皮膚科領域に関連する2013年の進歩

UpToDateというサイトがあります。字のごとく、多くの病気の診断や治療法について頻回に最新の情報に改定されている医療者向けの有料サイトです。まず病気について調べるときに見るべきサイトの1つと言ってよいかもしれません。
本来は年末に行うことかもしれませんが、このUpToDateが皮膚科に関係する診断や治療についての2013年の代表的な進歩(新知見)としてまとめていますので、簡単に紹介します。
酒さの新しい薬、血管腫の遺伝子異常、基底細胞癌という皮膚がんの新薬、乾癬の新薬などです。
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2年ぶりにスモークサーモン 低塩荒巻、塩抜きせずに直で8%ソミュール24時間、水洗5分、風乾5時間、冷燻3時間、と超短時間作成。素材がいいと簡単です。赤ワインの色が付きすぎて外観はいまいち。
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お餅いろいろ+スモークサーモン+生ハム


What’s new in Dermatology 2013
1.まずは、酒さによる赤ら顔に対する塗り薬、ブリモニジンbrimonidineです。2013年夏にアメリカ食品医薬品局(FDA)が使用を認めました。薬局で買う薬で、2013年末よりガルデルマという会社が販売するようです(もうしてるか?)。日本では未発売です。ブリモニジンbrimonidineは血管を収縮させる作用を持ちます。血管が収縮するから赤みが取れるということです。酒さでときどき(温度差のあるところを移動したときなど)顔が赤くなる方はこういう一時的に血管を縮める薬を塗っていると血管がばかになり、薬を止めるとずっと赤みが続くようになってしまうような感じもしますが(ここまでの文は完全に個人的な想像であり、根拠はない)、能書では「持続的に赤みがある場合」と但し書きがありました。赤みがいつもあって退かない方のみに適した塗り薬ということです。それと18歳未満もだめです。
2.基底細胞がんの薬、ビスモデギブvismodegibです。基底細胞がんbasal cell carcinoma(BCC)は顔の中央部にできる小型の黒い皮膚がんです。ほとんどすべては切除で治療できます。たまにほっておいたり、再発したりして手術が難しい場合があります(顔には目や鼻や唇があるので大きく取れないことがあるからです)。こんな場合でも放射線治療がよく効きます。しかし放射線でもうまくいかない場合があります。ビスモデギブvismodegibは飲み薬です。治療メニューが増えることはうれしいことです。また、生まれつき基底細胞がんがたくさんできる体質を持った方がいます。基底細胞母斑症候群といいます(頭部や背骨の骨に異常をともなうころがあります)。このような生まれつきの体質でなる母斑症(アザ+骨や内臓の異常)は元の遺伝子に問題があるので、治しようがないと思われてきました(私もそう思っていました)。でも、最近は遺伝子の異常に対応した薬が効く可能性がいくつかの疾患で示されてきています。すごいことだと思います。
3.赤いアザにはたくさんの種類があります(自然に消えてしまうものや生涯にわたって徐々に悪化するものなど)。この中でポートワイン母斑(単純性血管腫と呼ばれていたもの、毛細血管の異常、生まれたときからある平らな赤いアザ、消えない)と、顔のポートワイン母斑に眼や脳の血管の異常をともなう疾患スタージ・ウエーバー症候群Sturge-Weber syndromeが病変部に限局したある体細胞遺伝子の異常によることが報告されました。ちなみに遺伝子の変化は病変部のみですから親から遺伝したものでもなく、子供に遺伝するものでもありません。現場で起きたミスです。遺伝子の名前はGNAQといいます。9割以上のアザの組織に、この遺伝子の異常があったそうです。GNAQは細胞の増殖などに関わる遺伝子です。異常により血管の細胞が増えてしまった可能性があります。この研究は、まず、アザの部分の組織と正常部分の組織からDNAを抽出し、塩基配列の差を調べて、最も疑わしい遺伝子を探すという手法を取っています。全ゲノムシークエンス解析といい、ヒトのゲノムを全部調べる研究です。莫大なお金と労力がかかる方法です(最近はだいぶ安くなっています)。
さて、GNAQの異常により引き起こされる異常な増殖を止めることができればアザを治療することができます。この遺伝子の異常はその下流のMEKという分子を活性化させます。MEKの活性化はさらに下流の分子を活性化させて細胞の増殖などを起こします(車で言えばアクセル踏みっぱなし状態になる)。この経路はなんと眼のメラノーマで起きている異常でもあります(2%程度と稀ですが)。そして、MEKという分子をブロックする薬があり、2013年にメラノーマの新薬として米国で認可されました。このような薬がポートワイン母斑やスタージ・ウエーバー症候群にも効くといいですね。
4.乾癬は丸い赤い皮膚炎の上にカサカサした厚い鱗屑(りんせつ:角化物が厚くなったもの)が島状にたくさんできる皮膚疾患です。これまで(これからも)さまざまな病気について、原因や原因から病期発症までの経路について研究されてきました。乾癬では病気の始まりはまだよくわからない部分もあるのですが、皮膚炎を発症するまでの経路についてはだいぶ解明されてきました。サッカーに例えると、病気の始まりは自陣のゴールキーパーから出されたボールであり、それが選手間のパスによって運ばれ、最終的にシュートによって症状が発現し悪化します。キーパーや選手を抑えるか、ボールを自体を奪ってしまえばシュートは入りませんから、病気は治ります。話がくどくなりましたが、最近の乾癬の新薬の作用はサッカーのパスを抑えてしまう感じに似ています。すでにTNFαという指令(ボール)を止めてしまう薬がすでに現場で使用されています。2013年にはさらに別の選手のパスを止めてしまう新薬が2013年に米国とヨーロッパで認可されました。Ustekinumabという薬です。乾癬にともなう関節症に適用です。この薬が対応する選手(ボール)はインターロイキン12(IL-12)と23(IL-23)です。日本のA代表でいえばIL-12は吉田から出たボール、IL-23は長友のゴール前へのパスあるいはシュートといったところでしょうか?すいません。たとえが間違っているかもしれませんし、こんなに単純じゃないですね。

