宣伝です。ちょっと変わった皮膚科診断学の本を出します。
皮膚科診断をきわめる: 目を閉じて診る,もうひとつの診断学(学研メディカル秀潤社)です。
皮膚科診断をきわめる: 目を閉じて診る,もうひとつの診断学 Amazon
この本には写真がありません(絵はあります)。皮膚科医は皮膚の症状を解析して診断する(形態学)のですが、解析できるからこそ陥るかもしれない思い込みの落とし穴に落ちないために、自分が考えてきたことを記した本です。皮膚を見なくても電話相談(言葉で)で皮膚症状とリンクする危ない疾患はだいたい予測できるのではないか?という実験です。医師ではない一般の方も診断できることを狙いました。このブログで9年間ほどやってきた試みにも似ています。絵本のような皮膚科診断学の本を出したいという希望もかないました。このブログで記事を書くためのエサは写真を載せたいという欲求ですが、本書のそれは自分の絵を載せた本を出したいという野望でした。突飛なアイデアに乗ってくれた学研メディカル秀潤社に感謝しています。
カテゴリー: 雑記帳
2016年元旦
Debate
今日は世界皮膚科学会の最終日でした。「(診断と治療を行う意味のある?)メラノーマ患者は本当に増えているのか?」というテーマで、「増えている。早期発見に努めて、病気でなくなる方を減らさなければならない」、「いや、ほっておいたら死亡するような本当に治療をしなければいけない患者は増えていない」という相反する2つの意見に分かれて議論されました。増えていない・・・という意見を出された先生が挙げた根拠は、主として増えているのは(診察する患者さんの数が増えたことによる)転移を起こさない軽症例であり、新規患者の増加に比べて死亡者数はそれほど増えていない、疾患概念(しっかんがいねん:ある病名がどのような状態までを含むのか?)の変化によって病理診断がオーバーになっている(30年前は良性と悪性の中間のグレイゾーンに入れていた症例が、その後、悪性の診断名になるようになった、あるいは悪性よりに診断してしまったなど)、でした。疾患についての啓蒙やダーモスコピーなどを用いたスクリーニング(米国では人口の10-20%が皮膚がんのスクリーニングを受けているそうです)のが本当に意味があるのか?という印象を与える講演でした。
なるほどなぁ・・・と考えていたら、次に「きちんと治療をしなけれなならないメラノーマは増えている」という意見の先生もたくさんの論文を引いてこれに反論していました。ここでも、なるほどなぁ・・・と納得してしまいました。
さて、議論は全面対決をしながらも終始なごやかな雰囲気で進みました。冷静に(なごやかに)議論を進めるというのはなかなか難しいです。自分の飯のタネに意味がないといわれれば心穏やかではいられませんから。
この学会ではほかにも、乾癬に対する光線療法の役割はまだあるのか?とか、重症薬疹であるTEN型薬疹の治療は症状が治まるまで特別な治療をせずに緩和的に見てくべきか、積極的に免疫療法をすべきか?というようなテーマがありました(自分は出席しませんでしたので内容は?です)。こういうテーマがあるということは、これらの問題については意見が完全に一致していないということが感じられます(もちろん、賛成する先生と反対する先生の比率が50:50とは限りません。5:95なんてこともあるかもしれませんが・・・)。
昨夜競技場に向って歩いていたら、突然、オフィシャルバージョンのコカコーラのゲリラ的?な配布がありました。今回も、ちょっとアウエー感のある(個人的には結構楽しい)中で、緊張した試合になりました。
チューリッヒに来ています
赤いブドウにほっぺた寄せて(ワインとニキビ)
ワインとニキビ・・・という言葉を検索エンジンに入れると、ヒットするのは「ワインはニキビに効く?」などという記事ですが、今回は違います。ブドウにニキビ菌と似た菌がいた、というお話です。
出展
1.Interkingdom Transfer of the Acne-Causing Agent, Propionibacterium acnes, from Human to Grapevine
2. Acne bacteria spotted in grapevines
slideshareにアップしてみた
韓国で講演したメラノーマの病理診断のスライド(の一部)をアップしてみました。研修医用なのでこのブログの趣旨とはずれてますが。
メラノサイトのお母さんはどこに隠れているのか?
