マダニに喰いつかれた

ゴールデンウイークも過ぎ、過ごしやすい季節になりました。この時期に注意するのはツツガムシとライム病です。共に虫に刺されて病原体が体に入って起こる感染症です。今頃の時期にだるくて、体に淡い赤い皮疹が出て、とにかく体がだるくて、熱が出て、肝臓の機能が悪かったり、血小板が少なくなっていたらツツガムシ病の検査を行います。体がちょっとだるいか比較的元気で体幹に10-50cmの丸い赤い皮疹が1個出ていたらライム病を疑います。ライム病はマダニに食いつかれて血を吸われているときにボレリアという菌が感染します。マダニは結構そこらじゅうにいます。刺されても痛くなく、一旦食いつかれると1週間ぐらい皮膚についています。痛くもかゆくもないので気付きにくいです。首にイボができたと言って来院された患者さんを診察したらモゾモゾ動くダニが食いついていたことが何度もあります。気づかないんです。でも、気づいたらどうするかまとめておきます。
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nanohana blue sky 201
秋空のように澄んだ青空でした。
alpus2013may
今シーズン初カヤック アルプスがきれいでした 
yorozui 2013 may
全身まんべんなく筋肉痛です


山や草薮を歩いていて食いつかれることが多いと思います。病院を受診した患者さんについては皮膚に喰い込んだ口器が残らないように小さく切り取ることが多いと思います。口器が残るとボレリアへの感染リスクが高くなったり、しこりが残ったりするからだと理解していました。調べてみました。
まず感染症と言えばここCDC8center of disease control and prevention, USA)です。感染症の映画でも出てきます。ダスティンホフマン主演のアウトブレイクにも出てきました。この映画を見ているとき、もしうちの町で起きたらだめだったかもしれないと思いました。日本では速やかに軍隊が町を閉鎖するなんていうということができないからです。横道に反れました。
CDCの記述
How to remove a tick
1.Use fine-tipped tweezers to grasp the tick as close to the skin’s surface as possible.
2.Pull upward with steady, even pressure. Don’t twist or jerk the tick; this can cause the mouth-parts to break off and remain in the skin. If this happens, remove the mouth-parts with tweezers. If you are unable to remove the mouth easily with clean tweezers, leave it alone and let the skin heal.
3.After removing the tick, thoroughly clean the bite area and your hands with rubbing alcohol, an iodine scrub, or soap and water.
Avoid folklore remedies such as “painting” the tick with nail polish or petroleum jelly, or using heat to make the tick detach from the skin. Your goal is to remove the tick as quickly as possible–not waiting for it to detach.
ピンセットでなるべく根元からねじらないように除去しろ。皮膚に口器が残ってしまったら取れ。でも取れなければ放おっておいて良い。マニキュアやワセリン、火であぶるなどの迷信を信じるな、というような内容です。メルクマニュアルでも同じです。メルクマニュアルでも、口器が残った場合に外科的に切除するのは残った口器が起こす問題よりも除去によって残る傷の方が問題が大きいと書いてあります。いきなり虫を外科的に取りに行くのはやりすぎなのだろうか。実際はマダニの食いつきはかなり強く、簡単にはひっこ抜けません。CDCやメルクマニュアルでは否定されていますが、日本では夏秋先生がワセリンで虫を覆って30分待つと自然に取れると報告しています。私は経験がないのでわかりません。
CDCもメルクも、自然脱落を待つのはよくないと述べています。虫を除去した後はドキシサイクリン(ビブラマイシン)200㎎を1回投与がよいと言われています(これもCDCでは1つの意見として紹介している程度です)。
マダニによって媒介されるボレリアの毒性については地域差があって、米国に比べると日本では皮膚症状以外の神経症状や関節症状を起こす方は稀です。それなのに米国の指針が日本で通常行われている方法より簡単なのはなぜなのでしょうか。すいません。今回はきちんとした解答をだすことができません。当面は現状維持で、受診された患者さんについてはマダニの口器を残さないように取るしかないかもしれません。

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