軟膏、クリーム、ローション

完全に年末です。ここまでくるともう開き直りです。
さて、先週末、外来患者さんが途切れたときにふと近くの本棚をみたら薄い冊子が目に留まりました。
メジカルレビュー社というところから出ているClinical Derma 2010 No2という冊子です。
中をみたら東京逓信病院薬剤部の大谷先生の記事がでていました。外用剤の使用上の問題点などについて熱心に調べている先生です。いつも勉強になります。今まで書いたこのブログの記事のなかで訂正が必要な部分もありましたので。今回はそれについて。
関連記事
ステロイド外溶剤の塗り方 
カキ
親戚から送ってもらったカキ。食べた後にお礼の電話をしたら、「えー。生で食べたの?」と言われてしまった。でも大丈夫でした。おいしかった。


まず、一つ目。
チューブからしぼり出した塗り薬でどの程度の皮膚面がぬれるのか?あるいはどの程度塗って欲しいと医師側は思っているか?・・・を説明するのは診療上とても大切なことです。この指標がfinger tip unit (FTP)という単位です。なんてことはありません。絞り口の口径が5mmのチューブから、手の人差し指の先から軟膏をしばりだして、一番指先に近い関節の手の平がわの皮膚のシワまで(大人で2cmぐらいでしょうか)搾り出した量が1FTPで、約0.5gになります。これで手の平2枚分がぬれると言われています。前の記事でも書きました。
しかし、この単位を最初に報告した論文は英国からのものです。外国はチューブがでかいのです。日本で普通処方するステロイド軟こうのチューブは5gか10gです。口径は5mmもありません。大谷先生は5gや10gのチューブからしぼり出した場合、そのFTP量は半分(0.2-0.3g)になってしまうと述べています。日本でも25gぐらいの大きいチューブになるとFTPは0・5gになるようです。
そうか。「先生。そんな量じゃとてもぬれないよ」とおっしゃった患者さんがいたなぁ。反省です。
2つめ。
外用剤にはいろいろなタイプがあります。
クリーム(中身が白い。べとつかず塗りやすい)。軟膏(ワセリンに薬が溶かしてあって透明。ちょっとべたつく)。ローション(乳液)。透明な液(薬がアルコールや水に溶かしてあるもの)。
外用剤のほとんどは毛穴から吸収されます。普通の皮膚面からはどの程度吸収するのかという実験結果です。
大谷先生はヘアレスマウス(毛のないマウス)を使って調べています。
正常の皮膚面から吸収されたのはクリームのみでした。軟膏やローションはまったく吸収しませんでした(うーん。皮膚のバリアってすごいですね)。
次に角層をはがした皮膚(セロテープを貼ったり取ったりを繰り返す・・・といったことをします)では、軟膏もローションもクリームも全部吸収するようになりました。ただ、大きな差があって、一番吸収しにくかった軟膏を1とするとクリームはその3倍、ローションは8倍(なお、この値は記載してなかったので、私がグラフから読み取ったおおよその値です)でした。アカスリや表面が傷んだ皮膚ではこんな感じで吸収が多くなるということですね。垢は大事ですね。皮膚科医が軟膏を好むのがよくわかります。でも逆に早くなおしたければローションがよいということになるかもしれません。勉強になりました。
ときどき外国の方が外来に来るとよくもらす不満が「日本のチューブは小さすぎる」です。海外で処方されたチューブをみせてもらったことがありますが、長さ25cm、直径数cmほどの、歯磨き粉の最大チューブのようなサイズでした。でも、(ソニーなどの)電化製品をどんどん小さくしていく日本の技術は好きだと言った方もいましたが。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です