮し、炎症がひくので赤みは消え、あたかも治ったようになります。正常色やシミを残して茶色になります。
通常の湿疹であれば2-3週間外用を続ければ大半が治ります(ただし1-2ヶ月以上続いている湿疹は目をつぶって触ると象の皮膚のようにゴワゴワしています。これが治るまでにはステロイドの外用で3-4週間かかります。かゆみは数日で治りますので、外用を止めてしまう方がいますが、これは腫瘍でなくてもすぐに戻ってしまいます。湿疹が治らないと皮膚科を何件も回ってくる患者さんの中には痒い時しか薬をぬらなかったという方が結構多いような感じがします。個人的な印象です)。 
もし3-4週間きちんと塗っても形が変化しない(ステロイドの影響で赤みは減ります)場合は、腫瘍性の病気を疑います。
たとえば陰部に赤い皮疹があって、塗り薬を何度塗っても形を変えなければ、乳房外パジェット病という皮膚がんを疑います。顔、特に耳の前に赤い1cm以下の皮膚炎(ほとんど70歳以上です)があって、薬を塗っても形が変わらなければ日光角化症(扁平上皮癌の始まり。急ぐ必要はありません。数ヶ月は変化しないことが多いと思います)を疑います。すねにかゆい皮疹がたくさんできて、薬を塗っても赤みを失ったザラザラした皮疹がたくさんあれば脂漏性角化症(しろうせいかくかしょう:良性です)に炎症が加わったものかもしれません。体中にホルスタインのようのぶち状の赤みや軽くカサカサするシミがあって、ステロイドの塗り薬を塗ると赤みは減るが褐色のシミの形が変わらないようであれば菌状息肉症という皮膚の悪性リンパ腫を疑います(菌状息肉症の多くは非常にゆっくりとした経過を取ることが多いので、受診を日単位で急ぐ必要はありません。)。
炎症のみであれば時間とともに形が変わります。腫瘍がベースにあれば形は変わりません。腫瘍はすぐに形をかえられません。おかしくなった細胞でも病気の早期は、そんなに急に増えることはできないからです。

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