皮膚にやさしい創傷被覆剤(そうしょうひふくざい)

皮膚に傷ができたとき、傷を保護するために絆創膏などをはります。いろいろな材質のものがありますが、傷を覆う材料ですので、ひっくるめて創傷被覆剤(そうしょうひふくざい)、現場ではドレッシング剤などと呼びます。
このような材料は、きちんと傷にくっついてくれないと、すぐ取れてしまいます。しかし、接着する力が強すぎると、取るときに、せっかくでき始めた皮膚やまわりの正常な皮膚もはがれてしまいます。
皮膚科には皮膚が弱い方がよくきます(かぶれやすいとか、アレルギーがでやすいという意味ではありません)。例えばお年寄りの手の甲や免疫の病気で副腎皮質ホルモン剤を長く飲んでいる方の皮膚(皮膚が薄いため、ちょっとぶつけただけで皮がべろっとむけてしまうことがあります)、先天的に皮膚が弱くてすぐ水疱ができてしまう方(先天性表皮水疱症:せんてんせいひょうひすいほうしょう)、などです。
傷にはるものといえば、カット絆あるいは絆創膏。良く家庭用に使うタイプのものは、はると絆創膏の下がふやけます。皮膚はふやけるととても弱くなります。絆創膏をはったり取ったりを繰り返すと正常な皮膚までただれたり、割れたりしていきます。
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そのため、私は傷からの浸出が少ない(水があまり出ない)場合は、透湿性(蒸気が抜けて皮膚がふやけない)のある防水フィルムをはってもらうようにしています。薬局にもあります。素材はポリウレタンフィルムです。5枚入って300から500円ぐらいでしょうか。安いのはニチバンのロールタイプです。2mで600円ぐらいだったと思います。
このテープはとてもいいのですが、くっつく力が強くて皮膚が薄いあるいは弱い方には使いにくいところがありました。
良い素材のものがでてきました。
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普通のテープは何かしら接着剤(のり)を使用していますが、ソフトシリコン粘着剤というものを使った製品が出てきました(2008年から日本に入ってきました)。
皮膚には凹凸があります。普通の接着剤を使用したテープは出っ張ったところだけにくっつきます。点でくっついていますからある程度粘着性(くっつく力)が強くないとはがれてしまいます。ソフトシリコン粘着剤は皮膚に出っ張ったところもへこんだところにもスキマなく密着するのです。全体でくっついているので、はがすときに皮膚を引っ張る力は非常に弱くなります。この粘着剤テープを売っている会社はセイフタック・テクノロジー(safetac technology)と呼んでいます。
この製品はがしてもまた貼りなおせるという特徴があります。翌日すべてはがして傷をみて、問題なければまた同じものを貼れます。
よく理解していないので間違っているかもしれませんが、完全に面と面が密着することで間が真空になりはがれないのではないかと思います。ですから端からは簡単にはがれるのかもしれません。
さて製品名です。
市販で手に入るのはメピフォームです。自分で買うと高いです。安いところで買っても1平方cmあたり50-60円ぐらいします。ただ、貼ったりはいだり、何度も使えます。
病院では4種類の製品が使えます。病院で使用する場合はそんなに高くありません。値段は保険で決まっていて、1cmあたり14円です(通常の保険でこの3割負担)。受診した日に傷の処置に使った場合は保険が通ります。非常に使い心地のよい製品です。この4月から、生まれつき皮膚が弱くて水疱ができてしまう先天性表皮水疱症(せんてんせいひょうひすいほうしょう)という患者さんに限って、自宅での使用を目的に傷用の被覆剤(ドレッシング剤)を保険診療で渡せるようになりました。普通は被覆剤(ドレッシング剤)は病院で処置に使用したときにしか保険が通りません(特定医療材料として認可を受けているものだけですが。使用期間も限られています)。いろいろな種類の傷用シール(フィルム)がありますが、中でもソフトシリコン製剤は、表皮水疱症の患者さんに非常に評判がよいです。先生に聞いてみてください。
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以下、病院で使用している非固着性ソフトシリコン製品
メピレックス ボーダー(中央部に液を吸うパットがあり、周りに粘着シリコンテープがついています。表面に防水シールがはってあり、滲出液(しんしゅつえき:傷から染み出してくる体液)がしみ出してこないタイプ。液のしみ出しが少ない傷に使います。
メピレックス トランスファー(スポンジ様で表面に滲出液が染み出してくるタイプ。トランスファーですから体から出てくる液を外のガーゼに渡すといういみでしょうか。)・・・上からオムツやガーゼなどを当てて、出てきた浸出液を吸い込ませ、上のガーゼだけ換える。傷部分にくっついているメピレックストランスファーは交換しないのでので痛くない。汚れたシリコンシールをはがすときも痛みはすごく少ない)。現在患者さんに使っていますが、2-3日は上のガーゼを交換するだけで、メピレックストランスファー自体は交換しなくても大丈夫のようです。日々のガーゼ交換時に痛みがないので非常に喜ばれています。
メピタック・・・粘着シリコンのテープ。浸出液がほとんどでない傷や傷予防などに使います。メピフォームの病院向けの商品名です。
(以上、販売:メンリッケヘルスケア)
ハイドロサイトAD ジェントル(販売:Smith&Nephew)・・・ハイドロサイトADは以前から被覆剤として病院で使われていました。皮膚にくっつくテープ部分のみ粘着シリコンに変わった製品です。ジェントルという名前が追加されました。
メピレックスボーダーは自宅で使用する分を保険(先天性表皮水疱症の方は難病指定を受けていれば自己負担分は非常に少ないのでほぼ無料で)でわたせます。
メピレックストランスファーは、指導料として1ヶ月5000円(これも保険診療です。前述のように水疱症の方はほとんど無料になります)を病院がいただき、この料金の中でお渡しすることになります。
昔はただれた傷にガーゼをはっていました。はがすとき痛いです。血もにじみます。ワセリンを塗ったり、ワセリンがしみこんだ製品(ソフラチュール)も良く使いましたが、これも乾くとくっついてはがすとき痛いです。ソフトシリコン製品は画期的な製品だと思います。

