50歳以上の原因不明のかゆい皮疹と高血圧のお薬

皮膚科を受診する理由でたぶん一番多いのは「かゆみ」でしょうか。かゆいブツブツが体中にできている。いろいろ調べても原因がわからない。しかたがないのでステロイド外用剤と抗ヒスタミン剤、それでも治まらない場合はステロイドの内服や紫外線治療などで生活できる程度までに症状を抑えている(完全には治らない)患者さんがたくさんいます。内臓の病気や金属などのアレルギーや歯の病気など、報告されている原因は調べますが、原因がわからない方がけっこういます(個人の診断能力の差もありますが。
さて、昨年の6月にJAMA Dermatologyという皮膚科ではトップクラスに入る雑誌に、50歳以上で原因不明のかゆい皮疹を持つ方と高血圧の薬であるカルシウム拮抗薬やチアジド(利尿薬)との関係についての報告が載ってました。
Calcium-Channel Blockers and Chronic Eczematous Eruptions of the Aged
hourensou2014JAN
寒さに平気なホウレンソウ


50歳以上で原因が特定されない2か月以上対称性のかゆい皮疹が続いている方で1種類以上何らかの薬を飲んでいて((薬疹が疑われる方))、薬剤の中止により3か月以内に皮疹が治った方たちと、薬を飲んでいないがかゆい皮疹がある別の群を比較して、関連性の強い薬剤を調べた研究です。
結果はカルシウム拮抗薬が4倍、チアジド(利尿薬)が2倍、かゆい皮疹を起こすことに関連していました。
確かに、自分の経験でも、高齢者で急にこめかみから耳の前、毛の生え際、背中腹部腰、太ももなどにかゆい皮疹が出始め、いろいろ調べても原因がわからない方で血圧の薬を変えて治る方がときどきいました。うすうす血圧の薬じゃないかなぁ、と思うこともあります。しかし、血液検査でも原因を特定するための検査(パッチテストやDLST)にはひっかからず(証拠がえられない)、また、降圧剤はとても大切な薬ですので、安易にやめるように言うことはできません。必ず主治医の先生の判断に任す必要があります。皮膚の症状が軽くて外用でごまかせるなら、患者さんと相談して内服は変更しないで様子をみてもらうことも結構あります。
今回紹介した論文を読んで、個人的にはもう少し積極的に血圧の薬の変更が可能か主治医の先生に問い合わせてもよいかな、と思いました。
薬疹が疑われたときの基本は薬剤を止めることですが、病気によっては薬による利益と薬疹とを天秤にかけて継続するか決めることもけっこうあります。世の中のすべてのことに通じますが、理想は追求しますが、理想だけではものごとがうまくいかないこともあります。薬剤を続けてよいのか、すぐに止めた方がよいのか、という判断を行うことが皮膚科医の存在意義の重要な部分を占めていますが、継続可と述べることは皮膚科医にとってかなり怖い決断です。
なお、患者さん本人の判断で勝手に薬を止めることは危険です。かならず主治医に相談してくださいね。 薬疹を疑って強く皮膚科を受診した(紹介された)が、薬とはまったく関係ない皮膚疾患だった、という方も結構いますので、心配なら皮膚科医に相談してみてください。

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