ノーベル賞と高校の同級生と皮膚がんの治療薬

今年のノーベル賞医学生理学賞はToll様受容体と樹状細胞を研究していた科学者に与えられました。樹状細胞とその役割を明らかにしたスタイマン先生は受賞者発表の直前に亡くなっていたことがわかり、話題になりました。
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免疫は感染微生物に対して体を守る自衛隊のような仕組みです。免疫には獲得免疫と自然免疫があります。
獲得免疫は一度体に入ったある物質(菌など)に対して、体が「いやだなぁ」と感じ、次に入って着たときに攻撃する反応です。インフルエンザのワクチンを注射するのは、「これ、いやだなぁ」と体に覚えさせるためです。次にインフルエンザウイルスが体に入って着たときにウイルスを攻撃すして体にダメージを与えないように水際で防御することができます。
でも、ちょっと前に問題になった加水分解小麦入りの石鹸を使っていて小麦アレルギーになってしまった方の体の中では、小麦の成分を嫌だなぁと体が覚えてしまったので、小麦製品を食べると、体はバイキンが入ってきたと思って強い反応を起こします。アレルギーといいます。免疫とアレルギーに関わっている役者は同じであり(役割の比重やバランスは違うと思いますが)、得か損かの問題のような気がします(かなり単純化した考えです)。
自然免疫は、獲得免疫が記憶であるのと異なり、入ってきた「ちょっと嫌なやつ:バイキンなど」を無差別に攻撃する反応です。生まれつき持っているシステムであり、初めてのバイキンも攻撃できます。
Toll様受容体はバイキンを見分けるセンサーであり、自然免疫を起こすスイッチです。このスイッチを入れることができる薬物がすでに医療現場で使用されています。Imiquimodといいます。陰部のウイルス性イボ(コンジローマ)に保険適応になってます(ベセルナクリーム)。これがつい最近、皮膚がんの早期病変(日光角化症)にも使えることになりました。皮膚がんの原因の一番は紫外線です。紫外線はまんべなく当たってますから、皮膚がんの始まりがたくさんできる方がいます。1個1個切除するのは大変な場合があります。Imiquimodは塗り薬なので簡単です。
Toll様受容体は、英語でToll like recepterといいます。初診で敵を見分ける、なんとなく武士のようで、また、なぜか高校時代の友人の「とおる」君を思い出してしまうのです。すいません。
今週末は京都にいました。10月末から続いた毎週末(+時々週半ば)の首都圏滞在のしめくくりになりました。毎年のことですが夏が終わるといつもこんな感じでいっきに年末に突入です。さっき自分の街の駅に降り立ったら、寒空に満月(正確には14日月)が上がっていました。10時前から欠け始めましたが、欠けた部分が完全に黒くなるわけではなく、オレンジ色のグラデーションになっていて、柿の断面のようです。月が天頂近くにあるため外に出ないと見えないので寒くて長くは見られません。

「ノーベル賞と高校の同級生と皮膚がんの治療薬」への2件のフィードバック

  1. SECRET: 0
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    自分にとってトールのイメージはオーディンの子です。
    それはさておき、自分が高校時代に持っていた細胞の分子レベルのはたらきは機械的な(カラクリのような)イメージでした。ミトコンドリアがATPを合成するときなんかそうですよね。でも近年の知見により、化学物質の濃度勾配のようなものがミクロな生命活動に非常に重要な関与をすることがわかってきたみたいですね。何かの神話にドロドロしたものを神様がかき回したらヒトができたみたいなのがあったような気がしますが、そんなものかもしれないとちょっと思いました。

  2. SECRET: 0
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    ありがとうございます。科学の新知見が明らかになるたびに、その簡潔さや用意周到さに驚かされます。神のような何か超越したものに支配されているような感じがしたり、でもやはり長い生命の歴史の中で積み重ねられた経験ではないかと、ちょっと醒めてみたり。実際はどうなんでしょうね。

ビーアンビシャスボーイズ  へ返信する コメントをキャンセル

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