BMI (ボディマス指数:Body Mass Index) が高い、肥満、内臓脂肪が多い、は多くの病気を引き起こす、あるいは悪化させる原因として知られています。Lancet Oncologyの先月号に「BMIが高い男性はBMIが正常の男性に比べて、(この数年で登場してきた)新薬が効きやすい、という論文が掲載されました。免疫を上げる薬(イピリムマブ、ニボルマブ、ペムブロリズマブなど)だけでなく、メラノーマの細胞で異常になっている増殖を止める薬(ダブラフェニブ、トラメチニブ、ベムラフェニブ、コビメチニブ)でも同じ結果でした。なお、女性や従来の抗がん剤(ダカルバジン)については肥満と効果の間に関係は認められなかったそうです。(因みに効果を上げるために無理に体重を増やすことは勧められません。為念)
春ですね
ウドとフキノトウ
この研究では、BMI正常 (18.5-24.9), 過体重(25-29.9), 肥満 (≥30)の3つのグループに分けて比べています。正常グループに比べて過体重と肥満グループで男性の場合が新薬で治療を受けた後の生存期間や無増悪生存期間が長かったというデータです。副作用についてはBMIと関係なかったとのことであり、いったい何が関係しているのか?です。内臓脂肪から出るさまざまな物質(皮膚科では乾癬の原因として有名です)が関係している可能性が述べられています。著者らは仮説として肥満による男性の女性化(昔から男性に比べて女性の方が予後がいいと言われてきました)などを挙げていますが、本当のことはまだわかりません。
著者らは今回の現症を “obesity paradox” と呼んでいます。肥満パラドックス(パラドックス:逆説・・・定説に逆らうもの)でしょうか。ちなみに痩せている人はどうかですが、全体の2%しかいなかったため解析からはずしたそうです。
著者らの結論は、薬の効果をみる試験(治験など)では、BMIや性別を効果に影響を与える因子として採用したほうがよいのではないか、です。世界中で新薬の効果を予測できる因子(バイオマーカー)を探しています。この研究は「きっと太っている患者さんは薬が効きにくいのではないか?」という仮説のもとに解析したら真逆のデータが出た、ということでしょうか。何事もやってみないとわからないですね。