くちびるが荒れて治らない

口唇(くちびる)が荒れて治らない
よくある皮膚の病気(14)
口唇が荒れて治らない。塗り薬を塗っても少しよくなるけれど、止めるとすぐに元にもどってしまう。
こんなときに考えられる原因は以下です。
1.かぶれ
かぶれは必ず疑わなければなりません。以外なものが原因になります。
・リップクリーム(含まれるメンソールなど)
・管楽器のリードやマウスピース(金属)
・歯磨き粉
2.舌でなめている
くちびるが乾燥する→なめる→さらに乾燥する→なめる→さらにさらに乾燥する。水で浸したガーゼを当てる→あとで乾燥する。マスクをしてくちびるに湿気がいくようにする→さらに乾燥する。
皮膚は水に弱いのです(粘膜はOKです)。お風呂に入ってしわしわになった皮膚は入浴後決してしっとりしません。逆に乾燥します。
舌で遠くまでなめると、唇の外の皮膚までカサカサして黒ずんだりします。スナック菓子のカールのおじさんのようになります。
3.鼻が詰まっている・・・口で呼吸する→乾燥する(鼻炎を伴う喘息の子供に多い症状です。上の2も原因としてからみます)。
4.薬疹 
頭痛、生理痛、風邪のときに時々飲む鎮痛剤でくちびるにだけひりひりした皮膚症状が出ることがあります。ひどい場合は水ぶくれになったり、皮がむけてしまうことがあります(固定薬疹という、同じところに繰り返して出る変わった薬疹です)。
5.扁平苔癬(へんぺいたいせん)、口唇癌・・・中高年以上の下唇
めったにありませんが、下唇のみがただれて、一部が白くふやけたようになった状態が何ヶ月も続くようなら一度専門医を受診しましょう。口唇癌であっても、ただ表面がただれた状態であれば完全に治療することが可能で、命を失うことはありません。

マリリンモンローとダニ

マリリンモンローとダニ
よくある皮膚の病気(13)
疥癬(かいせん)というヒトからヒトに感染するダニがいます。戦後の混乱期の皮膚科外来には疥癬の患者さんがたくさんいたようですが、昭和30年代にはほとんど見られなくなりました。ところが、昭和40年代に東南アジアから持ち込み、性感染症として再び流行り始めました。その後、病院や介護施設で大発生を繰りかえすようになり、社会問題化した疾患です。
さて、ずいぶん昔に疥癬についてアメリカの医学生がよく使用するというアトラス(写真の多い教科書)を見ていたところ、「きちんと診断されずに長く経過した疥癬のことを 巷ではthe 7-year itch と言う」なんて、出ていました。そうなんです。気をつけていないと誤診する可能性のある皮膚疾患です。研修医の頃、看護師さんに強く依頼されて、しぶしぶ検査したらダニがいた、なんてことが私にもありました。
うーん、どこかで聞いたような文句だなぁ、と思いましたが、そのままにしてしまいました。ある時、マリリン・モンローが地下から吹き上げる風に舞うスカートを抑える、あの有名なシーンのポスターを何気なく見たときです。そこには「The seven year itch]と書いてあるではないですか。そう、邦題「7年目の浮気」です。1955年の作品です。私は古い映画も好きなのですが、マリリン・モンローの出演作は食わず嫌いなのか1本も見ていなかったのです。
itchは、かゆみ、うずうずする感じ、などと訳されますが、疥癬という意味もあります。かゆみは皮膚科の重要な症状ですので、私もカルテに良く使う言葉です。The seven year itchとは、結婚7年目ごろになると出るといわれる満たされない気持ち、とLongmanには出ていました。7年目の浮気・・・なかなかの訳ですね。
疥癬のことをthe 7-year itchと書いてあった教科書は、ハーバード大学皮膚科の教授であったFitzpatrick先生の編集です(非常に高名な先生でしたが、亡くなられました。)。Itchは疥癬、とは辞書に出ていますが、the 7-year という修飾語は見つかりません。もしかしたら、Fitzpatrick先生の造語かもしれません。この部分を書いていた(あるいは編集で読んでいた)先生は、ククッと、笑ったのでしょうか。「この意味わかるかなぁ」・・・なんて。