「皮膚科領域に関連する2013年の進歩」への3件のフィードバック

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    ども!あらためましてあけおめです。庭でBBQいいですね。機会があれば是非!昨年は奥方にも会うことができ良かったです。今度はもっとゆっくりと。
     乾癬などありふれた皮膚病のようでもまだまだ発展途上なんですね。私も皮膚が弱く、このところ、虫刺されで毎年皮膚科にお世話になっています。
    「皮膚診療はじめの一歩」、所々飛ばしましたが、寝る前に少しずつで、一昨日読み終えました。良い本ですね。色々勉強になりました。若い医者の卵は必読ですね。役に立つでしょう。専門家向けの医学書としてはとても異色と思いますが、こういう試みが各分野で広まると良いですね。

  2. SECRET: 0
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    ありがとうございます。本まで買ってもらって感謝してます。お褒めの言葉をかてに今年も何かわくわくすることができたらと思っています。今年もよろしくお願いします。

  3. SECRET: 0
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    こんにちは。酒さで検索したところ、こちらのHPにたどり着いたため、質問させていただきたくメールをいたしました。
    プロアクティブという化粧品でかぶれ、皮膚科に行ったところステロイド剤を処方され、一か月ほど塗っていたところ酒さ様皮膚炎となり、ぶつぶつ等は消えたものの赤みが残り、酒さになってしまいました。
    二年間ほどは抗生物質を飲んだりとで比較的落ち着いていましたが、最近皮膚科でMirvasoという薬をすすめられたのでそれを2日間塗り、それ以来塗った場所である頬や鼻周りが真っ赤になってしまいました。
    現在通っている皮膚科ではその後抗生物質を処方されていますが、いったい何が皮膚に起きたのかが全く分かりません。先生のおっしゃるように血管がばかになってしまったのでしょうか。ご意見をお聞かせ願えるとうれしいです。よろしくおねがいします。

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