症例報告(しょうれいほうこく)

1年中ほぼ週末、どこかで学会が開かれています。地域の医師の勉強のための学会、かなり特殊なテーマに限定した学会(たとえば皮膚科なら皮膚がんだけ・・・とか)などです。今週末は大阪で定年退官される教授の記念学会に出席してきました。もとは地方会(いくつかの県や場所によっては1県の範囲で行われる限られた地域の医師による研究会)ですが、長い間皮膚診療に貢献されてきた教授の退官記念ですから日本中から関連のある先生たちが集まります。私は教授退官の記念学会が好きです。普段は大きなテーマで30分以上の時間をかけて講演することの多い教授たちが、数分間しかない時間枠で(普段は自分の部下、とくに若い先生たちが発表することの多い)教育的な症例や研究をコンパクトに話すのを聞くことができるからです。今回も5分の枠で発表される教授たちが何人かおられました。すばらしかったです。私も5分間の枠で、ある症例を発表してきました。ちょっと緊張しました。

都道府県単位で年に何回か行われている発表会(私たちは地方会などと呼んでいます)には、医師になって大学などの研究機関や地域の期間病院に勤めはじめた若い先生たちはほぼ強制的に発表させられます。最初はめずらしい、あるいは教育的(会議に参加した先生たちにとって週明からの診療に役立つようなこと)な症例(患者さんに病歴や診断にいたったポイント、うまくいった治療内容や、逆にあまり効かなかった治療・・・あまりうまくいかなかった情報も役に立つことが多いのです)を発表します。発表の前にはその病気や似ている病気について調べますから勉強になります。さらに論文にすると記憶に強く残るため診断能力が上がります。これをくりかえすことで腕が上がっていくわけです。

学会では、どんな質問が飛んでくるのかわからないのでドキドキします。「なぜあの病気をかんがえなかったのか?」「なぜこの検査をしなかったのか?」「治療は000のほうがよかったのではないか」など、など、厳しい意見もでます。檀上にいる発表者はつらいですが、会場にいる参加者には勉強になります(あっ、俺も知らなかった。気を付けよう・・・と思うこともあるからです)。

学会の前には若い先生たちの発表の事前チェックをします。いくつかの問題点を指摘し、なるべくよい発表スライドに改訂していきます。

さて、今回ちょっと久ぶりに症例報告をしてみてよかったと思ったことは、若い先生たちの不安や緊張感を感じられた(正確には思い出した)ことです。

20年以上前、ある教授の退官記念学会である症例を発表したことがあります。当時のボスの都合がつかず代理で出席したのです。プログラムを見たら私の前も後もみんな教授です。その教授たちの発表に対し、会場にいた名誉教授(定年で辞めた教授たちです)たちが厳しい質問を投げかけます。ときには「あなたの診断は間違っている」なんていうのもありました。やばいところに来ちゃったなぁと思いました。でもある意味ちょっと本音の議論ができる場の1つのような感じもしました。そんなところも教授退官記念学会の好きなところです。「後ろで隠れてないで前に出てこい!」なんて誰も言いませんが、たまに前に出てコテンパンにされるかもしれない恐怖感を味わうのも悪くないなと思いました(コテンパンにしてくれと言ってるのではありません。To 同業者 為念)。

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