生後11か月までにピーナッツを食べ始めた群は5歳まで食べなかった群より5歳時点でのピーナッツアレルギーが少ないというリポートが今月の初めのThe New England Journal of Medicineという医学雑誌に出ました。早く食べ始めたほうが食物アレルギーになりにくいということでしょうか?
記事名:Randomized Trial of Peanut Consumption in Infants at Risk for Peanut Allergy
赤ちゃんの食物アレルギーの原因で多いのは鶏卵と牛乳です。その後成長にともなって増えてくるのは、蕎麦、魚卵、ピーナッツ、エビ・カニです。今まで普通に食べられたものが急に食べられなくなるのはつらいですね。ある食べ物にアレルギー反応を起こすようになる原因として経皮感作が疑われています。つまり皮膚の傷からしみ込んだ食べ物の成分が感作(ある物質に対してアレルギーを起こす抗体ができてしまう)を起こすのではないかということです。アトピー性皮膚炎や手荒れがある方は皮膚に傷があるので食べ物に対して感作が起きやすい状態にあるのではないかということです。
この研究では、生後4-11か月の乳児を2群に分けて、片方はピーナッツを食べさせ、もう一つの群はピーナツを食べさせないで5歳時にピーナッツの皮膚アレルギーテストをして陽性反応を起こす率を比べました。乳児期からピーナッツを食べさせた群の検査陽性率は10.6%、食べさせなかた群の陽性率は35.3%でした。著者らは早く食べさせたほうがピーナッツアレルギーの頻度を減らせると述べています。
著者らがこの研究を行ったきっかけは、1)欧米でピーナッツアレルギーの子供が増えているため、1998年ごろより、ガイドラインではアレルギーを起こしやすい乳児や母親は妊娠中からピーナッツを食べないようにと勧告されていた、2)ピーナッツアレルギーの頻度には地域差があって、英国のユダヤ人の子供は、イスラエルの子供よりピーナッツアレルギーが10倍多いこと、3)英国のユダヤ人は乳児にピーナッツを食べさせないが、イスラエルでは生後7か月より食べさせること・・・から乳児期に食べさせたほうがむしろアレルギーは起きないのではないかと考えたようです。
うるし職人の家に婿入りした男性がかぶれないようにするために漆を毎日なめた、あるいは花粉症の治療で花粉のエキスを舌の下にたらして脱感作する、などということから粘膜からの吸収はむしろアレルギーを起こしにくい仕組みを作るのかもしれません。
箱入り娘や箱入り息子はよわっちくなるのかもしれません。この記事を読んでかってに自分の赤ちゃんにいろいろたべさせるようなことはやめてくださいね。あくまでもピーナッツのお話ですから。