COVID-19 新型コロナウイルスによる皮膚の症状

新型コロナウイルス(COVID-19)の問題が続いています。報告によってばらつきが大きいのですが、皮膚に症状が出る方もいるようで、新型コロナウイルス(COVID-19)感染で皮膚に症状が出た患者さんが報告されるようになりました。すべてを紹介することはできませんが一部を紹介します。(リンク先には実際の皮疹の画像が出ていますので見たくない方はご注意ください)(私自身は新型コロナウイルスに感染していて皮膚に症状が出た患者さんを診たことはありません。したがって、以下の記述は論文の記載に基づいたものです。)

論文1

https://www.nebraskamed.com/sites/default/files/documents/covid-19/addendum-f-cutaneous-findings-reported-in-covid-19.pdf

皮膚の症状はあまり特徴のない播種状型(はしゅじょうがた・・・細かい赤い斑点がたくさん出るタイプ・・・点状の出血を伴うことがある)が多いようです。このぶつぶつ型は風疹やはしか(麻疹)だけでなく、ウイルスや細菌に感染した時に出る皮膚の症状で最も多いタイプで、薬剤のアレルギー(薬疹)でも最も多いタイプです。つまり、このタイプの皮疹では皮膚の症状だけから原因の病原体を推測するのは皮膚科医であってもかなり難しいです(経過や他の症状や検査所見を参考にしますが・・・)

凍瘡型(無痛)・・・つまり、シモヤケ(しもやけ)型

凍瘡様皮疹の論文 https://onlinelibrary.wiley.com/doi/epdf/10.1111/ced.14243

手足症候群様(有痛)(てあししょうこうぐん)・・・パルボウイルス(リンゴ病)、EBウイルス(伝染性単核球症)、抗がん剤(分子標的薬)などでおこります。手の平や足の裏が真っ赤になります。焼けつくような痛みをともなうことが多いと思います。

皮斑型(ひはんがた・・・リベド型)・・・赤い網目が主にすねや腕に出る状態です。Transient Livedo Reticularis 一過性(いったん出るがすぐ消えるという意味)網状皮斑 https://www.jaad.org/article/S0190-9622(20)30558-2/pdf

Digit Ischemia 手足の先端の血流が悪く紫になる状態です。よくある病気としては、抗リン脂質抗体症候群(自分に反応する抗体(自己抗体)ができて、血液が固まりやすくなる状態)や動脈硬化などによる心臓から遠い部位(手指、足趾、耳、鼻先など)に血が回らず紫になる状態などで観察されます。

 論文2 https://www.joidairouso.com/bb/img/207_2.pdf

一部抜粋 From the collected data (88 patients), 18 patients (20.4%) developed cutaneous manifestations. 8 patients developed cutaneous involvement at the onset, 10 patients after the hospitalization.

88人の感染者のうち18人(20.4%)に皮膚の症状があった。8人は感染症状が始まった時から、10人は入院後に皮膚に症状が出た・・(うはらコメント:最初から出る方と重症化してから出る方と半々ぐらいということですね・・・つまり皮疹の経過で感染時期についてどうこう言えない)

Cutaneous manifestations were erythematous rash (14 patients)widespread urticaria (3 patients) and chickenpox-like vesicles (1 patient). Trunk was the main involved region. Itching was low or absent and usually lesions healed in few days. Apparently there was not any correlation with diseases severity.

皮膚の症状は18人中14人 はrash(ぶつぶつ型・・・風疹やはしかのような状態)、3例はじんましん型、1例は水痘(ミズボウソウ・・・小さい水ぶくれがたくさんできる)。かゆみはないか、あっても軽い。2-3日で皮膚の症状は消える。皮膚に症状が出たからと言って本体の重症度と関連しない。

中国からの報告では皮膚に症状が出た方の比率はかなり少ないです。でも皮膚の症状はいつ出るかわかりませんし、すぐに消えてしまうこともあるので正確な数字を出すのは難しいかもしれませんね。

皮膚科医の立場でいえば、全身にぶつぶつが出た方と手足の先のしもやけ様の症状、血栓症や血管炎を疑う網目状の皮膚症状があれば、新型コロナウイルスの感染を考えないといけない、ということになります。しかし、ぶつぶつ型が多いので、今のところ、皮疹の性状から新型コロナウイルス感染を否定する(あるいは疑う)のはかなり難しいということになります。皮膚症状そのものが患者さんの生命を脅かした重症型の皮疹を発症した患者さんは今のところ出ていないので、今のところはまず、皮膚以外の症状(呼吸や味覚、聴覚、発熱、下痢など)に注目して治療方針を決めたほうがいいということかもしれません。

