さっき札幌から帰って来ました。国際微生物学連合 2011 会議(IUMS2011)というのに出てきました。
2週間にわたってカビや細菌やウイルスなどの研究成果が発表される大きな学会です。
そんな中で、30年前に西アフリカから日本に連れてこられたチンパンジーがハンセン病を発症した事例が報告されていました。このチンパンジーの菌はアジア型ではなく、もともと住んでいた西アフリカの型だったのです。ハンセン病の感染は乳児期に起こるとされていますが、このチンパンジーの事例はそれを証明したことになります。この報告は昨年すでにされていて、ニュースにもなっています・
今回はこの研究報告のポスターに、ハンセン病はどのように伝播したかという世界地図が参考図として出ていたのです。なんと東アフリカから始まってユーラシアを東に向かっているではないですか。世界地図に人類の移動の矢印が出ていると興味はそこに集中してしまいます。元になったMonet先生の論文を読んでみました。
ハンセン病は乳児期に濃厚に接触する周りの人(家族)から飛沫したものが気道から感染します。ですから、その伝播は家族単位、部族単位でおきることが予想されます。これは母乳でうつる成人T細胞性白血病ウイルスと似ています。
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Monet先生はハンセン病の原因であるライ菌の遺伝子変異から、系統図を作り、世界中の国のライ菌の系図を作ったのです。
ハンセン病の伝播仮説 図はこちらです。論文はこちらです
1 最初 10万年前の東アフリカ:次は3つのパターン
2-1:西アフリカへ。これは袋小路ですから、ここからの次の地域への伝播は奴隷制度としてカリブへ。
2-2:中東からヨーロッパ、そしてここから新大陸への移住によって北米、そして南米へ。
もう一つはアジアを東に向かい中国、韓国、日本、メラネシアへ
2-3:インドからベトナム、フィリピン、インドネシアへ
このインドグループはマダガスカルからまた東アフリカへ(インド人商人の移動によるのでしょうか?)
この伝播仮説は成人白血病リンパ腫ウイルス(HTLV-1)とそっくりです。
極東アジアに達したのは1万5000から3万年前と予測されてます。
ただハンセン病の伝播地図がHTLV-1と少し違うのは、北米にインド、アジア型がないことです。ハンセン病は骨にも異常を起こしますので、遺骨からその伝播時期がすでに解析されているようですが、北米のハンセン病患者は大航海時代以後の症例しかないんだそうです。ハンセン病を持って極東にやってきた祖先は北米には渡れなかった、あるいは渡らなかった可能性があります。時期的な問題なんでしょうか?またハンセン病を持っていた集団と北米に渡れた(後で極東にたどり着いた)グループ間に交わりが無かったということなんでしょうか?
ライ菌は培養できず、感染もしにくいので研究がしにくいといわれています。感染するのはヒト、チンパンジー、アルマジロです。アルマジロの一部がこの菌を持っているとすると撲滅はなかなか困難であると、今回の学会のポスターには書いてありました。
さて、札幌では懐かしい方々と再会できました。学生時代と変わらない会話が展開されました。街はずいぶん変わりました。でも、地下鉄は昔のままですね。東西線のホームでは電車が近づくときにキュンキュンという音がし、北18条駅の階段には相変わらず強風が吹き上がっていました。
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先日は楽しい時間をありがとうございました。Monet先生の論文、鵜殿らのppt面白かったです。魚類でもmtDNAによるウナギの系統と進化に関する研究があって(月刊海洋Vol.28,No.5,1996)それによるとウナギの祖先種は数千万年前に現在のインドネシアに現れ、ヨーロッパへはテーチス海経由で伝播し種分化したとしています。
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こちらこそ先日はありがとうございました。いろいろなことが話せて楽しかったです。ウナギはインドネシアがオリジンですか。インドネシアについてはひそかに思っていること(妄想)があります。人類の発症のスポットは何箇所かあって、インドネシア、ボルネオ近辺は東アフリカと違うもう一つの人類発症のオリジンではないかということです。根拠はありません。ジャングルが深く住みやすい、最近までわれわれの文明と接触の無かった現地人がいたり、オランウータンの存在などが理由です。また、東南アジアにおける感染症の伝播の経路がいまひとつはっきりしないこともあります(単なる理解不足かもしれません)。
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昨日 S先生に発見された 4人目