皮膚科はこんなところを診ます

皮膚科にかかる前に(4)
皮膚科はこんなところまで診ます
総合病院などに行くと、いったいどこの科にかかって良いのかわからない場合も多いと思います。実は病院ごとにカバーする領域が微妙に異なります。同じ病気でも、こっちの病院では外科だが、別の病院では他の科、ということがあります。最近では、必ず入り口付近に相談にのる職員がいますので、聞いてみるとよいと思います。
でも、明日病院にかかろうと思っている方の参考になるように、一般の病院の皮膚科で扱っている範囲について説明しておこうと思います。
部位
基本的には器具を使わないで目に見えるところ全てのトラブルについて相談に乗ります。
頭のてっぺんから行きます。
頭:髪の毛、地肌、皮下のしこり
耳:耳の穴の出口より外の耳
目:まぶたの皮膚面と周囲
鼻:鼻の穴の周辺と鼻
口:口の中の粘膜、舌、歯肉、くちびる
首、背中、胸、腋、腹、おへその穴
手:指と爪
陰部:膣周囲、尿道周囲の粘膜とその周囲の皮膚
   陰茎と亀頭
   肛門とその周囲
足:足全体と爪
耳鼻科、歯科、眼科、婦人科、泌尿器科と重なる部分がありますが、特に感染症や腫瘍を疑うときは皮膚科へどうぞ。ただし、胸のしこりについては乳腺外科へどうぞ。
年齢
子供からお年寄りまで。
性別
男女問わず。
陰部などの病気では受診をためらう場合もあると思いますが、皮膚科医には女性も男性もいます(当たり前だ)ので、気になる場合は電話で聞いてみるといいです。

病気になったら見るサイト(癌)

私のおすすめサイト
自分や家族が病気になったり、テレビを見ていて心配になったときに、何か調べたくなります。当然です。インターネット、一般向けの病気に関する辞典、友人、知り合いのお医者さん・・・・
日本人の3人に1人は癌で亡くなります。癌になっても治る率は半分程度ありますから(ちょっと乱暴な数字ですが、このブログの意図はなるべく簡単に・・・ということですのでご勘弁を。もちろん、癌の種類や進行の程度によって違います)、癌と宣告される確率は3分の1以上ある、と考えておいた方がいいわけです。極端な言い方になりますが、「あたたは癌です」といわれる時に備え、一度そのシュミレーションをしておいた方がよいかもしれません。
さて、医学的に何か心配になったときにまずすることは、
1.信頼できる医師に相談する・・・です。
次は(いろいろ調べる方法はあると思いますが、環境が許せば)、
2.インターネットで調べる・・・・これが本日のお題です。
無料で、かつ、世界的に標準といわれる治療方針が書かれているおすすめのサイトは以下です。
1)癌情報サイト 米国国立癌研究所(NCI)が配信する Cancer Information Physician Data Query from National Cancer Instituteの情報を基に日本語に訳したサイトです。世界のがん治療の標準を知る上で、上位3に入る重要なサイトです。
追記(2009.3):現在はサイト内検索ができるようになりました(調べたい癌の名前を入れると、患者さん向けと医師向けの両方の記事がヒットします)。以下の方法は不要です。
このHPに
PDQ日本語版(専門家向け)
PDQ日本語版(患者様向け)というサイトがありますので、まず、患者向けサイトに入り心配になるがんについて読みます。もう少し詳しく知りたければ、専門家向けサイトに入ってください。それぞれのサイトに入ると、治療(部位別)、治療(成人)、治療(小児)、スクリーニング・・・などがありますので、大人の癌ならば、治療(成人)に入ってみてください。あいうえお順に癌が並んでいますので、見たい癌を選んでください。
2)癌診療ガイドライン 日本癌治療学会が中心になって、日本の医療行政や日本人に合ったガイドラインが、作成され公開されています。各臓器の専門家によって作られたものです。まだ、全ての癌について公開されていませんが、今後充実されていくと思います。いろいろ患者さんが心配する問題点について、質問と回答という形で構成されています。少し難しいかもしれません。病院で診断がついてから参考にすべきサイトです。
3)国立がんセンター癌情報サイト 日本におけるがん治療の中心病院が配信しているサイトです。
4)その他:さらに詳しく調べるためには、専門学会のサイトに入るといいです。調べ方は、
’日本’ ’○○○学会’と検索します。 ○○○には、乳癌、肺癌、胃癌、や、もっと大きく、外科、産婦人科、泌尿器、という臓器名を入れます。いきなり、乳癌、肺癌、などと直接病名だけを入れると、健康食品などの商品販売に関連するサイトやこれらを宣伝するブログ、HPに飛ぶ場合があります。ネットに限らず、関連する広告の付いている記述は疑ってかかる、ぐらいの慎重さが必要かもしれません。
さて、主たるお題からそれますが・・・・
何か疑問に思ったときに一番有効な方法は、専門家に聞くということです。それもきちんとした対価を払って(これが中々できないんですよね)。
法律のことは、弁護士に・・・・敷居が少し高いけど、いろいろ本を買って悩んでいるよりいいかも。
家のことは、建築家に・・・・これは少し予習が必要かも。
旅行先でレストランを探すなら(もし少し良いホテルに泊まっている場合は)、コンシェルジェに・・・良いホテルに泊まっているのに、地球の歩き方でレストランを探してはいけません
そして、医学的はことは、医師に・・・家庭の医学を読んでいたずらに心配してはいけません。
「人にばっかり聞いてないで、自分で調べなさい」・・・という教育は少し問題があるかも。

