皮膚が乾燥してカサカサする!

よくある皮膚の病気(9) 皮膚が乾燥してカサカサする

秋から冬、そして春先にかけて体がカサカサ乾燥します。季節的な湿度の低下、暖房によるさらなる湿度の低下、そして年齢が進むにつれて低下する皮膚の水分含有量、の三つが原因です。

そして、もう1つ。そう、入浴方法です。

 乾燥して痒がるお年寄り、

 「入浴には注意してるんだよ。石鹸は絶対に使わないね。タオルでこするだけだよ。」

魚が水の中から陸に上がり、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類に進化しました。水から出るためには、脱水という危険から身を守る必要があります。腎臓は、なるべく少ない水で体の毒素を外に出す(おしっこ)システムですし、皮膚にも水を逃さないシステムができあがりました。ヒトの皮膚は何層もの表皮細胞が石垣のように重なっていますが、これは、魚以外、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類に共通した皮膚の構造です。魚のみ構造が異なります。

さて、正常では、皮膚の表面は薄い油の膜で覆われ、その下には100分の2mm前後の薄い角層(垢です)があります。この2つで主に皮膚からの水の蒸発を抑えています。セロテープを皮膚に貼り付けてびりっと剥ぐと(小学生の頃、友達同士でふざけてやっていて、先生に怒られたことがあります)、皮膚からの水分蒸発量は数十倍に増加するというデータがあります。薄い角層の細胞と細胞のすきまには石垣の石の間のセメントのような物質がつまっています。細胞内には水に溶けやすい保湿成分があります。

セメント物質と細胞内の成分の2つが主に水をひきつけておく(保湿)働きをしています。

効率良く皮膚のバリアーを破壊するためには、

まず表面の脂を除く(石鹸です)、角層(垢)を取る(垢すりです)。次に、セメント物質を除き(石鹸)、水溶性保湿物質の除去(ゆっくりお湯につかると、溶け出て行きます)が済むと、皮膚からは水が蒸発し放題、保湿作用はなし、という状態になります。この状態ではいくら長く水に浸かっていても、外に出れば、水分はすぐに抜け出てしまうことになります。 家庭用スポンジ(良く水を吸う)が、乾燥ヘチマ(見たことありますか?)になったイメージです。

垢も大事!ということですね。

お風呂は私も大好きです。でも、冬場などは、ほどほどにしないとね。

ラテックスアレルギーとゴムの木の痛み

ラテックスアレルギーとゴムの木の痛み
生体防御蛋白とアレルギー
何年か前の講演会で聞いた内容です。私には目からうろこでした。
以前、使い捨てゴム手袋の使用によって手の腫れやかゆみといった皮膚症状や時に全身のアレルギーが医師や看護師に起きて、問題になったことがありました。ゴムの成分であるラテックスのアレルギーです。
さて、ラテックスは植物が病害虫から自らの身を守るために産生する生体防御蛋白質の1種であるという説があります。この生体防御蛋白質には多くの種類が知られていますが、問題なのはヒトにアレルギーを起こす可能性の高い物質が含まれているということです(国立医薬品食品衛生研究所HPより)。
交配や遺伝子組み換え(生体防御物質を作るような遺伝子を入れる)によって、病害虫に強い品種ができたという利点の対極に、アレルギーを起こしやすいという欠点が新たに出てきてしまったということでしょうか。
ゴムの樹脂は、幹に傷を斜めに付け、その樹液を採取します。小中学校の社会で、プランテーションという農業形態を学んだ時に、教科書に写真が出ていた記憶があります。子供心に何だか痛々しい感じを受けました。このストレスや長年にわたる栽培に適した品種改良が、ゴムの木に強い防御物質を作らせたと考える研究者がいます。そういえば、かぶれの代表格であるウルシもゴムと同じ方法で樹液を採取します。これらの木は長い間、痛みに苦しんできたのでしょうか?でも、メイプルシロップも樹液ですが、アレルギーを起こしやすいという話はあまり聞きません。木の精神的(?)苦痛と生体防御物質の関係の真偽についてはもう少し研究が必要かもしれません(既に論文はあるのかもしれませんが)。
無農薬とそうでないリンゴでは、無農薬のリンゴのほうが生体防御蛋白質を多く含んでいた、という発表があり話題になったことがありました。農薬が無い状況下では、自分で自分を病害虫から守らなければならないのだから、ある意味妥当な結果でしょう。以前、市民農園を借りて無農薬、無肥料(実情は、手入れをさぼっただけですが)で野菜を作ったことがありました。病害虫被害を一手に引き受けたような畑になりました。あの時の菜っ葉達のストレスは大きかっただろうな、と少し反省。
念のため:品種改良や遺伝子組み換えを否定するつもりはありません。生体防御物質は通常の植物でも産生されている物質ですから、その利用の仕方が重要なのでしょう。ただ、無理が過ぎると、どこかにとばっちりが出るということはありえるかもしれません。

