今日骨董品鑑定のTV番組の後の番組で、中島誠之助さんが濱田庄司という陶芸家を紹介してました。
大皿に柄杓で釉薬をかける。15秒程で終わってしまう工程によって作為のないすばらしい絵柄が浮かび上がる。「15秒という時間で終わってしまうのはもったいなくはないか?」と聞かれて、この工程は(今までの経験)60年+15秒と考えたい・・・というようなことを述べたと紹介されてました(本当は別の意味かもしれませんし、TVでの説明を誤解しているかもしれません)。皮膚科医の仕事も似ていると思いました。
昔、絵を描いてました。デッサンが下手なので主に抽象画を描いて(作って)ました。でも、変に自分で考えて描くより、偶然を利用した方が気持ちのよい作品ができるレベルでした。でも偶然は厭きます。濱田庄司に「もったいないのでは?」と尋ねた方の真意はわかりません。苦労して作陶した本体やベースになる釉薬をかけ終わった土台に対して15秒の絵付けがもたいないのか、高額な作品なのに絵付けに15秒しかかけていないのがちょっと不満であったのか、わかりません。
さて、足の裏のホクロが悪性か良性かは、訓練した皮膚科医であれば90%の症例は見た瞬間にわかります。間違いなく良性であるとわかればすぐにお伝えするようにしてますが、遠方から診察に来られ、かつ1時間も待ち、その間メラノーマかもしれないとどきどきしている方に、1秒の診察で「問題ないですね。良性です。」と言ってよいか、いつもちょっと迷います。「見ただけでわかるんですか?」と聞かれることも時々あります。
廊下ですれ違いに、飲み屋で、授業の後に、相談されることもあります。もちろん多くは1秒で診断できます。でも、その1秒間に私達皮膚科医の頭の中で判断している工程のバックには日々(私の場合25年間)の修行が付いてます(私の場合は半分ぐらいはあまり一生懸命ではなかったかもしれませんので、12.5年+1秒としときます)。
ホクロの診断は、以前は眼で見るだけでしたが、今はダーモスコピーという偏光レンズの拡大鏡を使用しています。手持ちの小さいレンズですが、これでじっくり見てから診断をお伝えするようになってから「見ただけでわかるんですか?」という質問はほとんどなくなりました。
やはり何か検査機器(機械)を使ったほうが患者さんは納得してくれやすいのかもしれません。
ネット上の解説では、濱田庄司の15秒はその前の60年を凝縮している、との解説文が眼にとまりました。えらそうですがちょっと違和感を感じました。15秒間の前に60年がある。次の絵付け15秒の前には60年+前の15秒がある。じゃないのか、あるいはそうありたいと思いました。今回はしつこくなってしまいました。
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ども!面白い話ですね。60年の積み重ねの上の判断。
一方で患者は結果だけでなく安心感を求めているので、そこをどう埋めるか、が大事かも。一言でもなにかその60年の片鱗を伺わせる言葉や仕草があると違うでしょうね。
そういえば昨年まさにかかとのホクロの件で診察を受けたときですが、デジカメに接写レンズをつけて撮影したり、拡大鏡のようなギミックで患部を見たりしておられました。今すぐ何と言うことはないが、刺激を受けやすいところなので、将来変化するかも知れないという診断。うーむ。ここは一方で、患者の判断も求められるわけですね。
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ありがとうございます。ちょっと偉そうなことを書いてしまいました。