丸いハゲができた!!

よくある皮膚の病気(12)

床屋で丸いハゲがあると言われた

生まれつきではない、突然できた丸いハゲ(脱毛)のほとんど全てが円形脱毛症です。

円形脱毛症は毛は抜けていますが、皮膚は基本的に正常です(初期は少しむくみと赤みがある場合がありますが)。毛の抜けた後がじくじくして膿んでいたり(ネコから感染するミズムシ:白癬)、赤く硬くなっているような場合は円形脱毛症ではない可能性が高くなります。必ず皮膚科専門医へ行ってください。特に、膿やカザブタがついているときは、いわゆる抗生物質や消毒などで様子を見ていると永久ハゲになってしまいます(抗生物質で常在菌がいなくなる→白癬菌の競合相手がいなくなる→白癬菌はのびのびと増殖できる・・・つまり体が白癬の増殖に適した無菌培地になる)。小型の円形脱毛症は急いで病院に行く必要はありませんが、皮膚の異常を伴う場合は早めに受診しましょう。

円形脱毛症は一生の間に1-2%の確率で発症する可能性があると言われています。ただし、なりやすさには個人差があるようです。原因は、良くストレスと言われますが、私は、ほとんど?、と思っています(証拠はありません。経験的なものです。ただし、身内のお葬式が済んだ後に発症した患者さんはいましたので、全く関係ないとはいえませんが。)。少なくても、今まで感じていなかったのに、「うーん、俺は何か重大なストレスにさらされているに違いない」などと、原因を探してはいけません。本当にストレスになってしまいます。

現在有力な説は、自己免疫説です。自分の免疫が自分の毛を攻撃しているという説です。ちっとも毛が生えてこない脱毛部の皮膚を重症免疫不全のマウスの皮膚に植えると(つまり、自分自身からの攻撃がなくなれば)、毛が生えてくるそうです。

円形脱毛症になったらどうするのか?