ただ、一点気になるのは、ぶつぶつ型に小さい出血を伴うことがあること、シモヤケ型(皮膚の細い血管の破壊)、皮斑(網目状:皮膚の血管がつまっているか、血管自体がつぶれている)型です。これはウイルス感染によって自分の凝固線溶系(ぎょうこせんようけい:血を止める、あるいはサラサラにするシステム)や血管を攻撃するミサイル(抗体)ができる方がいるということかもしれません。これは怖いです。肺炎の機序とは直接関係しないかもしれませんが、脳や腎臓に問題が起きる可能性がないか心配です。

*以上、この記事は個人的な解釈を多分に含みます。まちがっているかもしれません。新型コロナウイルスについては様々な憶測が飛び交っています。まずは公的な施設からの見解を第一にしてください。

本文とは関係ありません。赤と緑が混じった若葉がきれいです。

鳥の祖先が恐竜なら・・・恐竜もカラフルだったらいいなと思った。

 

 

利き腕と反対の手が荒れている 手荒れ

コロナウイルスの感染対策でアルコールで手をしょっちゅう消毒するせいか、少し手が荒れ気味です。このアルコールもいつまでもつか心配です。

手荒れの多くは洗剤とお湯による皮膚の表面のバリア(あぶら)が落ちたところに食品などの様々なものが皮膚に染み込んでかぶれていることが多いと思います。主婦湿疹などと呼ぶことがありますが、これはちょっと(すごく?)問題のある病名かも知れませんね。一人暮らしを始めた学生や社会人1年目の男性がそろそろ外来にぽつぽつ来始める季節です。(人のことはいえませんが)お母さんにこれまでずっとやってもらってきたこと、家事、の大変さに気づくわけです。もちろん職業性のものもあります。

手荒れ、とくにかぶれ(かぶれ(接触皮膚炎:せっしょくひふえん)は、よく使う方の手が荒れますから、右利きの方は右手の方が左手より症状が強いことが多いです。でも逆だったら・・・・・。医師になったばかりの1年目、先輩の先生が患者さんに利き腕まで聞く必要性を教えられて驚いたことがあります。皮膚病は原因が身の回りの生活と密接にかかわっていることが多いので、患者さんにいろいろ聞く必要があります。

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絆創膏(ばんそうこう)による皮膚炎

かぶれ(医学用語で接触皮膚炎)は皮膚に起きるアレルギーの代表的な疾患です。アレルギーでない場合もあります。たとえば洗剤やお湯などで皮膚表面の角層(大切なバリアです)が壊れ、皮膚から保湿成分が抜けてガサガサになってしまう・・・これはアレルギーではありません(ただし、バリアが壊れた皮膚から食品や植物の汁などがしみ込んで、次に本当のアレルギーになることはよくあります。)

かぶれは原因となるものに触ってなるため、触ることの多い(よく使う)部位に一番強く症状が出ます。右利きなら右手の親指と人差し指がいちばん荒れやすい部位です。右利きなのに左手の症状が強い場合はなぜそんなことが起きるのか考えなくてはなりません。

たとえば、

シャンプーやリンスや化粧品のローション剤のかぶれ・・・ローション類は右手でボトルをつかんで左手の手の平に出します。よって左手の中央に一番強い症状がでます。

たとえば左手の甲に症状が強い・・・なぜか手の水虫は利き腕と反対の手の甲に一番強い症状が出ることがあります。たぶんあまり使わない部位のほうがいごこちがいいのかもしれません(全く個人的な印象です。根拠はありません。)

最近も右利きなのに左手のほうが症状が強い方が受診されました。職業は調理師さんでした。通常包丁を持つのは右手、左手で食物を抑えます。扱っている食材の何かが合わないようです。

かぶれはよくある疾患ですが、その原因を突き止めるのは推理小説を解くのに似ていて、皮膚科医の腕の見せ所です。原因がはっきりすれば治療も不要になります。ただ手は使わずにはいられないので予防はなかなか難しいですね。

先週ぐらいから延齢草(エンレイソウ)が咲き始めました エゾエンゴサク(蝦夷延胡索)も一緒

繁殖期だそうです。

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