サルコイドーシス(2) 新しい診断基準 2015

前記事では、肉芽腫とは?の説明で終わってしまったので、今回はその続きです。
肉芽腫は組織球という細胞のかたまりで、菌や異物や細胞の死骸などを取り囲んでできるカプセルです。サルコイドーシスはカプセルの核がないのに、肉芽腫(にくげしゅ)というかたまりが体中にできる病気です。今回は症状や診断基準について触れます。
参考にしたサイトや講演:
1)近畿中央胸部疾患センター呼吸器内科の倉原優先生のブログ
2)四十坊典晴先生の論文「わが国におけるサルコイドーシスの診断基準と重症度分類
3)そして、週末にあった北海道地方会での関西医大教授、岡本先生の講演

2016MAR21


今日は良い天気です。庭にも花が咲き始めました。

“サルコイドーシス(2) 新しい診断基準 2015” の続きを読む

サルコイドーシスとは(1) 新しい診断基準(2015)

週末は札幌に行ってきました。北海道地方会に出席するためです。関西医大の岡本教授のサルコイドーシスの講演を聞きました。今回は自分の勉強を兼ねてサルコイドーシスの新しい診断基準(2015年改訂)についてまとめてみます。2016MAR18

並走する2すじの飛行機雲。この後、北から来たもう1本の飛行機雲がこれに直行しました。空にも道があるのですね。FDAで銀色の機体は初めてでした。

“サルコイドーシスとは(1) 新しい診断基準(2015)” の続きを読む

第79回日本皮膚科学会、東京・東部支部合同学術大会

新宿にいます。学術大会では多くの教育的あるいは珍しい症例などが報告されます。一番大きい皮膚科の学会は総会ですが、そのほかに国内をいくつかの地域にわけた支部ごとの学会も開催されます。今回は首都圏と東部支部(静岡から北海道まで)の約四半世紀ぶりの合同学会です。多くの症例報告から個人的に勉強になったものをいくつか紹介します。
1.ケーソンCG(防腐剤)のかぶれが増えている可能性がある(酒井ら、新潟大)・・・防腐剤と言えばパラベンが有名ですが、ケーソンCGは冷却用ゲル(暑い夏に使う枕など)などに入っていて、何かの拍子にしみだして?かぶれることがあるようです。顔のかぶれを疑ったときに冷却用ゲル製品の使用の有無も聞かないとけないかもしれない。大阪府立公衆衛生研究所HPに詳細が出ています。こっち。
2.毛染めのかぶれを疑った時に、パッチですとでパラフェニレンジアミン(染毛剤の中心成分)に陽性になる方は半数しかいない(石川ら、東邦大)。パラフェニレンジアミン陰性だった方は、香料、金属、防腐剤に陽性だったようです。疑った成分のパッチテストのみでは不完全な検査になってしまうかもしれないということですね。
3.顔や手足に棘状の小さい角化(イボ)が多発してきた高齢者・・・血液や内臓のがん(茶谷ら、永寿総合病院、上田ら、北里研究所)。中高年で両手足が硬く角化してきたとき、腋などに黒くてざらざらした皮疹がめだってきたとき、体中に短期間にイボが増えてきたときなどに、まれに悪性リンパ腫や白血病などがかくれていることがあります(きわめて稀です)。たぶん腫瘍細胞やそれに対応しようとする自分の体からいろいろな因子が分泌されて、それによる表皮細胞の増殖ではないかと疑われています。つい先日。先輩の先生から手足に棘状のイボがたくさんできた高齢の患者さんについて「何かわかる?」と聞かれました。先天性の掌蹠角化症には同じような症状を呈する病型はありますが、高齢者ではあまり聞いたことがありませんでした。学会には出てみるものですね。目の前が晴れました。
4.後天性無汗症では血清CEAが増加する(本間ら、旭川医大)。CEAは内臓の腺癌などで増加する腫瘍マーカーです。がんの存在を血液検査で見つけられないかという目的で開発された古い検査です(実際はかなり病気が進行しないと異常値になりませんので、早期診断には画像検査が必要です)。
5.右腕が赤く腫れた、抗生剤が効かなかった・・・右鎖骨下静脈血栓(角田ら、川崎市立井田病院)。下肢で同じようなことが起きた場合は血栓症を鑑別に挙げやすいのですが、上肢では個人的には盲点になる疾患だと思いました。注意します。
*今回のブログ記事の更新は1カ月半ぶりになりました。このブログ会社は1カ月以上更新しないと広告で埋め尽くされてしまいます。昨日の懇親会で何人かの知り合いが(更新されていないことについて)心配してくれました。見てくれている方がいるというのはありがたいことです。大丈夫です。原因はネタ不足と怠慢です。

