少し下火になりましたが、先月はいつもより帯状疱疹の患者さんが多かった感じがします。帯状疱疹は皮疹が出る病気ですが、問題は後に残る神経痛です。帯状疱疹後神経痛(たいじょうほうしんごしんけいつう)といいます。
ちょっと遅くなりましたが、昨年7月に新しい痛み止めが使えるようになりました。トラムセットといいます。
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帯状疱疹は皮膚疾患のなかではトップ10に入るよくある病気です。予防ワクチンが普及していない日本では、まだまだ多くの方がなる可能性がある病気です。何も治療しなくても皮疹は自然に治りますが(深い潰瘍になって。あとが残ることはあります)、一番辛いのは痛みだと思います。多くの方は1ヶ月程度で皮膚も痛みを軽くなっていきますが、一部の方には頑固な痛み、かゆみ、しびれ感、変な違和感などが残り、不眠になる方もいます。
これらの痛みに対しては、まず鎮痛剤などを飲んでもらいますが、以前は鎮痛剤意外に正式に保険適用の薬がほとんどなく、てんかんの薬(ガバペンチン)などを適用外で使用せざるをえないこともありました。
ここ1-2年で新しい薬が認可されました。ひとつはリリカです。そして昨年夏から処方できるようになったのがトラムセットというお薬です。
トラムセットはアセトアミノフェンとトラマドール塩酸塩という2種類の薬が合わせた飲み薬です。
アセトアミノフェンは一般の薬局で購入できるポピュラーな鎮痛剤です。1年ほど前より日本でも欧米並みの使用量が認められ、十分な効果が期待できるようになりました。それまで認められていた量では少なくて、鎮痛効果が低かったため、国内の医師にとってはアセトアミノフェンは弱い薬というイメージが強かったかもしれません。
トラマドール塩酸塩(単剤での商品名はトラマール)は弱オピオイド鎮痛剤です。オピオイドとはオピオイド受容体(じゅようたい:ある作用を開始させるスイッチ)に結合して(スイッチが入る)痛みを感じさせなくする物質のことです。アヘンやモルヒネなど麻薬と呼ばれる物質が含まれます。弱オピオイドの弱はその効果が弱いということもありますが、法律上麻薬を処方する免許がなくても処方できるという薬剤になります(すいません。簡単すぎて不正確なところもあります)。医師免許を持っていても麻薬は処方できません。県知事に使用する場所(病院名)とともに許可をもらわないといけません。許可を受けた病院でしか処方できません。薬品も厳しく管理されます(当然ですが)。
アヘンやモルヒネと同類といわれると中毒などを心配する方がいるかもしれません。特に日本人はその傾向が強かったようです(今でもそうかもしれません)。快楽を目的とするのではなく強い痛みに対してオピオイドを使用した場合には、痛みがなくなればオピオイドの使用もやめられることがわかっています。痛みに使用しているからです。
さて、オピオイドでよく出る副作用は、吐き気(悪心おしん)、便秘、眠気です。トラマドール塩酸塩はモルヒネなどと比べて副作用が出にくいとされていますが、それでも吐き気は4割ぐらい、吐いてしまう(嘔吐おうと)方も1/4程度の患者さんに出ます。特に飲み始めの2-3日に出やすく、その後は落ち着いていくようです。でも、吐き気がでると、もう患者さんは二度と飲みたくないとおっしゃいます。なので、最初から吐き気止めを予防的に飲んだほうがいいと思います。
トラムセットは最初1回1錠、1日4回で始め、1回2錠、1日4回まで増量できます。
トラムセットはアメリカで認可されてから日本で認可されるまで10年かかりました。日本での認可前にはすでに70カ国程度で認可されていたようです。トラマドール塩酸塩(単剤での商品名はトラマール)も国内認可は2010年で、すでに100カ国程度で認可されていた状況だったようです。100カ国というと、よくオリンピックの入場行進のときに流れる「・・・国と地域の参加」というレベルですね。ドラッグラグといいます(世界の標準薬が日本では使えない)。
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