蚊に刺された!!なぜ俺だけこんなに腫れるんだ!!

子供の手足にすごく痒い腫れものができた。虫刺されかな?外にも出ていないのに。 これから虫に刺される季節が来ます。蚊などに刺されると痒く盛り上がった赤い発疹ができます。特に子供では、大型で水ぶくれになったり、じくじくした状態になるなど、大人に比べて激しい症状を呈します。また、症状に気づいた日は1日家にいて、外には出なかったと言う患者さんも時々います。また、初めて訪れた場所で虫に刺され、それまでにない激しい症状が起きて皮膚科を受診し、「この土地の虫は毒が強い」と不満をもらした患者さんもいました。 ・・・虫の種類と個人の問題だろうと思っていました・・・ しかし・・・

この虫刺されとその後にできる痒い皮疹の出現時期に関して、なかなか面白い報告があります。(大滝倫子先生、昆虫・ダニ刺咬とアレルギー反応、皮膚疾患を起こす虫と海生動物の図鑑、皮膚病診療増刊号、協和企画、2000)より

まず、蚊に刺されて赤く腫れるのは蚊の唾液に対するアレルギーであると言われています(蚊の唾液自体が反応を起こすのではないようです)。 したがって、初めて刺されたときは、原則として反応は起きません。(アレルギーは、人間関係と同じ・・・相性の良さ悪さは初めて会った時点ではわからない・・・少しお付き合いしてから相性が悪いと判断する・・・嫌だと反応する・・・これがアレルギー)

 Mellaby(英国の学者)の実験:外国に出たことのない英国人を選び、英国にいない蚊に刺させてみた。

1. 1回目・・・小さい出血のみで反応なし。

2. 何回か刺された後・・・刺された直後はなんともなく、数時間してから反応が出始め、1-2日で最高に達し、1週間で治る。

3. さらに刺されていると・・・刺された直後から痒い皮疹が出るが1-2時間で消失。しかし、数時間後から再発し、1-2日で最高に達し、1週間で治る。

 4. さらに刺されていると・・・刺された直後から痒い皮疹が出るが1-2時間で消失し、その後は反応なし。

5. さらに、さらに刺されていると・・・反応が全く出なくなる。

つまり、刺される回数によって、始めは遅い反応のみ、次に早い反応と遅い反応の両方、その後は早い反応のみ、さらに何度も刺されると反応なし(虫に刺されてもなんともない)という経過をとることがわかりました。

大滝倫子先生が1-63歳の日本人で調べたところ、乳幼児では遅い反応のみ、青年期にかけては早い反応と遅い反応、壮年期にかけては早い反応のみ、その上の年代では反応なし、が多かったと述べておられます。さらに、刺された回数の少ない乳幼児ではかなり激しい反応を示すこともわかりました。また、旅行先などで今まで刺されたことのない蚊に刺された場合も、乳幼児と同じように激しい反応を起こすことが知られています。

 これで、子供の虫刺されは症状が激しく、また時に刺された記憶がないこと(刺された直後は反応がないので)の理由がわかりました。夏休みにおじいちゃんの家で3世代が同じ蚊に刺されても、反応は世代ごとに違うということが普通に起きうるということです。 このお話は蚊に留まらず、ヒトがある物質に対してアレルギーを獲得していくときにどのような免疫学的経過をたどるのか、という問題を解決するモデルの1つになりうる、非常に奥の深い現象です。目の前にある現象をジーと良く見ることが大切なんですね。妙に納得。

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