ニキビが治らない

年賀状でお題をいただきました。そこで過去の記事を振り返ってみたらずいぶん長いことニキビ(ざ瘡)について書いていませんでした。昨年、久しぶりにニキビの新薬(といっても海外では昔からあったものですが)が承認されましたので、まとめてみたいと思います。皮膚科に受診された場合に保険診療で行う基本の薬剤(商品名、カッコは一般名)は、
1.ディフェリンゲル(アダパレン):ニキビの原因の始まりである角質などによる毛穴のつまりを治す。面皰(めんぽう、毛穴に白いものが詰まっている感じ、ニキビの子供)から赤くなったニキビに効く。
2.ベピオゲル(塩化ベンゾイル):毛穴の詰まりと次に始まる赤いニキビをおさえる。
3.ダラシンTゲル:抗生物質。ニキビ菌の繁殖をおさえる。
4.上記2と3を混ぜたデュアック配合ゲル。
5.ミノマイシン、ビブラマイシン、ルリッドなどの抗菌剤の飲み薬:にきびが大きくなって膿がたまっている、あるいは赤みと痛みが強いニキビに用います。
外用剤はそれぞれ1つでも効果がありますが、2つ以上を併用するとさらによいことがわかっています。どれをどのように組み合わせるかが問題です。
関連記事
ディフェリンゲルの使い方
しみる薬は顔を洗った直後には塗らない方がいい
2016JAN2-1
2016JAN2-2
2016JAN2-3
2016JAN2-4
暖かく気持ちのよい天気が続いた三が日でした。せんべいを焼いてみました。

“ニキビが治らない” の続きを読む

朝起きたらすねに500円玉程度の赤みが・・・徐々に黒ずんで、じくじくしてきた

やけどの多くは熱いお湯や蒸気や金属(やかんやストーブ)に一瞬触れておきることが多いのですが、皮膚の障害は温度x時間で決まりますので、心地よい暖かさ(数十度)をもたらす熱源でも長時間当たっているとやけどになります。
アンカによることが多いですが、ストーブなどのそばでうたたねしたときにも起きることがあります。やけどに気づいた直後は丸く小さな赤みだけですが(感覚神経も焼けているのであまり痛くありません。痛みのないやけどはむしろ深くやられています)、深くまで焼けていると、翌日あたりから赤みが紫色などにくすんできて、1週間後程度から黒くなり、ぐちゃぐちゃしてきます。時間と共に悪化している感じがしますが、実は皮膚の破壊は最初の数時間で完成していて、痛んだ皮膚が顕在化してくるだけです。どうすればよいか・・・
関連記事
冬の皮膚病 低温熱傷とひだこ

アミメキリンとマサイキリン(すねに網のような発赤が)

赤外線で中までじっくり焼ける

懐かしさがちりばめられていました。[フォースと共に」という言葉に涙腺がゆるっとしました。高校生の時に見たエピソード4の完成度の高さをあらためて実感しました。ダークサイドがちょっと弱い感じがしました。次回作が勝負ですね。

