アトピーの赤ちゃん、離乳食で卵をたべさせてもいいか?

赤ちゃんの食物アレルギーの原因として多いのは卵(鶏卵)と乳製品です。長い間、赤ちゃんのうちは食べさせないほうがよいのではないか・・・という意見が大勢を占めてきました。しかし、国立成育医療研究センターを中心とする研究グループの研究(PETIT スタディ、Lancet 2017; 389: 276-86)により、日本小児アレルギー学会が今年 6 月に「鶏卵アレルギー発症予防に関する提言」を出しました。(以下、うはら皮膚科の表現であり、学会の提言文と異なり、不正確な表現を含みますが)アトピー性皮膚炎の赤ちゃん皮膚炎を治してから卵粉末を早期より少量ずつ徐々に増やしながら食べさせていくと1歳の時点で卵アレルギーになる率が下がった。対象としてカボチャ粉末を食べていた群が37.7%、卵粉末群8.3%だった。アレルギーに絶対ならないとうことではありません)・・・という内容です。マスコミにも大きく取り上げられましたが、ただ単純に卵を早く食べさせたらアレルギーにならない、という不正確な解釈をする危険性があるということで、3日前の10月12日に、日本小児アレルギー学会が意図する内容(注意点)をHPに掲載しました。

「鶏卵アレルギー発症予防に関する提言」の解説(小児科医向け、患者・一般の方向け)について

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夏休みに作った(作者が意図したものが自己変形したため一輪挿しと名付けた)ものが焼きあがってきました 季節外れの朝顔を活けてみました。

こっちも季節外れのサワガニ 威嚇してます

ポイントは以下です(うはら皮膚科が解釈した説明です。正確性に欠くところがありますので、ぜひ上記HPとPDFで確認してください)

1.この提言は①アトピー性皮膚炎で、2生後6か月までに皮膚炎が治療によって抑えられた赤ちゃんに、③少量の鶏卵粉末(全卵換算で0.2g)から始めて少しずつ食べる量を増やしていった研究結果に基づいたものであること

*皮膚炎のある赤ちゃんは皮膚から食べ物の成分が入ってアレルギーになってしまう危険性がそもそも高いので、食べ始める時期を早めても効果は薄い可能性がある(湿疹を治療せずに、抗原が入りやすい皮膚に傷を残したままで、食事のことだけ注意しても意味はないかもしれない、うはら皮膚科解説)

*皮膚炎のない赤ちゃんに対して早期に卵を食べさせ始めても卵アレルギーを予防する効果は不明(低い?)なので、皮膚炎がない赤ちゃんんついては、すでに公表されている「授乳・離乳の支援ガイド 2007」にしたがって離乳食を始めること。

*鶏卵の黄身も白身も全部入った粉末を、生後6か月から少量から初めて徐々に増やしていった研究であり、もっと早い時期に食べさせ始めたらどうかとか、いきなりたくさんの量を食べさせたらどうなるかとか、ということはわからない(危険かもしれない)。

2.離乳食として卵を食べさせ始めたときにアレルギー症状が出た場合は、すでに卵アレルギーになってしまっているので、卵を食べさせることは中止し、対策について専門家に相談すること(早くに食べさせたらすでになってしまっている卵アレルギーがよくなる、という提言ではない)。

3.早くから鶏卵を食べさせても、途中でアレルギーを発症する場合がある(1歳の時点で、早期に食べさせ赤ちゃんの8.3%、食べさせなかった赤ちゃんの37.7%にアレルギー症状が出た、とのことです)。

4.鶏卵についての提言であり、他の食べ物に対して同じことがあてはまるかどうかはわからない(乳製品や小麦にあてはまるか不明)

うはら皮膚科のコメント

小児皮膚アレルギー学会はエピペン(アナフィラキシーのときに自分で打つ注射)をどのような症状とが出たときに打つべきかという提言も最初に出した学会だと思います。「・・・は注意しなさい」という提案はある意味気楽ですが、「・・・は大丈夫」という提案は勇気がいります。確率が低くても例外は必ずありますし、正しいことがきちんと伝わらない(医師のせいでもありますが、マスコミにも、受け取る患者さん側にも責任があります)という問題もあるからです。

赤ちゃんのときにアレルギーになりやすい食品を早めに食べさせたほうが(あるいは制限したほうが)がアレルギーの発症予防になるのかどうか?という研究はたくさんありました。しかし、差はでませんでした。小児皮膚アレルギー学会のコメントでは、皮膚炎をそのままにして食品の開始時期だけを比較したからではないかとと述べています。アレルギーになりやすい別のルート(皮膚の傷、皮膚炎)を放置して、なおかつ食事制限だけすることは、むしろ最も悪い結果(より食べ物アレルギーになりやすい)になる可能性があるかもしれません。

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