古い教科書

出張先の病院の書棚や机に、30年以上前に出版された古い教科書がはさまっていることがあります。
医学は日進月歩です。教科書も1-2年(場合によっては月単位)で改訂が必要な項目があります。
紙媒体の教科書はそう簡単に改訂を行うことができませんので、患者さんを前にして診断や治療に悩んだ時は、やはりインターネットにたよることになります。
tuyukusa2012
ムラサキツユクサが庭の隅に生えていたので、水で消えるか試してみました。対照はアサガオです。やっぱり消えました。関連記事:友禅と発汗テスト1+/-万葉集2
ringo2012sep
りんごが赤くなってきました


それでは、紙媒体の教科書がネット媒体より全てにおいて劣っているのかというと、そういうわけでもありません。本類は病気の全体像をさっと調べたいときなどは机上にあるとなかなか便利です。インターネットで検索しても良いのですが、よほど検索語を選ばないといくつかのサイトをサーフィンしなければいけなくなります。使い慣れた教科書であれば、大体どの程度の内容が出ているかわかっている(内容の限界がわかっている)のと、調べたい病気を調べるのが簡単だからです。
しかし、やはり少し時間があれば(たとえば診療時間外であれば)年に数回改訂が行われているUpToDateという電子版の医学教科書(有料)や似たような病気を探す時は医学中央雑誌にたよることが個人的には多いと思います。
このように頻回に改訂が必要な中で、20-30年前に出た教科書というのはどういう扱いになるのでしょうか。
医学書は専門書ですから一般書に比べると高価です。日本語の本で数千円から2万程度でしょうか。英語の本になると数千円から3-4万円とさらに価格は上がります。改訂が行われて、古いバージョンになってもなかなか廃棄することができません。本を捨てるということ自体に抵抗があるのと、概念などの変遷をみるために取っておきたいという理由からです。でも新しいバージョンをすでに持っている場合は、古い本を開くことはめったにありません。
大きく遠回りしました。
出張先で本棚や机の隅に30年も40年も前の教科書がおかれていることがあります。たくさんの教科書が出版される中で生き残ってきた本たちです。歴代の皮膚科医が大事にしてきたのか、あるいは捨てるのがしのびなかったのか、はわかりません。最近、そんな本類をちょっと時間が空いた時に開くことが多くなりました。若い頃からときどき読んだことがある本でも、意外に(失礼)、それまで気づかなかった興味ある記述を見つけることがけっこうあります。30-40年前には、原因がほとんどわからなかったり、診断法も治療法もなかった病気がたくさんありました。そんな時代には、個人的な経験(視覚などの五感による記述)が記述の中心にするよりしかたがなかったのかもしれません。でも、そんな記述に今では忘れ去られている(自分の中でですが)、あるいは最近の教科書の記述にはない大切なことを見つけることがあります。中には最近英語論文になったような内容(つまり新しく発見された事柄)が、30-40年前の教科書にどうどうと書かれているのを見つけることさえあります。
特に著者が1人あるいは数人程度と少ない書籍にこのような発見が多いような気がします。また、形態学(皮疹や病理)の技術書に時間が経っても色あせないものが多い感じもします。

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