成人以後の円形脱毛症は(頭全体や体全体の毛が抜る場合を除く)、ほっといても80%以上は治ります。一度皮膚科で診断がついたら、あまり気にせず(これが結構難しいのですが)1-2ヶ月様子をみましょう。数が増えてくる場合には、治療はいろいろありますので皮膚科医に相談してください。3-4ヶ月以上発毛のない方や円形の脱毛班が増えてくる方には局所免疫療法が私のお勧めです。「円形脱毛症にSADBE(えす・えー・でぃー・びー・いー)やDPCP(でぃー・ぴー・しー・ぴー)を塗る治療はやってますか?」と聞いてみてください。因みに保険は利きません(安い治療ですが)。ただし、子供、頭の生え際を中心とした脱毛、全頭脱毛、全身の脱毛、アトピーを持っている方は効きにくいです。

まだ毛がどんどん抜けている→皮膚科にかかる

円形脱毛はあるが、周りの毛は軽く引っ張ても全く抜けない→1ヶ月程経っても毛が生えてこなければ皮膚科受診を考えてもよいでしょう。

脱毛部に短いが硬く黒い(あるいは白い)毛が点々と出てきている+毛は抜けない→治っていますので、ほっといていいです。

日焼け止めはどこに塗る?

よくある皮膚の病気(11)

日焼け止めはどこに塗れば効果的か?

日焼けは、皮膚のしみ、しわ、皮膚がん、皮膚の免疫低下によるヘルペスの再発など、さまざまなトラブルを起こします。

日焼け止め(サンスクリーン剤)は、日に当たるところにまんべんなく塗ればいいのですが、面倒くさい時もありますよね。例えば、しみ、しわ、皮膚がんの予防に限れば、ここだけは塗っておいたほうが良い場所、あるいは、ここから塗り始めたほうが良い(途中で手を抜きたくなったときに備えて)、という場所はあるでしょうか?

あります。

それは紫外線でできる皮膚がんや脂漏性角化症(しろうせいかくかしょう)の好発部位です。脂漏性角化症とは、あまり聞きなれない病名ですが、中年以後に、髪の毛の中、こめかみ、おでこ、うで、手の甲、すね、などにできてくる20-30mm以下の茶色のしみで、時間と共に表面がざらざらして、その後イボのように盛り上がってくる良性の皮膚腫瘍です。中年以後にできる茶色のできもののほとんどがこれです。有棘細胞癌(ゆうきょくさいぼうがん)は紫外線によっておきる皮膚がんの代表です。これは、こめかみから耳の前が好発部位です。

普通に日焼けすると、おでこ、鼻の頭、頬、肩、うで、手の甲、足の甲などが、特に赤くなります。これらの部位も有棘細胞癌の好発部位ではありますが、発生率から言えば圧倒的にこめかみと耳の前あたりが抜きんでています。

それでは塗り方(外で1日遊ぶ状況を想定しています):季節は3月から8月、時間は10時前とお昼の2回、特に10歳以下のこども。

まず、手に取ったクリームの半分を反対の手にもつけます。両耳の前から、こめかみ、そしてそのまま頬に沿って前に進み、鼻の頭を塗ります。

まだ続けられる人は、おでこ、耳輪(耳の上の方)、首の後ろと肩、前腕、手の甲に塗りましょう。

さらに続けられる方は、すね、と、足の甲に塗りましょう。

私は酸化チタンのサンスクリーン剤が好きで良く使いますが、鏡をみないで塗ると、志村けんのバカ殿様のようになります。自分は気にしませんが、家人は引きます。

ところで、脂漏性角化症(しろうせいかくかしょう)は昔、老人性ゆうぜい(老人性イボ)、死ぼくろ(シニボクロ)などといわれていました。ひどい名前ですね。患者さんに、「これ、シニボクロか? 先生」 なんて聞かれることがたまにありますが、答えに困ります。それに、老人性ゆうぜい、だって、患者さんに言える病名ではありません。

最新の記事(2009年4月29日)
おすすめの日焼け止め

初診時に皮膚科医が知りたいこと

皮膚科にかかる前に(3)

初診時に皮膚科医(の私)が知りたいこと

「皮膚科医が知りたいこと」・・などと書いてしまいましたが、他の皮膚科の先生に「そんなこと考えてないよ」と言われてしまうかもしれないので、「初診時に私が知りたいこと」・・・という題に変更します。

普通は、初めて受診された患者さんから病気の経過をうかがうことから診察は始まります。私がまず知りたいことは以下です。

1.いつから始まったのか?

