痛みが先行してぶつぶつができてきたらコレダ!

よくある皮膚の病気(3)
帯状疱疹(たいじょうほうしん)
パターン1
4日前から右の胸から背中にかけてチクチク痛みがでてきた。少しかゆみもある。奥のほうも痛くなってきたので湿布を張ったら昨日の朝からぶつぶつ赤いできものが出てきた。湿布にかぶれたかな?
パターン2
3日前から右の側頭部が痛かった。昨日よりぶつぶつと赤いできものができてきた。虫に刺されたかな?
痛みが3日ほど先行し、その部位に赤い皮疹ができてくる病気のほとんどは帯状疱疹です。皮膚は未治療でも治りますが、問題なのは後に残る神経痛です。これは厄介です。
神経痛を予防するのはただ1つ。とにかく1時間でも早く抗ウイルス剤(商品名:バルトレックス)を飲み始めることです。皮膚症状がでてから3日以内がベストです。
この病気になる率は一生の間に10数%あります。7人に1人はなる確率です(今では少ないですが大家族なら誰か1人はなる確率です)。よく覚えておいて、可能性があればすぐ病院へ行きましょう。週末でも救急で薬をもらいましょう。様子をみているうちに治療効果が期待できるゴールデンタイムを逃してしまいます。内服は1週間以内で終了です。後から飲んでも効きません。副作用は少なくて、腎障害のある場合のみ減量が必要です。
なお、痛みが出てから1週間以上経っても皮膚症状が出ない場合はこの病気の可能性は少なくなります。
以下は、以前書いた原稿から・・・・
「帯状疱疹て何でしょう?」 
ある日突然、体の片側に帯状の痛みが出現し、しばらくして赤いブツブツや水ぶくれが次々に出てくる病気があります。これが帯状疱疹で、一生のうちに6-7人に1人はかかるありふれた病気です。著名人がこの病気にかかったことが時々報道されますので、ご存知の方も多いかと思います。
この病気はみずぼうそう(水痘)と同じウイルスによって起きます。初めてこのウイルスに感染した場合は水痘になります。水痘のほとんどは自然に治りますが、治った後もウイルスは脊髄から出た神経の根元に一生潜伏を続けます(ちょっと気持ちが悪いですが、このウイルス以外にも口唇や陰部ヘルペス、突発性発疹、伝染性単核球症などの原因ウイルスは同じように潜伏感染をおこします)。もちろん体はウイルスが再び増殖しないように一生押さえ込みを続けます。ところが、何かの拍子にこの押さえがゆるむと、神経の根にいたウイルスはふたたび増殖を始め、神経を道路代わりにして体の後面から前方へ移動し、途中の皮膚に発疹を作ります。通常は1本の感覚神経の支配する帯状の範囲に水疱ができるため、帯状疱疹と呼ばれています。
最も患者さんを悩ませる症状は神経痛です。皮疹は通常3-4週間で治りますが、神経痛のみが何ヶ月、何年と続く方がいます。神経痛の予防には皮疹が出てからなるべく早く(3日以内)、このウイルス専用の薬による治療を始めることが大切です。体の片側に急に帯状に痛み(あるいは痛痒さ)が出て(体の深いところが痛むこともよくあります)、数日内に虫刺され様の赤い発疹がポツポツ出てきたらすぐに病院に行って下さい(最初は痛みしかないため、貼っていた湿布のかぶれとまちがうことがあります)。ほとんどの方は飲み薬で治療ができます。
帯状疱疹は体中どこにでもできますが、顔に出た場合は、めまい、難聴、顔面神経麻痺などの運動神経麻痺、眼の症状などを伴うことがあります。また、皮膚症状が治った後も大きな傷跡を残すことがありますので、特に顔に発症した場合は注意が必要です。
帯状疱疹にかかった患者さんのほとんどは、特に持病のない健康な方ですが、内蔵に病気が隠れている場合が時々あります。通常の帯状疱疹は顔や体の片側のせいぜい10cm幅の範囲に留まります。発疹が広い範囲に出る、水痘のように全身に出る、水疱が大型である(1cm以上)、10日経っても新しい発疹が出る、などの場合は体がかなり弱っている可能性があります。また、帯状疱疹は1度かかれば、ほとんど再発しません。1-2年の間に繰り返す場合は免疫を低下させる病気が隠れている可能性があり、精密検査が必要です。

脂肪のかたまり?

