赤ちゃんに黒いあざがある 毛も生えている

生まれたばかりの赤ちゃんに赤や黒や茶色のあざ(母斑:ぼはんといいます)がある。ご両親やおばあちゃんが心配して皮膚科に紹介されてきます。心配な気持ちよくわかります。アザにはいろいろなタイプがありますが、今回は生まれつきある真っ黒なアザ(黒あざ)についてです。
itigo2010
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真っ黒なあざ(大きなほくろ)は色をつくる母斑細胞(ぼはんさいぼう:アザの細胞)が皮膚の表面とその下の真皮や皮下脂肪に増えている状態です。黒々とした太い毛も生えている場合もあります。先天性色素細胞母斑(せんてんせいしきそさいぼうぼはん)とか先天性色素性母斑(せんてんせいしきせいぼはん)などと呼びます。
さて、この黒アザにかかわる問題点は主に2つです。
1.大きな黒アザには将来メラノーマができることがある。
2.美容的な問題。
将来メラノーマが出る可能性があるのはかなり大型の場合です。メラノーマがでる確率は5-10%(あるいはそれ以上)など、報告によってばらばらですが、日本人のメラノーマは1年間で10万人に1人出るかでないかという珍しい病気ですから、大きな黒アザにメラノーマの出る確率はかなり高いといえます。
さて、大きいとはどの程度を指すのでしょう。いろいろな定義がありますが、だいたい20cm以上とすることが多いようです。注意しなければいけないのは大人の体で20cmということです。赤ちゃんは小さいですから、体が成長するにつれて同じ比でアザも大きくなります。そこで、生まれたての赤ちゃんでは、頭や顔では9cm以上、頭以外の部分では6cm以上の黒アザがあったら大型とするという考えがあります(公認されたものではありません)。
こういう大きいあざは積極的に取ったほうがよいのでしょうか?いろんな教科書やガイドラインではできれば取ったほうがいいと書かれていることが多いと思います。でも大きなものは取りきれないことも多いんですね。レーザーが効くという報告もたくさんあります。でもレーザーでは深いところの細胞は残るのでメラノーマの予防にならないのではないか、かえって刺激してメラノーマを出やすくしてしまうのではないか、などの疑問がずっとありました(個人的にです)。
1996年とちょと古いですが、イギリスで20年間の大型の先天性色素細胞母斑に症例を集めて解析した論文と著者の提言が今のところ一番よいものであると個人的に思っていますので、まとめてみます。V.A. Kinsler, J. Birley and D.J.Great Ormond Street Hospital for Children Registry for Congenital Melanocytic Naevi: prospective study 1988–2007. Part 2—evaluation of treatments. AthertonDermatology Department, Great Ormond Street Hospital for Children NHS Trust, Great Ormond Street, London WC1N 3JH, U.K.
エッセンスだけ紹介します。
1.大型のアザを何もしないで様子をみた場合、成長につれて色がだんだん薄くなっていくことが多い。手術(完全にとれなかった場合)などの何らかの積極的な治療を行った場合は色が薄くなることは少ない。逆に内部にシコリができたり、周囲に小型のホクロが増えたりする症例がある。
2.メラノーマがでるのは最近の統計では1-2%と、以前の報告より少ない。
3.メラノーマがでるのは大型のなかでもさらに大きいあざ、成人換算で60cmを超えるサイズのものが多い(新生児ですと頭で27cm、体で18cmとなります)。このサイズになると予防のために完全に取りきるのは難しい。そして巨大型では脳にもホクロの組織が増えている場合があり、皮膚だけ治療しても他の臓器にメラノーマがでることがある。つまり皮膚のアザだけ治療してもメラノーマの発生予防の根本的な治療にならない可能性がある。
結論:巨大型は小児科の先生に脳に異常がないかみてもらって問題なければ1年は経過をみてもよいのではないか。積極的な治療をしなくても2/3の症例(治療した場合は1/3)では色が薄くなっていく可能性があるどの程度薄くなっていくかは個人差があります)ことを両親に話すべきだ。完全に取りきれるサイズ(中型)ならば、切除は両親の満足度が高いのでお勧めしてよい。・・・などです。色の変化を観察するために定期的な写真撮影も必要だと書かれていました。
まとめると、メラノーマ予防を目的に大型、巨大型を無理して切除する意味はないのかもしれない。美容的な目的でレーザーや手術(大型ではなくむしろ中型の完全切除がやりやすい病変)をすることは両親が希望するならOKということでしょうか。治療しない場合は2/3の確率で色が薄くなる可能性があることはお伝えすべきかもしれません。
最近は情報がしっかりしているせいか大きなアザをもった母親に対する周囲の理解がよいようです(外来で診察しているときの個人的な印象ですが)。以前はなるべく姑さんなども外来に来てもらい、遺伝性のものではないことなどをしっかりお話していました。ご両親の心配は今も昔も変わらないと思いますが。

「赤ちゃんに黒いあざがある 毛も生えている」への1件のフィードバック

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    私も足の裏にアザがあります…極めて小さいですが、学校とかのプールでどうしたの?その黒いやつ…とか言われたり…とりたいです!
    小学校六年生です!今年卒業します!

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