「以前から」 「ずっと前から」 「最近」・・・・このお答えから診断を考えるのは厳しいです。毎日じっくり自分の皮膚を見ている人なんて、そういませんから、「いつ皮疹が出たかなんて良く覚えとらん」・・・というご意見はよくわかります。でも、1週間か1ヶ月か半年か1年か5年か10年か、程度でいいですから、少し思い出しておいていただけると、すごく助かります。

2.症状は今日までどのように変化してきたか?

一度にどっと出て、その後変化ないのか、ゆっくりわるくなってきたのか、どんどん悪くなっているのか、出たり引っ込んだりしているのか。

3.何か治療したか?

現在の症状が治療によって少し変化している可能性を考え、足したり引いたりしながら元の症状を想像します。アロエ軟膏、馬油、海外旅行で買って来た薬、自分で作った薬、お父さんの薬・・・など、なんでもいいから隠さず教えてください。

皮膚科に限らず、症状がどのように始まり、どのくらいの期間にどのように症状が変化してきたか、という点が病気を診断する際の重要なヒントになります。

今日も、長く待たせてすいません。そんな時にお願いするのもなんですが、待っている間に上の3つぐらいを思い出して、整理しておいていただくとありがたいです。

皮膚癌は痛くもかゆくもない!

よくある皮膚の病気(10)

皮膚癌は痛くもかゆくもない!

よくある皮膚の病気ではないけれど、一般に誤解されていることが多いような感じがするので、書き留めておきます。ただ、例外は必ずある、ということはこのカテゴリーの最初のところで説明したとおりです。

さて、皮膚にしこりができて(ある日気づいて)、押すと痛みがあったり、自然に痛みを発したりする場合、まず、私は癌を疑いません。通常は、汗腺、神経、筋肉、線維などに由来する良性の腫瘍を疑います。あるいは、顎や首、ももの付け根であれば、腫れたリンパ節や化膿した粉瘤(よくある皮膚の病気1)の場合もあります。ただ、痛ければ病院に行かなくて良いということではありません。痛い場合は、あんまり心配しないで病院に行きましょう、ということです。

腫瘍の周りの神経に浸潤したり、かなり腫瘍が大きくなった場合を除いて、皮膚がんのほとんどは痛みを伴いません。ただし(言い訳が多くてすいません)、逆に痛くない腫瘍がみんな皮膚がんではありません。痛くない腫瘍の中に極めて稀に皮膚がんがあるということです。

例えば、皮膚がん以外でも、首のリンパ節が腫れて痛い場合はほとんどが虫歯などの感染によるものです。痛くもなんともないのに3-4cm大に腫れている、などという場合は病院に行きましょう。内蔵癌の転移や悪性リンパ腫を否定してもらいましょう。・・・・(結局は痛くても、痛くなくても病院に行け、ということになってしまいました。)

癌=痛い・・・というのは、映画やドラマなどで末期がんの患者さんが痛みに苦しむ場面などから想像されるのでしょうか。

皮膚が乾燥してカサカサする!

よくある皮膚の病気(9) 皮膚が乾燥してカサカサする

秋から冬、そして春先にかけて体がカサカサ乾燥します。季節的な湿度の低下、暖房によるさらなる湿度の低下、そして年齢が進むにつれて低下する皮膚の水分含有量、の三つが原因です。

そして、もう1つ。そう、入浴方法です。

 乾燥して痒がるお年寄り、

 「入浴には注意してるんだよ。石鹸は絶対に使わないね。タオルでこするだけだよ。」

魚が水の中から陸に上がり、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類に進化しました。水から出るためには、脱水という危険から身を守る必要があります。腎臓は、なるべく少ない水で体の毒素を外に出す(おしっこ)システムですし、皮膚にも水を逃さないシステムができあがりました。ヒトの皮膚は何層もの表皮細胞が石垣のように重なっていますが、これは、魚以外、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類に共通した皮膚の構造です。魚のみ構造が異なります。