赤ちゃんのお尻がかぶれた!!

よくある皮膚の病気(8) オムツかぶれ
赤ちゃんのオムツかぶれは以前より減ってきたような気がします。布オムツから使い捨て型の紙オムツへほぼ完全に移行したせいでしょうか。
赤ちゃんのお尻に赤いただれができた時に考える病気は2つ・・・他にもたくさんありますが、よくみられる皮膚病として述べています。
1.オムツ皮膚炎
2.カンジダ症

見分け方
カンジダは皮膚炎を取り囲むように赤い点々(丘疹)が多数あり、一部は膿を持っている(黄色くなっている)。薄い半透明の膜が付いている(または、こすると剥げる)・・・・です。研修医の頃、「オムツかぶれでは、しわの間に皮疹はできない。カンジダはしわの間にもできる・・・菌は蒸れたところが好きだから」と教えられましたが、これはn布おむつ時代のお話で、紫外線によって劣化して硬くなった布によって皮膚に擦れが起きていたようです。現在の紙オムツではむしろ、端のギャザーやテープの下に症状が出るようです(佐々木りか子、おむつ皮膚炎の対策、やさしい小児皮膚科学、皮膚科診療プラクティス、文光堂より)。布オムツがまだ紙おむつに勝る、などと言っている方はいませんよね。少なくても皮膚に対しては紙おむつがやさしさで勝っています。ただ、紙オムツにもごみとしての問題は残りますが。
治療
カンジダはよく乾燥させるだけで治ることもありますが、できれば皮膚科で検査して、塗り薬をもらいましょう。数日できれいになります。
オムツ皮膚炎について
オムツ皮膚炎は便や尿によって皮膚がふやけたり、ただれたりすることによって起きるとされていますが、最近の赤ちゃんのお尻を見ていると、別の原因もありそうです。
それは、 拭く(ぬぐう)という行為と、濡れティッシュ、の使用と、最後に替え過ぎ、です。
例えば、濡れティッシュやガーゼハンカチ(ガーゼは意外と目が粗く、弱い皮膚を拭くのに良い素材ではありません)を、大人である自身の口の周りや、排便の後の肛門の周りを、数回拭き取るという行為を1日数回行ったらどうなるか? と考えてみてください。赤くひりひりしてくることは容易に想像できます。
皮膚の表面は薄い角層(いわゆる垢)で覆われていますが、少しこするだけでこれは取れてしまいます。これが取れると皮膚のバリアは破壊され、水分の蒸発が進んで乾燥したり、炎症が起きやすい状態になります。
だから、排便後の赤ちゃんのお尻は水かお湯でパシャパシャ洗ってから、やわらかいタオルで抑えるように水気を取るだけでよいでしょう。絶対横方向にこすらないことです。濡れティッシュは旅行中などでやむを得ない場合だけにした方がよいとでしょう。
関連記事:赤ちゃんのお尻がただれて、痛がる(2)

たこ、いぼ、うおのめ、は同じものか?

