外用剤(塗り薬)を混ぜるということ(2)

(前の記事より続き) [皮膚科医必携! 外用療法・外用指導のポイント]MB Derma デルマ (大谷道輝先生))yより

皮膚の塗り薬は本来1つの製剤ごとに安全性と安定性が確認されて世にでてきます(保険収載)。しかし、利便性(2種類の薬を塗るのは面倒)から現場では混ぜて処方することがあります。でも、まったく異なる薬を混ぜるので注意が必要です。

混ぜると効果が落ちるかもしれない組み合わせについて説明します。

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記事とは関係ありません。kitakitsune@utoro (石狩浜の野良犬じゃないです為念)

  • 基剤同士の相性が悪い:基材とはお薬を溶かしている成分です。軟膏、はワセリンにお薬を混ぜたもの、クリームは油と水を無理やり混ぜ合わせたもので、基本が水でその中に油が混じりこんでいるoil in waterとその逆のwater in oilがあります。oil in waterとwater in oilの軟膏を混ぜると細かく乳濁していた成分が壊れて大きな油滴と水に分かれます(油は油どうし、水は水どうしで集まりたいので)。一番変化のないのは油(ワセリン)どうし、ですが、そのほかにも問題があります。
  • 酸性とアルカリ性:お薬が最も効果を出すPHが本来設定されています。違うものを混ぜたら当然効果は落ちます。
  • ヒルドイド軟膏などのヘパリン類似物質はワセリン(ワセリン基材のステロイド軟膏も同じと思います)と混ぜたときに、4:1で保湿作用はワセリンのみと変わらなくなるそうです。混ぜるときは比が重要です。
  • 一見何の変哲もない塗る薬でも、先端科学の粋が込められています。ワセリンの中に小さな油滴に込められたお薬が分散して混じっている薬です。アトピーや乾癬のお薬にあります。こんな薬に別の軟膏を混ぜたら、組成がめちゃめちゃになるかもしれません。

 

混ぜても効果が変わらない

  • ステロイド軟膏の強さ(主に血管収縮能で見ている)はある濃度を超えるとプラトー(それ以上濃度を上げても効果は上がらない)になります。発売されている軟膏内のステロイドの濃度は対数カーブでプラトーになったところより少し濃い濃度に設定しておあります。対数とは10の1,2,3乗で表記されますので、カーブの少し濃い方にずらしても本来はものすごい変化です。ステロイドの効果を弱くしようとしてワセリンを混ぜる方がいますが、お薬1にワセリン9を加えて10倍にしても効果は落ちない可能性があります。
  • ステロイド軟膏に保湿剤を混ぜる(私もよくやります)と、保湿剤によって皮膚がしっとりするためか、ステロイドの吸収は高くなります。効果を狙うならいいですが、副作用に注意する必要があります。

 

まとめ:私個人の印象としては、安定性も外用剤同士の問題も気にしなくてよいし、どんなお薬が処方されているのかわかるし、そのお薬との相性もわかるので、チューブごとにもらったほうがよいと思います。お年寄などは、チューブのフタを開けるのが大変な場合は容器(元の製剤でもあります)のほうがいいと思います。

著者の大谷道輝先生は以前から皮膚科医に対して外用剤の混合の注意点を啓発してきた先生です。

 

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