“皮膚にやさしい創傷被覆剤(そうしょうひふくざい)” への 4 件のフィードバック

  1. ここのコメント欄で相談させていただいていいのかわからないのですが、2年ほど前から上唇の上のほうに痛み痒みのない小さな白いできものができ、少しずつ増えてきています。調べてみるとパピローマウイルスによるものみたいなのですが、治療法がないとか・・。近いうちに皮膚科に行ってみようと思いますが、ぜひご意見をお聞かせください。宜しくお願いします。

  2. SECRET: 0
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    最近「セスアイエイド」という製品が出てきたということですが、この製品の使い勝手や効果はいかがですか?
    安価でサイズの自由があると聞いています。ぜひお知らせください。

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    未滅菌のフィルム製品を傷に使うことは問題ないのでしょうか?
    市販のロールフィルムを傷口に使うことを推奨するのはどうかと感じます。

  4. SECRET: 0
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    重要なご指摘をありがとうございます。私の患者さんにも薬局で未滅菌のポリウレタンフィルムを買いに行ったところ、購入を薬剤師さんに止められたことが何回かあって、私自身がその薬局に説明に行ったこともあります。
    この問題については古くから論議されてきました。たとえば夏井睦先生のHPなどをご覧になると状況がご理解いただけるかもしれません。(こちらです:http://www.wound-treatment.jp/next/wound183.htm)夏井先生の考え方についてはまだ医学会がすべて受けいれているわけではありませんし、私自身もすべて同意しているわけではありません。しかし彼の理論は現場で実際に傷をみている医師、看護師(どのくらいの割合かは知りませんが)に支持されています。個人的な考えですが、傷を被覆剤(ガーゼやテープ)で被ってみているうちに感染を起こすのは、使用した被覆剤が滅菌か未滅菌かという問題ではなく、傷のまわり浸出液がたまり、そこに菌があとから付いて増えてくる、という経過がほとんどだと思います。ポリウレタンフィルムからはある程度蒸気が抜けますが、抜け切れないほど水が出ると下にたまり、よく皆さんが言う「かぶれた」(本当はふやけてただれた)や感染を起こしやすくなります。フィルムを貼っても下の皮膚がふやけないような傷がフィルムのよい適応だと思います(手荒れで皮膚が割れているような部分など)。ポリウレタンフィルムの適応については一般の方にはわかりにくいかもしれません。最初だけでも医師に相談されることをお勧めします。ポリウレタンフィルムは万能ではありませんが、皮膚が白くふやけるキズ絆創膏などよりはよほどよい素材だと思っています。
    医学を含め科学は「たぶん、こういうことをするとだめだろう。あるいはいいだろう」というあまり根拠がないが昔から言い伝えられてきた事柄を研究で一つ一つ確認あるいは訂正しながら進歩してきました。今まで正しいと信じてきたことは、それを覆す事実が出てきてもなかなか受け入れにくいと思います(私自身もそうです)。なお、このブログはかなり個人的な意見が多いので、ご本人や主治医の先生のご意見を否定するものではありません。

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