メラノサイトは色素細胞のことで、メラニンを作っています。紫外線に当たると皮膚の細胞が痛むのでメラニンをメラノサイトからもらって自分の細胞の核の上に置きます。日傘になります。皮膚の表面は表皮細胞が石垣のように積み重なって数㎜程の厚みを作っています。外(死の世界)と内(生の世界)を隔てる役目をしています。この表皮細胞の層の一番下層の細胞(基底細胞)が分化して上方に移動しながら表皮を作りますが、この基底細胞の間にメラノサイトがポツン、ポツンと存在しています。これから表皮を作らなければならない表皮(基底)細胞を紫外線から守るためのメラニンを供給するためです。
さて、ヤケドなどで表皮全層が死んでしまうことがあります。でもあまり深くまで痛んでいなければ皮膚は再生します。どこから再生するかというと、毛から表皮細胞が広がってきます。毛は成長の時期は深くまで伸びますが、お休みの時期は浅いところまで毛根が上がってきます。この一番毛根が上がってくる部位より少し浅いところに毛を立たせる筋肉がついている部分があります。ここに表皮細胞の母(幹細胞、ステムセル)がいます。実はメラノサイトの母もこの部位にいます。
前線(表皮)に母がいると、いったん事あれば一族郎党が全滅してしまう危険があるので、ちょっと深いところに隠れているのかもしれません。
しかし、体の中にはもともと毛がない部位があります。手の平(手掌:しゅしょう)や足の裏(足底)です。手の平や足底はもともと色は薄いですが、メラノサイトはいます。毛のないこのような部位ではメラノサイトの母はどこに隠れればよいのでしょうか?表皮から深い部位にトンネルのように伸びる組織は毛の他にもう一つあります。エックリン汗腺です。エックリン汗腺は表皮から導管が伸びて皮下脂肪が表れる位置で汗を分泌する部位(分泌部)で終わります。分泌部の周囲にの血管から水分とともにいろいろな老廃物をもらって汗として表皮表面に送り出します。汗はおしっこのようなものであり、汗腺は腎臓に似ているかもしれません。
手足のメラノサイトの隠れ場所は?
話が長くなりました。
そうですエックリン汗腺の分泌部じゃないか?というのがこの論文です。
A melanocyte-melanoma precursor niche in sweat glands of volar skin
エピガスランタンの上で香木を焚いてみました。火力の調節ができてけっこういいかも。
日本癌治療学会
今年は夏の横浜で開催されました。普段は10月ごろなので暑さが心配でしたが、気温が低くて夜は少し肌寒く感じることもありました。昨年に続き、今年もメラノーマのシンポジウムは会場がいっぱいになり、一部立ち見の方も出ました。ありがたいことです。これまた昨年と同様に、自分の講演前に座長の先生から「こんなに会場に聴衆がいることについてどう思いますか?」と聞かれましたので、「大変ありがたいことで、自信になります」というような言葉を返しました。その後、座長の先生はおもむろに聴衆の方々に向かって写真撮影の許可をもらって、座長席から人でいっぱいの会場を撮らせてもらっていました。とても先生の人柄が表れていて、会場がなんだかなごやかな雰囲気に包まれました(と私は感じました)。なんとなくゆったりとした気持ちで自分の講演に入れました。
今日は8月最後の日曜日です。今月はずっと雨が降っていた感じがしますね。
‐かんがへて飲み始めたる一合の二合の酒の夏のゆふぐれ‐ 牧水
心は皮膚にある
テルマエ・ロマエ
家人に誘われて見てきました。いい映画ですね。面白かったです。戦いで傷ついたグラディエーターたちが傷を癒す場面で、「こんな沸かしただけのお湯につかっても傷は癒えない・・・」みたいな表現が出てきます(正確なセリフは忘れてしまいまいました。だいたいの感じです)。私も「そうだ!」と思いました(私がそうだと思った点と原作者の意図とは大分ずれていると思います)。真水は傷にしみるのです。
以前、記事(草津温泉と皮膚)にもしましたが、「温泉はいろいろな成分が溶け込んでいるので真水より浸透圧が多少高い。したがって、真水よりはしみないはずだ」、「傷に布を巻いて細菌感染がおきる状態より、毎日温泉に浸かっていた方が痛くないし、傷も清潔にでき、かつ治りやすいに違いない」とか、「自分が江戸時代に生きていて、もし大きな切り傷を負ったら温泉に塩を持っていくかも」、など、くだらないコメントが残っています。
飛び石祝日の29日 職場の仲間とお花見 桜吹雪の中でのべーべキューになりました 春が行きます
差し入れの鮎です おいしかった