今日は連休の最終日です。当地は気持ちよく晴れて、まさに秋晴れでした。先週届いたMB Dermaという雑誌の特集号 [皮膚科医必携! 外用療法・外用指導のポイント]は外用剤についてでした。外用剤は皮膚科で最もよく使うお薬です。外用剤(塗り薬)は同じようなチューブに入っているので似たような感じにみえますが、全く効果の異なるたくさんの種類があるのです。今回は軟膏を混ぜる、ということの是非についてです。
昔から皮膚科医は自分が良いと思ういくつかの種類の軟膏を混ぜて独自の製剤を作ってきました。先輩に昔の皮膚科の外来は独特のにおいがしていたと聞きました。(現在のように科学的に効果が証明された薬が少なかったため)経験に基づいた様々な薬効があるとされる外用剤を外来で混ぜていたからです。ホーローの板の上で(油絵につかう)パレットナイフで軟膏を混ぜる光景も見たことがあります。皮膚科医にはそれぞれ自分が最もお気に入りの混合があるのです。
しかし、チューブに入った外用剤は、メーカーが安定性(時間がたっても品質が変わらない)を証明し、お上に承認されて、世に出てきます。よもや別の種類の軟膏と混ぜられることをメーカーはまったく想定していません。
異なる二つの外用剤(軟膏)を混ぜるとき、組み合わせによっては、効果が落ちたり、安定性(保存性)が落ちたりします。前振りが長くなりましたので以下は次の階層で。
記事と関係ありません。この夏の思い出
2つ以上の外用剤を混ぜる目的は、主に利便性(患者さんの使い勝手)でしょうか。日々、薬を塗るということはとても面倒くさい行為です。湿疹が改善しない原因の第1位は(患者さんにきちんと説明しない医師の責任も大きいですが)、”塗ってない”です。”かゆいときだけ塗る”などの誤解です。外用剤も飲み薬と一緒で、時間をかけて治す薬なので、”かゆみに関係なく”1日1回あるいは2回、塗っていただかないと皮膚炎はよくなりません。・・・でも規則的に塗るのは面倒です。まして、違う種類の薬を別個に塗るのはさらに面倒です。
じゃあ、混ぜちゃえ・・・ということになります。
もう一つの理由は、小さいチューブを絞る煩雑さです。国内の軟膏のチューブのサイズは5gが最小です。昔、オーストラリア人の患者さんが怒って外来にもどってきたことがあります。「こんな小さなチューブじゃなく、もっと大きいのをよこせ」。そうなんです。彼が言うには、海外では長さ30㎝、直径3-4㎝のチューブなんです。(昭和の真ん中生まれの私の子供のころは、そんなサイズの歯磨き粉がありました)
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