ノーベル生理学医学賞2015 疥癬

大村先生が今年のノーベル賞を受賞されました。先生が開発されたイベルメクチン(商品名ストロメクトール)は、いろいろな寄生虫に効きますが、人類への最も大きな貢献は、オンコセルカ症です。国内では2006年に疥癬に保険適用になり、治療がとても楽になりました。
関連記事
マリリンモンローとダニ
オンコセルカ症についてはメルクマニュアルより
オンコセルカ症(河川盲目症)は回虫である回旋糸状虫による感染症です。これによって、かゆみ、発疹、時として瘢痕、そして失明の原因となる眼の症状が引き起こされます。
この感染症は河川で繁殖するメスのブユが人を刺すことで広がります。
激しいかゆみが発生しますが、時として発疹、リンパ節の腫れ、視覚異常、もしくは失明も引き起こされます。
一般的に、皮膚にいる前期幼虫を調べることで感染症の診断が行われます。
感染がみられる地域では、イベルメクチンを年2回使用することが感染のコントロールに役立ちます。
世界中では、約1800万人がオンコセルカ症にかかります。そのうち27万人が失明し、50万人が視覚障害となります。オンコセルカ症は失明原因の第2位となっており、熱帯地域やアフリカ南部(サハラ以南)で最もよくみられます。時としてイエメン、南メキシコ、グアテマラ、エクアドル、コロンビア、ベネズエラ、ブラジル(アマゾン沿い)でも発生します。
2015dec12
本当に久しぶりに庭の世話をしました。今年は不作でした。最後の収穫です。青いトマトは追熟に期待します。
2015DEC12-1
秋成のパッションフルーツです。屋内に入れないと熟さないかもしれません。


疥癬はヒトに寄生するダニです。ヒトからヒトにうつるので、集団で生活している病院や老健などで感染が広がることがあります。最近は日帰り(デイケア)で短期に通院する方が持ち込んで、他の方が持ち帰る、その方たちが他のデイケアでうつす、というような感染源を突き止めにくいパターンがあって制圧に苦労することがあります。臨床的に1人を見逃すと大きな問題になるので疥癬の症状と診断は医師国家試験の必出問題でもあります。
2006年以前、疥癬の治療は大変でした。安息香酸ベンジルやγーBHCといった毒性の強い薬品を体に塗って、翌日に洗い落とし、それを繰り返しました。外来で刷毛で患者さんの体に塗り残しのないようにまんべんなく塗るのは大変でした。また、γーBHCは農薬として使用が禁じられた物質でしたが、安息香酸ベンジルが効かない場合は仕方なく使用したていました。硫黄(ムトウハップ)やオイラックスなども効くことになってましたが、効果は?でした。イベルメクチンは2週間開けて2回飲むだけで効果が出るため、治療がとても楽になりました。

「ノーベル生理学医学賞2015 疥癬」への2件のフィードバック

  1. 遠いところまで学会等々、いつもいつも本当にお疲れ様です。
    楽しく読ませて頂きました。
    長崎の記事では「オラショ」を思い出し、久し振りに聴きました。
    イベルメクチンは獣医学の分野でも大変身近な医薬品になりました。
    先生もTEDご覧になるのですね。
    植松努さんのTEDは、私も度々拝見します。
    こちらの僻地診療所へ赴任された若き医師の奥様が「佐久TED」なるものを企画していらっしゃいます。
    ご興味ある様でしたら、Google先生に尋ねてみてくださいね。
    皮膚科学教室のホームページから、先生のブログを見付けた瞬間、なんだか宝物を見付けたように嬉しくなりました。
    お身体を大切に。
    これからも更新楽しみにしています。

  2. SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    ありがとうございます。佐久TEDのぞいてみます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

上へ