第79回日本皮膚科学会、東京・東部支部合同学術大会

新宿にいます。学術大会では多くの教育的あるいは珍しい症例などが報告されます。一番大きい皮膚科の学会は総会ですが、そのほかに国内をいくつかの地域にわけた支部ごとの学会も開催されます。今回は首都圏と東部支部(静岡から北海道まで)の約四半世紀ぶりの合同学会です。多くの症例報告から個人的に勉強になったものをいくつか紹介します。
1.ケーソンCG(防腐剤)のかぶれが増えている可能性がある(酒井ら、新潟大)・・・防腐剤と言えばパラベンが有名ですが、ケーソンCGは冷却用ゲル(暑い夏に使う枕など)などに入っていて、何かの拍子にしみだして?かぶれることがあるようです。顔のかぶれを疑ったときに冷却用ゲル製品の使用の有無も聞かないとけないかもしれない。大阪府立公衆衛生研究所HPに詳細が出ています。こっち。
2.毛染めのかぶれを疑った時に、パッチですとでパラフェニレンジアミン(染毛剤の中心成分)に陽性になる方は半数しかいない(石川ら、東邦大)。パラフェニレンジアミン陰性だった方は、香料、金属、防腐剤に陽性だったようです。疑った成分のパッチテストのみでは不完全な検査になってしまうかもしれないということですね。
3.顔や手足に棘状の小さい角化(イボ)が多発してきた高齢者・・・血液や内臓のがん(茶谷ら、永寿総合病院、上田ら、北里研究所)。中高年で両手足が硬く角化してきたとき、腋などに黒くてざらざらした皮疹がめだってきたとき、体中に短期間にイボが増えてきたときなどに、まれに悪性リンパ腫や白血病などがかくれていることがあります(きわめて稀です)。たぶん腫瘍細胞やそれに対応しようとする自分の体からいろいろな因子が分泌されて、それによる表皮細胞の増殖ではないかと疑われています。つい先日。先輩の先生から手足に棘状のイボがたくさんできた高齢の患者さんについて「何かわかる?」と聞かれました。先天性の掌蹠角化症には同じような症状を呈する病型はありますが、高齢者ではあまり聞いたことがありませんでした。学会には出てみるものですね。目の前が晴れました。
4.後天性無汗症では血清CEAが増加する(本間ら、旭川医大)。CEAは内臓の腺癌などで増加する腫瘍マーカーです。がんの存在を血液検査で見つけられないかという目的で開発された古い検査です(実際はかなり病気が進行しないと異常値になりませんので、早期診断には画像検査が必要です)。
5.右腕が赤く腫れた、抗生剤が効かなかった・・・右鎖骨下静脈血栓(角田ら、川崎市立井田病院)。下肢で同じようなことが起きた場合は血栓症を鑑別に挙げやすいのですが、上肢では個人的には盲点になる疾患だと思いました。注意します。
*今回のブログ記事の更新は1カ月半ぶりになりました。このブログ会社は1カ月以上更新しないと広告で埋め尽くされてしまいます。昨日の懇親会で何人かの知り合いが(更新されていないことについて)心配してくれました。見てくれている方がいるというのはありがたいことです。大丈夫です。原因はネタ不足と怠慢です。

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