がん免疫療法のはじまり Coley’s toxin

”がん”を自分自身の免疫を使って治せたら・・というアイデアは昔からありました。しかし、なかなかうまくいきませんでした。”がん”だって生命体ですから、何とか生き抜こうとするわけです。免疫というものが少しずつわかってきた1980年代以後、がんを免疫で治すために、まず考えたのは、免疫を強くすることです。免疫に関わっている役者たちを増やして体に入れる、役者たちに活を入れるためのおかずを入れる、がん細胞が見つけやすいようにがん細胞の目印を入れるなどです。結論を言えば、一部の実験的な治療を除いて、免疫のアクセルを踏んでもうまくいきませんでした。

アクセルがあるものにはブレーキが必ず備わっています。アクセルを踏んでもダメなら、ブレーキを止めようというアイデアで創薬されたのが抗CTLA-4抗体イピリムマブや抗PD-1抗体のニボルマブです。メラノーマに効くことがわかり、その後肺がんにも使われています。やっと効くようになったがん免疫療法の歴史を振り返ります。

オリンピックが始まりましたね。サッカー初戦は残念でした。先週末は神戸で日本臨床腫瘍学会、帰宅して即、恒例のお山の診療所に行きました。天気も良く、患者さんもいなくてよかったです。

 

関連文献 Bickels J, IMAJ 2002

参考にしたサイト

一般の病院で治療できる免疫療法がやっと世の中に出てきました。がん免疫療法の創始者として名前が挙がるのが1890年代にある治療を始めたNYの外科医のColey先生です。彼が治療に用いたのは溶連菌とセラチアという細菌の混合液です。これをColey’s toxin(コーリーの毒、とでもいうのでしょうか)と呼びます。彼はその後自分のキャリアを終えるまで1000人の患者にこの治療を行いました。ただ、アメリカの医学会は彼の治療を信用できないとコメントしました。1900年ごろは放射線が発見され、安定した治療効果が得られることがわかりました。また抗がん剤(殺細胞性抗がん剤)の治療も始まり、Coley’s toxinは標準的なな治療としては認められなくなっていきました。

ちょっと長くなりましたので、Coley先生がばい菌をがんの治療に使おうと思った経緯を次の記事にします。 次の記事 18歳の少女の死とがん免疫療法の始まり

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