よくある皮膚の病気(7) たこ、いぼ、うおのめ
足の裏に硬いできものができて、歩くと痛い。
タコ、イボ、ウオノメ、などと呼びますね。
今日のお題は、タコ、イボ、ウオノメは同じものか? です。

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かぶれと人間関係

よくある皮膚の病気(6) アレルギーと人間関係
耳たぶとおへその周りの湿疹で受診して、パッチテスト(アレルギーの検査)の結果を説明したときのこと、
 「検査したらニッケルが陽性に出ましたよ。金属のかぶれですね。ピアス(耳)とジーンズの金属鋲やバンドの金属部分(おへそ)にかぶれてみるみたいですね。」
患者さん 「本当ですか?ピアスなんて、もう十年以上もしていて大丈夫だったんですよ。」 


アレルギーはある物質に対して相性が悪くなった状態です。相性は初めてちょっと出会っただけではわかりません。最低2回目以後、場合によっては長い期間お付き合いした後に、体が「私、ニッケル嫌い!!」と意思表示した(感作といいます)後にアレルギーは起きます。
人間関係と同じですね。


蜂は2度目に刺されたときが危ない?
なんてよく言われますが、これも、1回目でいやだと思い、2回目で反応するとショックになるかもしれないという可能性について述べたものでしょう。ただ、蜂に刺されても感作されない人がほとんどですから、全員が心配する必要はありません。

飛雄馬の恋人、日高美奈さんはメラノーマではないかも?

よくある病気じゃないけど、どうしても書きたかった稀な皮膚病
爪のメラノーマ
巨人の星、星飛雄馬の初恋の人、日高美奈さんはメラノーマで亡くなりました。当時リアルタイムにこの番組を見ていた私は、世の中には恐ろしい病気があるもんだと感じたものです。この病気を専門にするとは夢にも思っていませんでした。
さて、講義で使おうかと、やっと探しあてた画像で美奈さんの病気の状態を確認したところ、美奈さんの爪の真中にぽつんと黒い点が描かれていました。
もし、このような症状で受診された患者さんがいたら、普通はメラノーマは疑わないな、と思いました。

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ほくろ

こんな所にほくろが! よくある皮膚の病気(5)
手足のほくろは危ないか?
悪性黒色腫(メラノーマ)という皮膚がんがあります。メラノサイトというメラニンを作る細胞が悪性化した腫瘍です。
さて、この腫瘍は日本人には稀であり、人口10万人当たり年間で1人程度の発生です。日本人においてよくできる場所は手足とその爪で、半数がこの部位にできます。・・・・ということは、残りの半数は体の他の部位にできるということです。
答え:メラノーマは手足に多いのは確かだが、手足のほくろだけを注意する特別な意味は無い。
どんなほくろが危険か?
ほくろは黒子あるいは色素性母斑という良性疾患の総称で、メラノーマとはまったく違うものです。両方とも黒くて小さいうちは見分けがつかないため、上のような質問になるのでしょう。子供のうちは(小さいうちは)、将来悪人になるか、聖人になるか、わからない、と患者さんには説明しています(私はいつも変なたとえをするくせがあります)。
答え:10歳以後に気づいた直径7mm以上の黒いしみ をみつけたら専門医を受診しましょう。あわてないで欲しいのは、このようなしみでもメラノーマである可能性は低いということです(10万人に1人ですから)。鉛筆の断面をしみに当てて、はみ出せば大体7mm以上ということになります
簡単ですから家でやってみてください。
治療は?:ただのしみ状で、盛り上がりがない(厚みがない)場合には5-10mm離して切除してお終いです。この状態なら、まずこの病気で死ぬことはありません。
おまけ:メラノーマといえば巨人の星、星飛雄馬の恋人日高美奈さんですね。これに「うんうん」とうなづいた人は年がわかります。と、息子に言ったら知ってました。アニマックスというチャンネルでやっていたようです。
日高美奈は、メラノーマではない ・・・・・・私の意見・・・・つづきはまた

シャムネコとアルビノとしもやけと局所麻酔

シャムネコの耳、脚先、鼻はなぜ黒い?