“朝起きたらすねに500円玉程度の赤みが・・・徐々に黒ずんで、じくじくしてきた” の続きを読む

それでも患者さんは苦しんでいるのだ

「アナフィラキシー(何かを食べたり、飲んだり、注射したり、刺されたりした直後に、眼が赤くなり、鼻水、鼻づまり、唇の腫れ、喉の違和感、息のしにくさ、喘息発作、腹痛、下痢、吐き気、嘔吐、全身のじんましん)を起こしました。検査お願いします」という依頼が良く来ます。アナフィラキシーの原因を見つけるための検査は命がけです。
2015dec19
先々週になりましたが広島に行きました。有名な庭園の玄関には新年の準備が
2015dec20
広島の朝焼けです。

“それでも患者さんは苦しんでいるのだ” の続きを読む

梅毒 手の平を見る

医学系のニュースによれば成人日本人男性の梅毒患者が増えているようです。皮膚科は数十年以上前は性病などの感染症が診療の多くの部分を占めていたので、皮膚科医は性病をたくさん見ているような印象を持つ方がいるかもしれませんが、(病院の立地によってその頻度は大きく変わると思いますが)、私の勤める大学病院では梅毒は極めてまれな疾患です。私個人としては年に1例診断するかどうかです。メラノーマは年に30-40例診ますので、(私にとっては)梅毒は稀な皮膚がんよりもさらに稀な疾患です。
皮膚科医として梅毒を疑うポイントをまとめてみます。
関連記事
ダニに喰われてうつる病気
クリスマスツリーのように出る皮疹
体中にブツブツができた+喉が痛い
2015dec27-2
庭のフキノトウが咲き始めました。この時期の開花は今まで経験したことがありません。街中でも庭先に梅が開花しているお宅がありました。フキノトウはてんぷらにしていただきました。口の中に春の香りが広がり、しかし時期的にはなんとも複雑な気分です。
2015dec27-1
生ハム完成 暖冬のため冷蔵庫保存が続き、熟成が早まりました。

“梅毒 手の平を見る” の続きを読む

くちびる(口唇、クチビル)が腫れた(2) 歯磨き粉による口唇腫脹

くちびる(クチビル、口唇、こうしん)が腫れる疾患はたくさんあります。高血圧の薬や補体欠損症などを除けば、まずは直前に食べた食物、クチビルに塗っているリップクリームや金管楽器のマウスピースやコートする松脂などを疑います。唇に付く可能性のあるものとして、歯磨きも患者さんに一旦止めてもらいますが、原因であったことはこれまであまりありませんでした。
関連記事 唇が腫れた(1)

何か月か唇が赤く持続性に腫れて治らない患者さんがいました。少し硬さもあり、口唇のまわりの粘膜も腫れていたので「肉芽腫性口唇炎、にくげしゅせいこうしんえん」を疑い、血液検査や肺のレントゲンなどでサルコイドーシスの病変がないことを確認してから金属のパッチテストや皮膚生検を予定しました。
2015DEC23
今年も生ハムを仕込みました。一部を燻煙してみました(パンチェッタになるか・・ならないだろうなぁ)。今年の12月は気温が高めのためか雨がちで外に干せません。

“くちびる(口唇、クチビル)が腫れた(2) 歯磨き粉による口唇腫脹” の続きを読む

私の病名はなんですか?

久ぶりに書評です。本は読み流すことが多いのですが、年に1-2度たくさんの附箋を張りたくなる本に出合います。
もちろん感銘を受けた本のみに起こす行動ですが、あとで自分の仕事関係で引用したいという業務的(せこい)な理由もあります。
ジェローム・グループマン(美沢恵子訳)の「医者は現場でどう考えるか」 原題How Doctors Thinkです。
一般書ですが、医師が誤診をしてしまう理由と患者側の予防法を実例を挙げて解説したりっぱな実用書(医学書)です。
ほとんどが医師側の要因ですが、正しい診断に持っていくためには患者さんの協力も必要であることが述べられています。
著者が本書を書いた動機は「自分で考えることを放棄し、判定システムやアルゴリズムに、自分に代わって考えてもらおうとする若い医師たちが実に多くなった」(あとがきより)からだそうです。
2015nov29

“私の病名はなんですか?” の続きを読む

上へ