今までなんともなかったのに、急に関節が痛むようになった。熱も出た(出ないときもある)。そのうち下腿(かたい:膝から下。すね)や足首に1-10cmくらいのまん丸い赤みが出て、増えてきた。しこっていて、虫刺されかと思ったけど、押すと痛い。
結節性紅斑(けっせつせいこうはん)という病気を疑います。
スネに急に出た押すと痛い丸い赤い発疹をみたら、まずこれでしょうか(他にも区別する病気はもちろんたくさんありますが、頻度からいうと)。
原因探しが大切な病気です。
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関節痛があるので、最初整形外科にかかることも多いかもしれません。皮疹のことを先生に話さないとリウマチの検査だけして痛み止めもらって、終わりになってしまうことがあります(もちろん優秀な先生は足のことも聞いてくれて、皮膚科へ紹介してくれます。先週も近所の整形外科から「結節性紅斑」という診断がついて紹介された患者がいました)。
結節性紅斑は皮膚の下の脂肪に炎症がくる病気です。脂肪自体にバイキンがいるわけではなく、何か別の原因に対して自分の免疫が変な反応をして、脂肪の組織を攻撃してしまっている状態です。
結節性紅斑の原因は、大人と子供でちょっと違います。
まず、大人から(ギリシャ人のデータですが、日本人でも傾向は似ていると思います)。
ほとんど女性で、平均は40歳です。
原因は多い順に、原因不明(30-40%)、サルコイドーシス、結核以外(ウイルス、細菌など)の感染症が多くを占め、残りにベーチェット病、薬剤、妊娠、そして結核、腸の病気などが時々みつかります。特に思春期から20歳代の若い女性にできた場合は、ベーチェット病や大動脈炎症候群(片方の手首の脈が触れにくくなる)なども考えます。関節が痛みますが、リウマチや膠原病が隠れていることはあまりありません。
子供は、7割が何らかの感染症が引き金となります。その多くはヨウ連菌感染です。残りの2-3割が原因不明、わずかに腸の病気やリンパ腫などが見つかります。
診察時にお聞きすることは、
・目の症状、口内炎、陰部の皮膚潰瘍など・・・サルコイドーシスやベーチェット病
・飲んでる薬
・下痢などの腸の症状がないか・・・クローン病という腸の病気やエルシニアやサルモネラといった感染症
皮膚科を受診したときに行う検査は、
1.生検(皮膚をちょっと切って調べます): 結節性紅斑のような押すと痛い皮疹に似ているものに、膠原病のエリテマトーデス、悪性リンパ腫、すい臓がんに関連した脂肪織炎などがあります。ですから、必ず行ったほうがいい検査です。
2.胸のレントゲン: サルコイドーシスや結核がないか調べます。
3・血液検査: 炎症の強さ、ウイルスやバイキンの種類を調べるために行います。
4.ノドの細菌検査: ヨウ連菌など
5.ツベルクリン反応
6.心電図:サルコイドーシスや心臓へのバイキン感染
(7.)心臓、胆嚢、腸などにバイキンがついていないか(症状から疑ったとき)
最初に皮膚科を受診したときの治療は、
上のような検査をやってから(1日でやりますので、結構疲れると思います)、消炎鎮痛剤を処方します。安静を勧めます。熱、関節の痛み、スネにぼこぼこできた皮疹の痛みで歩くのが結構つらい方もいます。その場合は入院を勧めます。それでも症状が強い場合はきちんと原因を調べた上で、ステロイドの内服を行います。ステロイドを内服すると嘘のように楽になります(ただ、細菌や結核の感染があると危ないですの、きちんと検査をしてからです)。
その後どうなるのか?
原因がわからない場合は、結節性紅斑のほとんどは1ヶ月程度(結構長いですね)で自然に治ります。症状が軽い場合は外来通院で治るのを待ちます。再発を繰り返すこともほとんどありません。再発する場合は何か原因が隠れている場合があると考えなければいけません。10年以上繰り返していて、そのたびに原因を調べてもわからなかった方で、何回目かに結核が見つかった方もいました。