昨日まで、皮膚の悪性腫瘍(癌や肉腫や悪性リンパ腫)を専門にする学会に行ってきました。成人T細胞性白血病・リンパ腫という病気についてのセッションもありました。
さて、この病気はHTLV-1というウイルスで起こりますが、このウイルスを持っている方の地域分布に特徴があるのです。今回はウイルス保持者の分布からわかった人類の大いなる旅路について。
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このウイルスは1981年に日本で発見されました。そして、ウイルスを持っている人は北海道(アイヌ民族)と九州、沖縄に集中していて(他に四国南沿岸、紀伊半島、隠岐の島、佐渡島などの島々)、日本の本州中心部にはほとんどいないこともわかりました。発見者の日沼先生は、このウイルスは縄文人が持つウイルスで、後から来た弥生人によって縄文人が端に追いやられたことを示すのではないかとの仮説を述べられました。ウイルス学と人類学が結びついた仮説です。新ウイルス物語-日本人の起源を探る (中公新書): 日沼 頼夫
その後、このウイルスを持つヒトは世界中にいることがわかりました。このウイルスの多くは母乳で染りますので(現在は予防対策がとられています)、ウイルスの分布はある程度まとまった集団の移動があったことを示しています。10年前にはペルーの1500年前のミイラから日本人にみられるタイプと同じHTLV-1が見つかっことが報道され、話題になりました。
このウイルスと人類の移動との関係について、最近はどこまでわかってきたのか調べてみました。京都大学のオープンコース(大学の講義資料の無料公開システム)の三浦智行先生(ウイルス学)の資料をみつけました。この三浦先生の仮説が面白かったのでまとめてみます。()と?部分は私が勝手につけた補足部分です(大きな間違いがあるかもしれません)
このウイルスを持つヒトは世界中にいますが、遺伝子パターンから大きく3つのタイプに分けられます。
1.アフリカの中央部にのみ見つかるタイプ
2.メラネシア、オーストラリアのアボリジニにのみ見つかるタイプ
3.上記以外で世界中でみつかるタイプ
ややこしいですが、この3つ目のタイプはさらに4つに分けられます。
A:世界中に見られるタイプ(インド、南アフリカ、カリブ、中東、極東(日本含む)、南米)
B:日本のみに見つかるタイプ(日本と南米東側)
C:西アフリカタイプ(西アフリカとカリブ)
D:北アフリカタイプ
このAの世界中タイプは、インド、沖縄、サハリン、北米の西側、南米の西側から南米先端までの地域の古くからの住人に見つかります。(言い忘れましたが、このウイルスは中国人や韓国人はほとんど持っていません。台湾人には見つかります)。
これらから予想されることは(あくまで仮説であると三浦先生は述べてますが)
数万年前?、人類発症の地アフリカ(東?)から1群は西アフリカへ(定着)、1群は北アフリカへ(定着)。残りの2群のモンゴロイドはアフリカを出て東に進み、インドに着いた。
インドからは3つに分かれた。
数千年前?に1つは海上を経由して日本へ、あるいは陸路(?)でサハリン、北米、南米と移動して行った。
もう1つは中東へ。
そして時代が下り、大航海時代以後?インドからアフリカ南部、西部、カリブへ拡がったグループがある。奴隷の移動はあまり関係ないようです。
このA群がなぜ短期間に世界に拡がったのかという疑問について、三浦先生は、
「人類で初めて遠洋航海技術を持ったのがこのモンゴロイドグループではないか」という仮説を述べられています。面白いですね。(北海道からサハリン、ベーリング海はどうだろう。やっぱりこの辺は陸路のような気がするけど)
(日本にはAの世界中タイプとBの日本のみタイプの2つがあります。三浦先生の資料にないことですが、別の研究で、縄文人は大きく2回に分けて日本に入ってきたのではないかという説があります。Bは日本にしかないので、ひょっとしたら氷河期が終わってアラスカに渡れなくなってから入ってきた群でしょうか?)
なお、AとBは南米東側にも集中しています。ブラジルなどへの移民政策によるものです。
遺伝子の微妙な違いや類似性から年代を特定する方法(分子時計)はとても魅力的ですが、ちょっとずれると大きな誤差がでます。でも面白い世界ですね。
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ども!
サハリンからベーリング海を渡って北米へ。
「1万年の旅路」はウイルスと共にあったのですね。
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AZMさん いつもコメントをありがとうございます
私もAZMさんのサイトの山行や植物の写真をいつも楽しみにしています。
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