慢性蕁麻疹(まんせいじんましん)の慢性(まんせい)という意味は病気によって違います。じんましんについている慢性は発病してから6週間以上続いている、という意味です(国際的には)。日本では1か月以上続いている場合を慢性ジンマシンといいます。でも、この1か月とか、6週とか、区切る根拠はあるかというと、実はあまりないようです。ただ、蕁麻疹の多くは1か月あるいは6週間以内に自然に治ってしまうことが多いので、1か月あるいは6週以上続く場合はかなり治りにくいと予測できるので、そんな意義はあるのかもしれません。どのくらい治りにくくなるかというと、1-2年後に完全に治る確率は3-4割です(報告によって値は大きく異なります)。今回はどのように治療薬を選択していくか?という点について。
先週末は久しぶりに北海道
運転士さんのうしろに張り付いてしまった
世界で最も活用されているであろう?電子教科書UpToDateより、
1)まず、第2世代(眠気の少ない)抗ヒスタミン剤の常用量(普通の量)を飲む。第2世代とは、1980年代以後に発売された比較的新しい抗ヒスタミン剤(アレルギーのお薬)です。第2世代の中でも、とくに最近出てきたものは眠気が少なく、安全性が高いです。アレグラ、クラリチン、タリオンなどが最も眠気の少ない第2世代抗ヒスタミン剤です。1980年代以後に発売された抗ヒスタミン剤の中でも、ザジテン、セルテクト、ジルテックなどはかなり眠気が強いため、第1選択しにくい薬剤です。一方、第1世代は、ポララミン、ホモクロミン、ぺリアクチン、アタラックスなどがあります。眠気が強いという副作用があります。
2)もし上記を試して効きが悪い場合は、他の薬に変更してみるか(日本)、変更せずに1回に飲む量を増やしてみます。外国では4倍まで推奨されています。日本の能書では2倍までしか認められていません(よくある外国の標準と日本の標準が異なる例です)。ほかの薬に変更するよりは変更せずに1回飲む量を増やす方が海外では主流です。
3)それでも効かない場合は第2世代(新しい抗ヒスタミン剤)か第1世代(古い)を追加する(新しいタイプの抗ヒスタミン剤を2種類以上一緒に処方すると保険が通らないことがあるかもしれません)。
4)それでも効かない場合はH2ブロッカー、胃潰瘍の薬を追加します。
5)それでも効かない場合は、ステロイド(副腎皮質ホルモン剤)を試します。ただ、原則として、急性期(発病直後)のみ、短期間で使用するようにとUpToDateには書いてあります。症状が強い場合に短期的に症状を抑える目的で抗ヒスタミン剤にに加えて使うのであって、併用しても蕁麻疹の治癒までの期間を短縮する効果はないといわれています。
6)それでも効かない場合は免疫抑制剤を試します。
7)それでも効かない場合は、ロイコトリエン拮抗剤(シングレア)などを試します。ただしNSAIDs(消炎鎮痛剤)による蕁麻疹以外はあまり効かないようです。
ジンマシンが治らないといって受診される方のなかに、最初からステロイド(それも単独で)を処方されている方(ステロイド単独では蕁麻疹を抑えることは困難です)やセレスタミン(ステロイドと第1世代の抗ヒスタミン剤の合剤)を投与されている患者さんがときどきいます。呼吸症状(息苦しさ、喘息)や胃腸症状(腹痛、嘔吐、下痢)などの皮膚以外の症状を伴わない普通の蕁麻疹では、まずは抗ヒスタミン剤を単独で試すことがUpToDateでは基本とされています。ただし、これはあくまでもUpToDateの見解です。上記の順番を必ず守らなければいけないとか、ステロイドの使用は絶対ダメということではありません。