日本癌治療学会参加のため京都に来ています。昨年からメラノーマの新薬が出始めました。腫瘍免疫を上げる薬は肺がんなどの他の臓器のがんにも効くことがわかってきているため、先行した皮膚科のセッションにも多くの方が参加してくれました。明日土曜日に帰って、日曜日は地元で市民向け講座で皮膚がんの講演を行う予定です。その準備をしていて思ったことがあります。
黒い腫瘍(シミ)で切除やレーザー治療を受けるときに、ぜひお願いしたいのが写真撮影です。プライバシー保護などの問題がありますし、自分の皮疹を写真にとられることに悲しい思いをする方もいるかもしれません。。でも、皮膚科の診療には必須の検査だと個人的には思っています(医療費はかかりません。すべて医療機関の負担で行われています)。とくにホクロの切除を行う際には、写真は後に良性か悪性化を決める際にとても重要な情報になるのです.
昨朝は宝ヶ池から圓通寺まで散歩 寒かった 手がかじかみました 京都も中心部から少し離れると田園風景が残っていて、郷愁を感じます。小さいころ祖母に連れられてサトイモを掘りに行ったことを思い出しました。上賀茂神社まで行こうと途中まで行きましたがタイムリミット。断念してもどりました。
夜は琳派展へ。俵屋宗達、尾形光琳、酒井抱一の風神雷神が3面に展示されていて豪華でした。雷神の周りに舞う細布の躍動感はやはり宗達が一段上でしょうか。琳派お腹いっぱいの展覧会でした。
小さい腫瘍は取ってしまうと、なくなってしまうので、切除前の状態がわかりません。
たとえば、メラノーマは黒あるいは赤い腫瘍です。小さいときは良性のホクロ(色素細胞性母斑、母斑細胞母斑)と区別するのが難しいです。大きさが6-7㎜を超えてくると違いが少し現れるようになります。切除して病理検査(薄くスライスして染色して顕微鏡で観察する)を行いますが、見た目で良性か悪性か迷う小型の黒い皮疹は、顕微鏡で見ても(拡大しても)難しいことが少なくありません。
肉眼で見るより、光学顕微鏡(皮膚科の外来には必ずある顕微鏡)の方が、さらに電子顕微鏡、さらに分子のレベル(分子生物学的手法)と、どんどん物事を拡大していけば、きっと診断精度は上がるだろうと、という夢があります。一部は成功しているものもありますが、実は木の枝より木全体、さらに森や山全体を見たほうが全体的な異常を意識しやすいといことも多いのではないかと思います。
つまり、一番マクロ的である視診(裸眼で見る)では明らかに悪性の所見があるのに、病理検査では所見が乏しいことがけっこうあります。病理医は標本のみで診断しなければなりません。皮膚科は自分でも病理標本を見るので、病理標本1枚で診断をつけることのむずかしさをよく知っています。病理の先生は大変です。病理の先生の診断精度を上げるのは臨床医(生検すした医師)からの詳細な情報です。病理診断の精度を上げる重要なツールの1つが「電話」だと聞いたことがあります。つまり臨床医とのコミニュケーションです。
1‐2㎝の小さい皮膚腫瘍の切除は瞼や鼻などの形成的な処置が必要な部位を除けば比較的容易です。手術時間10‐20分あれば終わります。局所麻酔、日帰り、です。取った組織は病理検査に提出します。そこでメラノーマの疑いがあるとの報告がきたときは、通常診断確定のためにさらに専門病院に紹介されることが多いと思います。しかし、病理診断が難しく、切除前の写真がなければお手上げになります。
皮膚腫瘍を切除する前には写真を撮らせてください。あるいは撮ってもらってください。
レーザーなどの病理診断を行えない場合は特に治療前の写真が必要かもしれません。レーザーに関しては病名をきちんと聞いてください・・シミという病名はありません。小型の黒い腫瘍で多いのは良性では、色素細胞母斑(いわゆるホクロ)、日光黒子、脂漏性角化症、悪性では基底細胞癌やメラノーマです。最近のスマホのカメラ機能はとてもよいので自分で撮っておいてもよいと思います。