遠赤外線は深くまで入れない
私には目からうろこですが、知っているヒトにとっては当たり前(これも当たり前か)の内容です。
プリズムで遊んだこと、ありますよね。三角形のガラスのカタマリみたいなもの。光が虹のように紫から緑、黄色を経て赤まで、グラデーションのように分かれてきれいです。この紫の外側(何もみえません)と赤の外側(もちろん何もみえません)にも光はあるんですね。紫の外側には紫外線があるのです(字のままですね)。紫外線は日焼け、しみ・しわ、皮膚がん、皮膚の免疫低下などを引き起こします。さて、プリズムで分解した虹のもう一つのはじ、赤の外側には、そう、赤外線があるんです(ここまで長かった)。以下、(社)遠赤外線協会HPを参考にし、一部転載しました。
プリズムでできた赤色の外側のなにも見えないところに、温度計を置いてみた人がいるんですね。そうしたらこの部分だけ温度が上昇したのです。1800年ハーシェルによる赤外線の発見です(こういう話、感動します。素朴な実験で目に見えないもの存在を発見する・・・ハーシェルさんえらい。)。さらに赤外線は2つに分けられます。プリズムでできた赤色のすぐ外側(近く)の領域の赤外線を近赤外線、さらにその外側(プリズムの赤から遠い)の領域を遠赤外線といいます。
さて、本題。遠赤外線で体の芯から温まります・・・なんていう、キャッチコピーよく見ませんか?
答え:遠赤外線自体は体の表面からたった0.2mmしか入りません。
ただ、表面で物質を振動させて生じた熱は静脈で表面から運ばれて体の奥を暖めることにはなります(じゃー、いいじゃやねーか・・・という声が聞こえそう)。
気になったのは、何と遠赤外線を比較しているのだろう、という点です。紫外線や可視光線と比べているのでしょうか?違いますね。一般の生活の中で熱を発生できる電磁波は遠赤外線やこれよりも波長の長い電子レンジから出ている電磁波だけです。遠赤外線と比較しているのは、たぶん、熱源の違いです。暖房を例にとると、暖房器具の種類の違いといってもよいかもしれません。熱の伝わり方の違いです。
熱の伝わり方には3種類あって、伝導伝熱(金属のスプーンを熱いスープの中に入れると熱が伝わってくる状態)、対流伝熱(液体や気体が対流することよって全体が温まっていく状態)、放射伝熱(お日様からの電磁波が長い距離移動してきて、日向ぼっこしている体にあたった瞬間熱に変換される。遠赤外線が関わる熱伝導)です。
家の外にエアコンを持ち出して(実際無理ですが)温風にあたる時と、赤外線ヒーターを持ち出してあたるとき、どちらが暖まるか?比べてみます。
温風は熱を持つ気体と皮膚との直接の熱のやり取りで、温風の温度と皮膚表面温度の差に比例した熱流が流れますすから、皮膚の表面が上がると熱吸収は急速に減り、温風と同じ温度になればそれ以上皮膚は熱を吸収しません。温風の温度をあげれば熱吸収は増えますが、限界があります(やけどしてしまいます。つまり、外側だけ熱が上がり、中は冷たい状態になります)。赤外線ヒーターでは、ヒーターと皮膚の温度(絶対温度K)を4乗した値の差に比例した熱が流れます。ヒーターの熱源の温度と皮膚の温度差はよほどのことが無い限り大きな差があり、かつ4乗した差ですから熱の供給が長く持続することになります。つまり皮膚で発生した熱が次々と体の奥へ運ばれることになります。中までじっくり。
早くからだの芯まで暖まりたかったら、反射式のストーブですね(放射伝熱)、湯たんぽ(伝導伝熱)じゃ時間がかかります。
赤外線が皮膚科に関係あるのか?
ひだこ(熱性紅斑)というのがあります。長時間熱源にあたっていると、皮膚が網目状に赤くなり、そのうち網目状のしみになります。多いのはお年寄り(こたつ、ストーブ)やスーパーや事務所で足元に電気ストーブを置く女性の下肢やおしりにできます。
昔はお嫁さんにこれができると、お姑さんに怒られたようです。コタツにばかり入っていて仕事をなまけている証拠だと・・・・。でも、ひだこは冷え性や下肢の血行の悪い人にできやすいので、なんだかかわいそうです。局所暖房だけで寒い冬を乗り切ってきた東北地方や信州によくみられた皮膚疾患です。今は減ってきています。