さて、正常では、皮膚の表面は薄い油の膜で覆われ、その下には100分の2mm前後の薄い角層(垢です)があります。この2つで主に皮膚からの水の蒸発を抑えています。セロテープを皮膚に貼り付けてびりっと剥ぐと(小学生の頃、友達同士でふざけてやっていて、先生に怒られたことがあります)、皮膚からの水分蒸発量は数十倍に増加するというデータがあります。薄い角層の細胞と細胞のすきまには石垣の石の間のセメントのような物質がつまっています。細胞内には水に溶けやすい保湿成分があります。

セメント物質と細胞内の成分の2つが主に水をひきつけておく(保湿)働きをしています。

効率良く皮膚のバリアーを破壊するためには、

まず表面の脂を除く(石鹸です)、角層(垢)を取る(垢すりです)。次に、セメント物質を除き(石鹸)、水溶性保湿物質の除去(ゆっくりお湯につかると、溶け出て行きます)が済むと、皮膚からは水が蒸発し放題、保湿作用はなし、という状態になります。この状態ではいくら長く水に浸かっていても、外に出れば、水分はすぐに抜け出てしまうことになります。 家庭用スポンジ(良く水を吸う)が、乾燥ヘチマ(見たことありますか?)になったイメージです。

垢も大事!ということですね。

お風呂は私も大好きです。でも、冬場などは、ほどほどにしないとね。

ラテックスアレルギーとゴムの木の痛み

ラテックスアレルギーとゴムの木の痛み
生体防御蛋白とアレルギー
何年か前の講演会で聞いた内容です。私には目からうろこでした。
以前、使い捨てゴム手袋の使用によって手の腫れやかゆみといった皮膚症状や時に全身のアレルギーが医師や看護師に起きて、問題になったことがありました。ゴムの成分であるラテックスのアレルギーです。
さて、ラテックスは植物が病害虫から自らの身を守るために産生する生体防御蛋白質の1種であるという説があります。この生体防御蛋白質には多くの種類が知られていますが、問題なのはヒトにアレルギーを起こす可能性の高い物質が含まれているということです(国立医薬品食品衛生研究所HPより)。
交配や遺伝子組み換え(生体防御物質を作るような遺伝子を入れる)によって、病害虫に強い品種ができたという利点の対極に、アレルギーを起こしやすいという欠点が新たに出てきてしまったということでしょうか。
ゴムの樹脂は、幹に傷を斜めに付け、その樹液を採取します。小中学校の社会で、プランテーションという農業形態を学んだ時に、教科書に写真が出ていた記憶があります。子供心に何だか痛々しい感じを受けました。このストレスや長年にわたる栽培に適した品種改良が、ゴムの木に強い防御物質を作らせたと考える研究者がいます。そういえば、かぶれの代表格であるウルシもゴムと同じ方法で樹液を採取します。これらの木は長い間、痛みに苦しんできたのでしょうか?でも、メイプルシロップも樹液ですが、アレルギーを起こしやすいという話はあまり聞きません。木の精神的(?)苦痛と生体防御物質の関係の真偽についてはもう少し研究が必要かもしれません(既に論文はあるのかもしれませんが)。
無農薬とそうでないリンゴでは、無農薬のリンゴのほうが生体防御蛋白質を多く含んでいた、という発表があり話題になったことがありました。農薬が無い状況下では、自分で自分を病害虫から守らなければならないのだから、ある意味妥当な結果でしょう。以前、市民農園を借りて無農薬、無肥料(実情は、手入れをさぼっただけですが)で野菜を作ったことがありました。病害虫被害を一手に引き受けたような畑になりました。あの時の菜っ葉達のストレスは大きかっただろうな、と少し反省。
念のため:品種改良や遺伝子組み換えを否定するつもりはありません。生体防御物質は通常の植物でも産生されている物質ですから、その利用の仕方が重要なのでしょう。ただ、無理が過ぎると、どこかにとばっちりが出るということはありえるかもしれません。

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