紫斑(しはん)という言葉はまぎらわしい

紫の斑と書いて紫斑(しはん)と読みます。紫斑(しはん)は読んで字の通り、紫色の皮疹であり、大切なのは色よりも皮膚に出血しているということです。でも出血したては紫ではありません。とてもビビッドな赤です。

四半世紀の間、学生さんに、「紫斑はただ紫色の皮疹という意味ではないよ。皮膚の出血だよ。ピンクっぽい赤も鮮やかな赤も紫の赤もあるからね。見た目で決めないでね・・・」と言ってきました。たぶん100年以上前から存在してきた定義と微妙に違ったことを教えてきたのかもしれません(語源はラテン語、ギリシャ語で赤に近い紫で医学的には皮膚の出血を指す言葉と定義されています。日本皮膚科学会の説明でも、少なくても紫の成分がある・・・というニュアンスがあります。この辺は色に対する個人の感覚の問題かもしれませんが)。紫斑などという紛らわしい言葉を使うから面倒な説明をしないといけなくなるのではないか・・・もう出血斑でいいのではないか、といつも思うわけです。今回は超個人的な愚痴です。

息子が岐阜から持ち帰った生茶葉を紅茶にしてくれました。熟成後に炒ってます。
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何も入れていないのにミルクと砂糖を入れたような甘みの強い紅茶になりました。緑の茶葉が”ちゃんとした”紅茶になったのがとても不思議だった。
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今シーズンの野菜を植え付けました。定番のトマト、ナス、キューリです。
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医師は日々患者さんを診察し、異常な所見を「医学的に定義された言葉」に変換してカルテに記載します。むくみやお腹を触ったときの感じや血管の腫れなどを医学用語に変換するるわけです。皮膚科では「小さいぶつぶつ」は通常「丘疹(きゅうしん)」、「水ぶくれ」は多くは「水疱(すいほう・・・医学辞書が入っていないと水泡と変換されますが・・・」になります。皮膚科の研修の一歩はこの定義された言葉と実際の患者のさんの皮膚の症状との整合性を身に着けることから始まります。

なぜか? この定義された言葉が使えないと、医師同士の会話(カルテに書かれた情報の共有)が成り立たないから・・・と信じてきました。皮膚症状を医学用語に変換するときに使う言葉たちを原発疹や続発疹と言います。皮膚症状の様相を説明する意味合いもありますが、大切な役割は分類です。一般の方にはただ赤い皮疹(発赤ほっせき)をいくつかに分類し、鑑別(かんべつ:考えられる病名を挙げて、どれが今の症状に一番近いか考えること)に入るための作業ではないかと思ってきました(こんなことを偉そうに拙著にも書いてます)。

個人的な印象では、90%以上の患者さんについては上記のような診断のための思考プロセスをとっていません。多くは一瞬で鑑別診断をいくつか挙げ、検査を加えて診断しています。でも数%ぐらいは情報をそろえて分析しているかもしれませんので、古典的な皮膚科の診断方法は(私に限って言えば)あながち「専門医が若い研修医に、診断までの思考過程を、(かっこつけて)披露するための手段」だけではありません。

でも、わざわざ(難しい言葉に)変換するほどのものではないものもあります。水疱などです。

紫斑(しはん)は皮膚の血管からの出血です。それ以上でもそれ以下でもない。大切なのは赤い皮疹の中には出血している場合があり、それは指で押して赤みが消えるかどうかで見分けることができ、もし消えなければ出血しているこ可能性があり、その場合は軽く触っていみることで血管炎(触るとしこりがある)や血栓症をおこす恐ろしい病気がかくれていないか鑑別できるということです。紫斑という言葉は紫という感じがその存在を誤解されやすい存在にしています。いっそ、「皮膚の出血」という言葉にしたほうが誤解がなくなってよいのではないかと思うのです。でも、今後、紫斑という言葉を使わなければいけない意義が見つかったら、また記事にします。

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