日本皮膚科学会雑誌は日本皮膚科学会(皮膚科専門医になるためには必ず所属していなければならない団体です)の雑誌です。
ここには論文や国内の地方行われているさまざまな規模の研究会(地方会、支部総会)で発表された演題の抄録(要約)が掲載されます。私は毎号の後ろのほうに載っている抄録を読むのが好きです。抄録は100字程度の短いものですが、良いものは物語になっていて、「よくここまでつきとめたなぁ」と感心します。
さて、今年の第2号に、ヘアトリートメント後に皮疹と呼吸困難とアナフィラキシー(つまり命にかかわるアレルギー性の反応です。血圧が下がればショックです。病院に行く前に命を落としてしまうこうもあります」
原因はヘアトリートメントに含まれる加水分解大豆でした。日皮会誌125(2)263,2015
ヘアトリートメント後に皮疹と呼吸困難とアナフィラキシー(つまり命にかかわる可能性のあるアレルギー性の反応)を起こした方について、原因検索を行った記事です。
まず、血液で相性を調べる検査RAST(即時型:花粉症や蕁麻疹、ぜんそくのように原因が体に入ってすぐアレルギー書状が出る場合に調べることが多い検査)では、
大豆陰性
枝豆陰性
次に皮膚に傷をつけておいて、そこに食物成分を乗せて調べる検査スクラッチテストでは
豆腐陰性
さらに、自分のリンパ球と疑われる原因物質を混ぜて反応をみる検査DLST(リンパ球幼弱化試験:自分のリンパ球がその物質に反応すると活発化する)では、
大豆、枝豆、加水分解大豆陽性
さらに、大豆の主要抗原(アレルギーの原因になっている中心)はGlym3ですが、実はこれと似ている抗原は花粉にもあります。その似ている花粉抗原 Betv2のDLSTとBetv2関連抗原について調べたところ、オオアワガエリ、カモガヤ、ブタクサ、ヨモギ、メロン、キウイのRASTも陽性でした。
抄録は短いのでこれしか書いてありません。花粉でアレルギーが起きて、似ている抗原を持つ加水分解大豆に反応するようになってしまったのか、あるいは頭皮にトリートメントをしているうちに加水分解によって細かくなった大豆成分が皮膚からしみ込んでアレルギーを起こすようになった(ついでに似ている花粉にも反応するようになった)のか、どちらかわかりませんでした。
皮膚を洗浄すれば皮膚に傷ができるわけだから、そこに微細なアレルギーを起こしやすいサイズ(皮膚に入りやすい細かいサイズ)になった物質をすりこむということは、望ましいことではないかもしれません。
いぜん「茶のしずく」(加水分解小麦)で洗顔のたびに顔や瞼が腫れ、小麦も食べられなくなった事件がありましたが、加水分解大豆でも同じようなことにならないか心配です。