体がすごくだるくて、高熱が出て、赤い発疹がたくさん出てきた。

ツツガムシ病

ツツガムシ病という高熱と全身に発疹がでる病気があります。ツツガムシというダニが吸血のために食いついている間に、リケッチアという細菌の一種がダニの体内からヒトなどに感染して起こる病気です(国立感染症研究所)。

体がすごくだるくて、高熱が出て、体に発疹が出る病気はたくさんあります。でも、ツツガムシ病を必ず忘れないようにしておかなければならない理由は以下です。

1.治療しないと死ぬ場合がある。

2.よく使う抗生物質(ペニシリン系、セフェム系)が効かない。が、テトラサイクリンなどを使うと直ぐによくなる(1日以内に下熱して、うそのように患者さんは元気になります)。

ツツガムシ病を疑うポイント

 1.虫に食われたあとがある:「刺し口を探せ」・・・教科書に出ている診断のポイントです。でも、ちょっと気をつけなければならない点があります。  

(1)刺し口は1cm大にもなり、表面がぐちゃぐちゃしているか、真っ黒なカサブタがついた痛々しい状態を示しますが、痛みも、痒みも非常に軽く(症状がない場合も多いように思います)、患者さんはほとんど自分では気づきません。だから、医師が探さないといけません。

(2)刺し口は下着の中が多い。ブラジャーやパンツの中などが多いのです。簡単な診察では見つかりません。

 2.季節が限られる:その土地の温度によって好発時期は変化しますが、私の地域では現在は春と晩秋に好発します。 「ゴールデンウイーク明けと農作業がおしまいになる晩秋の時期に、強いだるさ、発疹、肝機能障害、などをみたらツツガムシを忘れるな!」と先輩の先生に教えられました。今が時期ですね。気を引き締めて明日の外来に臨みたいと思います。なお、新潟の先生には、「昔は信濃川の花火大会(夏)の後が危なかった」、と聞いたことがあります。昔多かった古典型は夏に発症したのです。

3.畑や山仕事の後などに発症します。

話題変更 何年か前、新聞に、・・・「”つつがなし”の語源は、ツツガムシ病のような病気にならずに、である」と出ていました。なぜか郷愁を覚える「つつがない」という言葉と、自分が関わったことのある病気との関係を知り、なんだか感心してしまいました。本当に目からウロコでした。 ところが、今回、これをお題にしようとネットで調べたところ、事実はそれほど単純ではないようです語源由来辞典

妖蟲図鑑文献 より引用、・・・むかしつつが虫といふむし有て人をさし殺しかるとぞ。されば今の世にもさはりなき事をつつがなしといへり。竹原春泉『絵本百物語』「恙むし」の項の詞書きである。『下学集』(古辞書の一つ。1444年成立。著者不明。)には斉明天皇の治世(西暦655~661年)に、石見(現在の島根県)は八上の奥に「つつが」という虫が発生したとある。この説話の原典は、前漢時代の文学者東方朔(前154~前93)が記したという『神異経』であると思われ、・・・・中略、東方朔の著というのもどうやら根も葉もない噂のようで、どこまで信用して良いのかわからない。 ・・・

信濃川のつつがむし (身体・病気・医療の社会史の研究者による研究日誌)より引用、・・・一番気になったのは「開発原病」としてのツツガムシ病の側面である。(中略)1754-5年には新発田藩から派遣された普請奉行は、そのあたりは恙虫がいるから立ち入りたくないという農民の抵抗をはねつけて普請(河川沿いの新田開発だろうか?)を進めたという。蒲原によれば、「つつがむし」の「つつが」というのは、もとはといえば病気を表す「つつみ」という万葉時代の表現が転じて「つつが」になったそうである。だから「つつがなく」という表現は、病に罹らずにという意味であり、「ツツガムシに刺されることなく」という語源だと解するのは、「いみじき僻ごと」だと本居宣長が糾弾しているそうである。蒲原宏「越後恙虫病雑記」1-3, 『日本医事新報』no.1620(1955), 2191-2194, no.1625(1955), 2745-2747, no.1671(1956), 51-53.・・・・

「身体、病気、医療の社会史」の研究をされている先生のブログです。ツツガムシを調べていたら、ついに本居宣長まで出てきてしまいました。なんだか感動しました。上の文献、読んでみます。

さて、古典型のツツガムシが1970年代にほとんどみられなくなったのは、環境の変化で虫が生きられなくなったのでしょう。でも、1980年代から新型ツツガムシの報告が急増(国立感染症研究所の資料)したのはなぜなんだろう。

 

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