米国臨床腫瘍学会(ASCO)に来て3日目です(学会としては4日目)。会場で毎日タブロイド判の新聞が配られます。すべてを持って帰るとかさばるので皮膚がんに関連した記事のみを切り取って他は処分します。本日分の新聞にはあまり皮膚科に関連した記事はありませんでしたが、ジンバブエのがんの状態についての記事がありました。
朝の散歩 気持ちいいです
ジンバブエは数年前に通貨危機を迎え、額面1000億ドルという紙幣が発行されるなど経済的に混乱していることで話題になりました。第一次世界大戦後より英国の植民地になっていましたので、黒人と白人が住んでいます。タブロイド判では2006年と2013年の黒人と白人におけるがんの種類と発生率について書いてありました。
黒人女性(2013年):1子宮頸がん(32人/10万人あたり)、2乳がん(12人/同)、3カポジ肉腫(7人/1同・・・2006年の11.9よりかなり減っている)
黒人男性(2013年):1前立腺がん(17,8/同)、2カポジ肉腫(14.8人/同・・・2006年の21.8よりかなり減っている)、悪性リンパ腫(8.6)
白人女性(2013年):メラノーマ以外の皮膚がん(43.7/同)、乳がん(21.3/同)、大腸がん(7.5/同)
白人男性(2013年):メラノーマ以外の皮膚がん(52.8/同)、前立腺がん(12.1/同)、大腸がん(4.8/同)
黒人と白人ではがんの種類がずいぶん違います。因みに日本人における乳がんの罹患率は60-70人/10万人ですので、ジンバブエにおける各種がんの発生が特段多いかどうかは、年齢分布による補正が必要です。日本人は高齢者の占める割合が多いので、人口当たりのがんの発生は見かけ上多くなるからです。
カポジ肉腫はHIV感染でおこることがほとんどです。ジンバブエはHIV感染症が多くて問題になっています。治療薬の登場などで少し数は減っていますが、まだ問題は深く大きいようです。白人はメラノーマ以外(たぶん有棘細胞がんと基底細胞がんがほとんどを占めると思います)の皮膚がんが1位になっています。日本人における皮膚がんの罹患率がだいたい10/10万人(男女別に分けた時)ですので、紫外線の強いところに白人が住むと皮膚がんの発生が増えることを示しているのだと思います。