 紫外線から皮膚を守るために皮膚にはメラノサイトという細胞がいて、メラニンを作っています。このメラニンの合成過程でチロジナーゼという酵素が必要になります。 チロジナーゼの遺伝子に異常があると、この酵素がうまく働かなくなり、色が作れません。これがアルビノ(白皮症)です。シロウサギなどがそうです。

チロジナーゼの変異のなかに、温度感受性の変異体があります。温度が高くなると働かなくなってしまうのです。この異常がある動物がシャムネコです。シャムネコの耳、顔、脚先が黒いのは、これらの部分は体温が低いので、酵素が働いて色が作れるが、他の部位は暖かいのであまり色が作れないためだと言われています。

耳、鼻、手足は人間でも温度が低い部位です。しもやけや凍傷になりやすい部位です。鼻先や指の小手術前に局所麻酔をする時は、エピネフリン(血管を収縮させて麻酔の効き時間を延ばすことができる)の入っていない麻酔剤を使用するよう研修医なりたての時に教えられました。

ところで、シャムネコに靴下をはかせたり、帽子をかぶせていると、色が変わるのだろうか?変なことを考えてしまった。

遠赤外線で中までじっくり火が通る?

遠赤外線は深くまで入れない
私には目からうろこですが、知っているヒトにとっては当たり前(これも当たり前か)の内容です。
プリズムで遊んだこと、ありますよね。三角形のガラスのカタマリみたいなもの。光が虹のようにから黄色を経てまで、グラデーションのように分かれてきれいです。この紫の外側(何もみえません)と赤の外側(もちろん何もみえません)にも光はあるんですね。側には紫外線があるのです(字のままですね)。紫外線は日焼け、しみ・しわ、皮膚がん、皮膚の免疫低下などを引き起こします。さて、プリズムで分解した虹のもう一つのはじ、の外側には、そう、赤外線があるんです(ここまで長かった)。以下、(社)遠赤外線協会HPを参考にし、一部転載しました。

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家族みんなが同じものを食べたのに、なぜ私だけ!!

よくある皮膚科の病気(4)
アレルギーと毒
患者さん「昨日の夜カニを食べてしばらくしたら、急に全身にかゆいミミズ腫れがたくさんできて、かゆくて眠れませんでした。 さっきまで出ていたんだけど、先生が早く診てくれないから消えちゃったじゃないの」・・・受付時刻をみると1時間以上待った患者さん・・・・
「待たせてごめんね。でも診断はジンマシンだね。原因はやっぱりカニかな。」
患者さん「家族全員同じものを食べたのに、私だけなぜ?」
アレルギーというのは、ある物質に対して個人的に相性が悪くなった状態といえます(これは私個人の定義です。あまりに大雑把すぎて、免疫学者に怒られることを承知で簡略化しました)。ある物を口に入れて全員が同じ症状を起こせば、それは毒です(食中毒も含めて)。
ヒトが生きるために口に入れるものは、自分と違う生物です。本来ならすべてを拒絶してもいいものを、生きるためになるべく小さい構造にまで消化分解し、無理して取り込んでいるのだと思います。因みに、エビ、カニなどの甲殻類は成人の食事性アレルギーの原因の第1位です。
じんましん
医学用語では個々の皮疹を膨疹といい、基本的には短い時間で出たり引っ込んだり、形を変える皮疹です。蚊に刺されたときに膨らんだ状態が膨疹です。1-2時間で出たり引っ込んだりする病気はほとんどじんましんです。

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