よくある皮膚の病気(2)
皮膚直下に親指大までのぐりぐりした真ん丸い(球形)のしこりができることがあります。「脂肪のかたまり」あるいは脂肪腫なのどと言われます。しかし、これはよくある皮膚の病気(1)で取り上げた粉瘤(ふんりゅう:皮膚の袋)のことで、よくみると表面の皮膚に小さな穴が開いています。角化物が酸化すると黒くなり、黒い栓がささっているようにみえることがあります。しぼると中から臭く白いお粥状や麹状のものが出ます(確かに脂肪に似ているかも)。でも、これは垢(角化物)です。本当の脂肪腫は粉瘤より稀で、球形というよりはそろばんの玉状でくりくり良く動きます。もちろん絞っても何も出ません。

”おでき”ができた!!

よくある皮膚科の病気(1)
おできには2種類ある
痛くなる前にしこりがありませんでしたか?
突然、何かチリチリする痛みが出て、触ってみるとしこりがあって、丸く赤く腫れている。いわゆるおできですね。こんな時、考える病名は2つです。考えられる疾患(鑑別(かんべつ)疾患(しっかん)といいます)はもっとたくさんありますが、全部書くと教科書になってしまうので省略します。ただ、2つの疾患で90%以上はカバーされると思います。

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水虫 みずむし ミズムシ

皮膚科にかかる前に(2)


水虫の薬を塗らないで


皮膚科を受診する予定なら、水虫の薬を塗らないで!!
なぜか?:水虫の薬を塗ると、顕微鏡で見ても菌を見つけにくくなります。つまり、水虫だが薬によって菌が隠れてしまったのか、水虫ではないのか、水虫の薬のかぶれなのか、わからないのです。せっかく混んでる皮膚科を受診していただいても無駄になってしまうのです。(足の皮ムケ=水虫、ではありません。水虫が治らないとおっしゃる患者さんの中には、もともと水虫ではない方がいます・・・・水虫の薬を塗っても治りませんよね)
ただ、赤みとかゆみがひどく、水や膿が出ている場合は薬を塗ってしまっていても良いから、すぐに受診してください。水虫にブドウ球菌や溶連菌といったばい菌がついている可能性があります。特に糖尿病の方は足の切断や命に関わる状況になることがあります。
水虫は白癬(糸状菌)というカビの感染症です。感染症ですから体のどこについても症状を起こす可能性があります。手足や陰部が多いことは確かですが、頭にも、顔にも、体にもできます。足の皮ムケ=水虫ではありませんし、顔の皮膚炎=湿疹ではありません。

皮膚科にかかる前に

皮膚科にかかる前に(1)


家を出る前にちょっとチェック


診察をする皮膚科医師にとって、これがあるとすごく助かるのが以下のものです。皮膚科を受診する前にチェックしてみてください。
1.今まで塗っていた外用剤
薬屋で購入した薬、医院・病院で処方された薬、化粧品、リップクリーム、海外旅行で買ってきた薬、誰かにもらった薬、自分で作った薬(アロエ、ヘチマ・・)、など
なぜ?:診察前の治療は、本来の症状を軽くしている(多少効いた場合)か、悪くしている(あるいは現在の治療自体が原因になっている・・・薬のかぶれ、など)可能性があるので、診察時の症状に予想される分を足したり、引いたりしながら診断する必要があるのです。「こんな薬持って行ったら笑われるかも」、なんて心配しないで薬を持ってきてください。
2.今飲んでいる薬(漢方、ビタミン剤含む)、健康食品の内容
なぜ?:皮膚科には非常にたくさんの病名がありますが、皮膚の腫瘍を除くと、ほとんどが薬で起きえます。たとえば、薬剤性の湿疹(しっしん)、薬剤性の乾癬(かんせん)、薬剤性の扁平苔癬(へんぺいたいせん)・・・・。薬剤で悪性リンパ腫や白血病様の症状を起こすこともあるぐらいです。ですから、皮膚科医は、まず、薬剤性か、そうでないか、を区別する作業を行います。なぜか?原因が外から入っているものであれば、ほとんどは止めるだけで治るからです(中止しても長引くもの、場合によっては治らない場合もありますが)。普通は原因となる薬は1種類です。ただし、突然止めてはいけない薬がありますので、勝手に止めないで、すぐに薬を処方された医院、病院に連絡してください。

はじめに

はじめに
 皮膚に関連する事柄を中心に、しかし、このカテゴリーに縛られることなく、その時々で思いついたことを書き留めていきたいと思います。内容についてはなるべく誤解を生じないように注意したいと思いますが、心配な点があれば必ず近くの専門医を受診してください。当サイトの内容を読まれて、何か問題が生じても当方は責任を負いません。本ブログ内容の無断転載を禁じます。

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