高齢者という定義が難しいのですが、今回のお題の意図する(私が経験上該当することが多かったと思われる)年齢は70歳以上です。
70歳以上の男性が急に体をかゆがり出した。赤い皮疹がたくさん出てきた。かゆい以外は体調に変化はない。
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高齢の方で体中に1㎝以下の赤い少し盛り上がったかゆいぶつぶつ、あるいは少しみみずばれのように盛り上がる皮疹、あるいは地図のように広がる赤い皮疹が腰回りを中心に出て、非常にかゆいと言って受診されているかたは結構います。薬剤との関係、入浴方法、内臓がんがないか人間ドックを勧めたり、いろいろな対策を提案します。が、個人的な経験では薬剤以外に原因が判明することは極めてまれです。
ただ、皮疹が出始めたころから好酸球という細胞が増えてれば、内服中の薬剤のチェックから始めることが多いと思います。
薬疹は薬剤という異物と自分との相性がたまたま悪くなった、ということであり、薬剤を処方する医師にとっても患者さんにとっても、いつ起こるか予測できません。薬疹はある確率で起きますので、初めての薬疹については、処方した医師にも患者さん本人にも責任はありません(それでもそのような事象に出くわした新人にとっては衝撃かもしれません)。薬疹が起きてしまったときに速やかに対応できたかどうかが問題視されるようです。
高齢者ですと、乾燥による皮膚炎(皮脂欠乏性皮膚炎:腹部から腰部、下腿がかさかさしてかゆい)が多いのですが、赤いぶつぶつが全身に突然出ることはありません。たとえば、耳の前や生え際、四肢にもかゆい皮疹がたくさん出ている場合は、まずは薬剤性を疑います。特に血圧の薬や血液をサラサラにする薬です。どちらも大切な薬なので、勝手にやめてはいけません。必ず主治医に相談してください。もう一つの疾患は自己免疫性水疱症の出始めです。多くは血液検査で診断できます。
薬を止めても治らない(なお、止めてから皮膚炎が治るまで3-4週間かかることもあります。数日ではよくならないこともあるので焦って薬の可能性を捨てないことが必要です)ときは、内臓の検査(特にがん)をしてもらいます。血液検査だけでは不十分で、胃カメラや大腸の検査、肺のCTやレントゲンが必須です。以上いろいろ検査を行っても、薬をやめても治らない方がいます(結構います)。「痒疹;ようしん」、などと呼んで塗り薬と飲み薬で様子をみていくことになります。原因がはっきりしないので気持ちが悪いのですが、かゆい皮疹をほっとくわけにもいかないので、しかたなしです。紫外線治療が効くこともあります。
なお、虫刺され様の固いしこりがたくさんできている場合(痒疹結節:ようしんけっせつ)は長くつづいたかゆい皮疹でよく認められます。多いのはアトピー性皮膚炎や上記高齢者に出ることが多い痒疹ですが、(特に陰嚢にも出ている場合は)、非常にかゆみが強くて固い数㎜以上のぶつぶつがたくさんできている場合は必ず「疥癬:かいせん」を調べないといけません。