今日は良い天気です。やっと春らしくなりました。昨日は非常に寒く、朝駐車場のフェンスにツララができていました。
さて、皮膚科の診療に欠かせないのがカメラです。皮疹の時間的変化をみるときや、複数の医師で診断や治療について相談するときに必要です。以前はスライドフィルムを使用して撮影していましたが、10年ほど前からデジカメを使うようになりました。
デジカメが出てからの変化についてちょっと振り返ってみます。
まず、自分が出張先の病院で診察した患者さんで診断と治療をほかの先生に相談したい時があります。デジカメはカメラのモニターに画像が出るので相談しやすくなりました。駆け出しの頃、出張先の病院で診た患者さんの診断がわからず、大学にもどってから先輩の先生に聞くことがありました。駆け出しですから、そもそも皮疹の状態をきちんと言葉にすることができません。うまく説明できませんので、先輩の先生も答えようがありません。しかたがないので、アトラス(皮膚疾患の写真が主体の教科書)や全集を片っ端から見て、似ている写真を探して持って行ったこともありました。
10年ほど前でしょうか。若い先生が自分のデジカメを持ってきて、画像を見せながら診断を聞いてきました。デジカメが普及し始めたころでしたので、こういう使い方もあるのかと感心しました。ただ、デジカメがなかった時代の苦労は、それはそれで画像を言葉に変換するトレーニングや無闇矢鱈にアトラス集のページをめくることで他の皮膚疾患の勉強になっていたような気もします。
デジカメが普及し始めたころ、カメラ付きの携帯電話も出てきました。ネットで調べたら2001年、J-Phone(現在のソフトバンク)が最初のようですね。写真を撮ってメールに添付して送ることを「写メ」と名づけられたようです。でも広義には携帯で写真を撮ることそれ自体も含めてよいようです。
写メが普及し始めると、皮疹の最初の状態を携帯で撮影したものを見せてくれる患者さんが出てきました。出たり消えたりする蕁麻疹を診断するときに参考になります。
また、アレルギーの検査でパッチテストというのがあります。かぶれや薬疹の原因を探すために、化粧品や金属や薬を皮膚に貼って反応をみる検査です。結果が出るまで2日から1週間かかります。本来は通院してもらって反応がでないか見ないといけないのですが、検査日、48時間後、72時間後、1週間後と頻回に外来に来れない方がいます。そんなときは途中の経過を写メを撮ってもらうようお願いすることがあります。繰り返しになりますが、正確な診断には皮膚反応を触ったり、小さい水疱などが出ていないか見ないといけないので、本来望ましい方法ではありませんが。
さて、ほかに写メの活用法として個人的におすすめしたいのは、皮膚のシミやほくろを治療する前です。皮膚科で治療する場合、特に切除などの手術をする前には、ほぼ100%写真を撮りますが、皮膚科以外で治療を受ける場合に写真をあまり撮らないところもあります。もしシミやほくろや皮膚の腫瘍で治療を受ける場合はクリニックに行く前に写メを撮っておくとよいかもしれません。治療前の診断と違った病理結果(切除したものを顕微鏡でみて診断すること)が出たり、治療したのに再発したときなどには、治療前の状態がわかると診断がしやすくなります。