ある症状から原因を探し出すのが診断学です。その第一歩は「中毒」の除外から始めます。尊敬する北里大学名誉教授の西山茂夫先生のお言葉です。
熱が続いていて原因が?・・・飲んでいる薬剤による可能性はないか?
髪の毛が全体に急に薄くなってきたが原因が?・・・飲んでいる薬剤や飲み水の汚染(重金属など)による可能性はないか?
皮膚科に限らず、どんな症状であってもその一歩目は変わらないと思っています。
皮膚科にはたくさんの病名がありますが、一部の腫瘍を除いて、すべて薬剤で起きる可能性があります。薬剤性のメラノーマはありませんが、薬剤性の悪性リンパ腫はあります。
初めて皮膚科にかかる方にお願いしたいのは「お薬手帳」か「薬局で薬と一緒にもらう薬の名前が書いた紙」を持って来てほしいのです。
関連記事
皮膚科医が初診時に知りたいこと
ある皮膚疾患で受診された患者の皮疹が左右対称で全身に広く出ている場合や脱毛、粘膜の炎症(口の中など)が飲んでいる薬、サプリ、漢方、などでおきていることがあります。口から入った物に対するアレルギー反応は一部の薬疹を除いて全身に出ます。したがって、右手だけ、あるいは首だけ、といった部分的な症状の場合はその場所に限った原因(主に外からの原因、かぶれなど)を疑います。医師から処方されている薬だけではなく、サプリメントや漢方、栄養ドリンクなどでもアレルギーが起きる可能性があります。
飲んでいるお薬の種類が多いと、いちいち薬の名前を覚えておくのは大変です。ですから皮膚科(基本は受診がはじめての医療機関)を受診するときはお薬手帳かお薬の名前が書いてある紙を持ってきてください。
皮膚科医が常用薬を知りたい理由
1)薬疹の可能性がないか調べたい
2)飲んでいる薬から持病がわかる・・・診断と治療に使える。
たとえば、
糖尿病がある:感染症なら普通の方より悪化しやすい。手術をするなら傷が治りにくい、感染しやすい。
糖尿病に関連した皮膚症状かもしれない。
抗凝固療法を受けている:手術で出血しやすい。抗凝固療法を受けている理由(脳梗塞、心筋梗塞)によっては手術が 難し場合もある。
ステロイド剤を飲んでいいる:皮膚症状が本来よりも軽めに出ている可能性がある。
飲んでいるお薬から私たち医師が把握できる情報はたくさんあるのです。お薬手帳を必ず持ってきてください。