先月末に招待された韓国での帰国前にレジデント達と夕食を共にしました。宴の半ばでちょっと会話が途切れたので、手持ちのダーモスコピー(ほくろなどを拡大して観察して記録するものです)にあった画像を見せながら「これなんだ?」と質問してみました。みんな興味を持ってくれました。モチベーションが高いです。症例の中にあったのが、数か月前から始まった両方の脛(すね)に青灰色黒がまじった1-2cmのシミが多発する症例です。
先週末は青森へ 30年前に青函連絡船に乗るために何度か通過したことはありましたが街に降りたのは初めてです。海峡の向こうに北海道が見えて、行きたくなっちゃいました。 ホテルで紹介された居酒屋ではねぶたの実演?と津軽三味線が聞けました。お酒もお刺身もおいしかった。
皮膚の後天性(生まれつきではない)のシミ(色素沈着)の原因はたくさんあります。両方の脛に多発する青黒い色素斑が数か月前から急に増えて来たことから考えるポイント以下です。
1.両側に均等にあるので、原因は両足に均等に外用したものか、全身的な問題(口から入ったものや内臓の病気によるもの)を疑います。全身的な原因として一番多いのは口から入っているもの(特に薬剤)です。
2.色が青灰黒がまじっているので、黒系の成分だけでなく他の色の成分もまじったものが皮膚の深いところに沈着している。黒だけであればきれいな青になります(刺青です)。
答えは、長期間内服しているミノサイクリン(商品名ミノマイシン)という抗生物質が鉄などの金属とくっついて沈着(皮膚にたまった)したものです。上記のように若い先生を煙に巻くような講釈を一応たれますが、知っていればなんてことはない疾患です。
金属とくっつきやすい薬剤があります。たとえば抗生物質(化膿止め)ではミノサイクリンの仲間のテトラサイクリン(商品名アクロマイシン)、系統が違うものとしてセフゾン(セフェム系)、マクロライド系(ルリッドなど)、ニューキノロン系(クラビット、など)、抗生物質以外では甲状腺の薬(チラージンなど)、肝臓の薬(ウルソなど)です。このような薬は2価、3価の金属(水に溶けると元素記号の肩に++や+++が付くやつ、銅、カルシウム、アルミニウム、鉄、など)とくっつきやすいので、制酸剤などと一緒に飲むと、くっついて吸収されにくくなり便に出てしまいます。また、吸収されて体に入った後も体内の金属とくっつくので、長期に内服していると皮膚に沈着するようになります。
ミノサイクリンによる色素沈着のパターンにはいくつかあって、全身の皮膚の沈着(ブロンズの銅像のようになります)、下腿にマダラ状に沈着、傷やケロイド瘢痕の部位のみに沈着、するタイプなどがあります。
このような金属とくっつく性質を利用して、金属アレルギーがありそうな方にはルリッドなどの抗生物質をしばらく飲んでいただいて、皮膚症状がよくなるかチェックすることもあります(この方法の信憑性は?です)。