帯状疱疹は非常にありふれた病気です。
一生の間に6人に1人はなる、と言われていました。
Medical Tribuneという医学関係のタブロイド判に日本ワクチン学会の記事が出ていました。
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数日前に桜が満開になりました。すぐ散ってしまいました。
イチゴの花が咲き始めました。
今年は寒さが長引きましたが、良い季節はしっかりやってきました。
焚き火と根室産コマイとエピガスランタンと赤ワイン
最新のデータより(富山大ウイルス学の白木公康教授と外山皮膚科の外山望院長(宮崎県)の共同研究)
1年間で帯状疱疹になる率:1000人あたり5.57人
60歳以上で急増し、女性に多い
80歳代では1000人あたり18人
90歳を超えた方では46.4%が過去に帯状疱疹になったことがあるとのことです。
基本的には帯状疱疹は生涯で1回しかなりません。しかし、2回目の方は5.77%(昔は1%程度と言われていたような気がします)いたとのことです。50歳以下では初回から平均20年経っているのに、60歳以後では平均7.6年(中央値6年)で2回目の帯状疱疹になっていたとのことです。50歳以下では免疫が20年持つのに、60歳以後では6-7年しかもたないということになります。老化によって免疫という記憶が長続きしなくなったのでしょうか。
帯状疱疹は60歳を超えるとなりやすくて、90歳代までに半数弱の方がかかる病気であることが再確認できます。これだけ多くの方がなり、神経痛が長く残る方がいることを考えると、60歳以後はワクチン接種を行うことを考えたほうがよいような感じがします。
ヒトは生まれてからたくさんの感染症にかかります。一度かかると病原体に対して抗体というものができて、次に同じ病原体が入ってきても立ち向かえる防御機構(免疫)ができます。一種の記憶です。でも一般的な記憶と同じで、長い間出会わずにいると、徐々に忘れていきます。10年ぐらいすると完全に忘れてしまうのではないかと聞いたことがあります。つまり、1回帯状疱疹になっても10年ぐらいするとまたなる可能性が出てくるということです。でも、今回の報告では50歳以下では20年ぐらいはもつようです(あくまでも水痘帯状疱疹ウイルスに対してということになります)。
10年間、あるいは20年間の間に少しずつ、帯状疱疹のウイルスを抑える免疫が落ちていく。でも時々帯状疱疹のウイルスに触れることがあれば、記憶は戻るはずです(抗体がぎりぎりあれば病気は発症しません)。
帯状疱疹に2回以上なる患者さんが昔より増えているのか?増えているとすればそれは高齢化のためなのでしょうか?
以下は私の想像(帯状疱疹に2回以上なる方が増えていると仮定し、それが高齢化だけではないとすると・・・)。
昔は3世代4世代で住んでいたので、孫が水疱瘡になるとおじいちゃん、おばあちゃんも感染していたのではないでしょうか。忘れかけていたみずぼうそう、帯状疱疹(同じウイルスです)ウイルスにさらされ、免疫が記憶を呼び戻されていたのではないかと思います。今はじいちゃん、ばあちゃんだけで住んでいることも多いと思います。世代間に断裂があるので、記憶していたいろいろなバイキンに対する記憶がどんどん薄れていきやすい状況にあるのでないでしょうか。
精神科と小児科の先生の帯状疱疹の発症率を調べた論文があります。小児科の先生は帯状疱疹になりにくいようです。いつも水痘の子供さんを診療されているので、しょっちゅうワクチンを打っているような状況にあるから、なりにくいのかもしれません。皮膚科医も同じかもしれません。帯状疱疹になったという皮膚科医をあまり知りません。もしなったら、あまり外来をやっていないということになってしまうのでしょうか。