メルケル細胞 Merkel cell

メルケルという言葉で一般の方が思い浮かべるとしたらドイツの首相でしょうか。でも皮膚科医や病理医は(きっと)皮膚に潜んでいる細胞、メルケル細胞が真っ先に浮かびます。1875年にメルケルさんが光学顕微鏡で発見しました(普通の顕微鏡です。電子顕微鏡と区別するためにこんな呼び方をします。)。現在、私たち使っている光学顕微鏡の最大の拡大倍率は1000倍です。約150年前の顕微鏡はもっと倍率が低かったと思いますが、メルケル先生は皮膚の神経とつながっている(表皮の細胞より)小さい細胞があることを見つけました。きっと触覚(圧を感じる)に関係した働きをしているだろうと思われてきましたが、長い間その働きは解明されませんでした。2014年、コロンビア大学皮膚科の日本人研究者,仲谷先生、馬場先生によって触覚に実際関わっていることが証明されました。

表皮のメルケル細胞がやさしく触れられた刺激を受容して求心性神経に伝える機能を解明

昔、NHKの達人を紹介する番組で1000分の1㎜を指腹で感じることができる職人の方が紹介されましたが、あの技にはメルケル細胞が関わっているのだと思うとちょっとわくわくします(えらいぞ、メルケル細胞!っていう感じでしょうか)。

前振りが長くなりました。今、毎年恒例の米国臨床腫瘍学会(シカゴ)に来ています。今回はメルケル細胞から発生する?メルケル細胞癌の新薬のお話です。

学会場とダウンタウンのホテル間にはシャトルバスが随時走っていますが、乗ってみたかった電車で帰ってきました。100年以上の歴史を持つ高架鉄道です。むき出しの重厚な鉄の支柱がいい感じです。

米国臨床腫瘍学会(シカゴ)は世界最大のがん治療に関する学会です。

これまた毎年恒例の皮膚科の学会で一番大きい「総会」(今年は広島)に出てから金曜の夜に品川に移動して、土曜の朝に成田を経つと土曜の朝にシカゴに付き、ホテルに荷をおいて、恒例の甘辛いスペアリブを食べに行き、午後から始まる皮膚がんのセッションに出ます。何年か前から続いてきた免疫チェックポイントのデータが昨年は少し減った感じがしましたが、今年はまただいぶ増えました。もちろんメラノーマの演題が断トツでしたが、メルケル細胞癌に対する新薬の効果に関するセッションが特別に組まれていて勉強になりました。(がんは生きている細胞がなりますから、メルケル細胞という細胞がいれば、メルケル細胞癌という病気は存在することになります)。

メルケル細胞癌はとても珍しい皮膚がんです。基本は手術と放射線療法(腫瘍が小さければ手術のみ)で治療しますが、転移を起こしてしまうとやっかいです。抗がん剤に良く反応していったんは小さくなるのですが、すぐにお薬が効かなくなることが多いからです。

ニボルマブ(商品名オプジーボ)やペムブロリズマブ(商品名キイトルーダー)は免疫のブレーキであるPD-1を効かなくする抗PD-1抗体です。先陣を務めたニボルマブがメラノーマに承認されてから4年が経ちます。そしてブレーキPD-1を踏む足(PD-L1:リガンド)の方をブロックするお薬が抗PD-L1抗体アベルマブ(商品名バベンチオ)です。メラノーマよりさらにさらに稀な腫瘍であるメルケル細胞癌が初めての適応疾患として承認され、昨年末から国内でも使えるようになっています。抗PD-1抗体に次ぐ新しい免疫療法薬である抗PD-L1抗体治療の先陣の一角をまた皮膚がんであるメルケル細胞癌が務めていることになります。

 

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