日曜日から月曜日にかけて毎年恒例のお山の診療所に行ってきました。ドイツからもどり、たまった仕事であっという間に1週間が過ぎ、土曜日に東京で開催された皮膚病理の研究会に参加し、日曜の朝に登り始めました。今年は診療所の創設者のお一人である薬理学の名誉教授の先生と、ときどき行く焼き鳥屋さんのご主人と一緒でした。
コマクサは最盛期をちょっと過ぎていました
山頂から下山途中
風雪に耐えたダケカンバ
カテゴリー: 雑記帳
8th World Congress of Melanoma
メラノーマの会議も3日目が終わりました。ドイツに来てからずっと晴れています。初夏のような天気が続いています。こちらに留学していた先生のお話では、こんなによい天気が続くことは初めてだそうです。天気がよいと街のイメージはそれだけでよくなりますね。ハンブルグはいい街だなぁ。
ホテル前でブログ更新中 夕方6時を過ぎても日中のようです 9時を過ぎると夕方という感じでしょうか 今晩の風は昨日までと違って少し冷たく、なんとなく秋の気配を感じさせます
さて、この会議は3年毎に開かれますが、3年前とは内容がずいぶん変わりました。2年前には全くなかった(2年前というより40年間なかったのですが)メラノーマの新薬がどんどん出てきたからです。今回の会議では先日のシカゴで開かれたASCO(米国臨床腫瘍学会)で発表された内容の紹介のセッションも多くありました。多くはすでに知っている内容でしたが、復習になりましたし、ヨーロッパの先生たちがどのように新薬の効果について考えているのか、ということが少しわかって良かったと思います。新薬の登場に舞い上がらないように、慎重に評価し、使い方を決めていかないといけないと思いました。
国際学会は過去にお会いした先生との再会も楽しみのひとつです。5月末にソウルでお会いした韓国の先生方にもお会いできました。個人的な感想ですが、参加者の9割が西洋の方(表現が?ですか)ですので、黄色人種というだけで同郷のような親近感を感じます。韓国からの出席者10名程度、日本から10数名。ガラパゴス化しないように外に出ていかないといけないと思いました。
ドイツに来ています
ハンブルグで開かれるメラノーマの学会に出席するためドイツに来ました。前回は2010年のシドニーでしたから3年ぶりになります。時間が経つのは早いものです。前回は講演があったためストレス一杯でしたが、今回はポスター発表だけですので気が楽です。今は途中のベルリンにいます。最高気温は25度前後です。申し訳ないぐらいに気持ちのよい気候です。
載せようか迷いました 東ドイツから脱出時に亡くなった方々の慰霊碑です 四半世紀前の壁の崩壊の頃を思い出し、いろいろ考えてしまいました。
ASCO 2013 (2)
米国臨床腫瘍学会(ASCO)の3日目が終わりました。
メラノーマの新薬に関する発表は1000人以上の収容能力のある会場や、日本なら地方都市のコンサート会場になるような2-3階立てのホール(たぶん2000-3000人収容)が当てられてていますが、いつも満杯です。皮膚がんの治療に関する大きな動きを感じます。日本人の皮膚科医で参加しているのは私が把握している限りでは5名です(巨大な会場なのでお会いしていない方もいるかもしれませんが)。日本の癌治療学会に出席する皮膚科医は20名ほどですから、海外の学会であることを考えると5名という数はまあまあかもしれません。私は初めての参加です。以前は1-2人程度の参加だったようです。
さて、このブログの主旨とずれるかもしれませんが、ASCOへ出席する前の準備(宿泊、航空券など)について気づいたことを書き留めておきます。私自身が初めての参加ですので勘違いしている点があるかもしれません。
アメリカって感じでしょうか
マオです
乳母車が落ちてきた階段です(映画アンタッチャブルで)
フランク・ロイド・ライトが低予算で作った教会です 美しかった
フランク・ロイド・ライトのステンドグラス
攻撃された方は強くなり、しかし攻撃に依存するようになる?
これまで転移を起こしたメラノーマに効く薬は少なく、その効果も今一つでした。ベムラフェニブという舌をかみそうなお薬があります。30数年ぶりにアメリカで認可された新薬です。日本では現在治験中です。癌は同じ病名でも、患者さんごと、あるいは転移部位ごとに悪性度(増殖のスピードや転移する能力)はばらばらです。この40年間、癌はなぜ転移するのか、なぜ増殖が止まらないのか、といった疑問を明らかにするための研究が数多く行われ、多くの事柄がわかってきました。原因がわかれば、そこを止めてやれば癌を治すことができるかもしれません。メラノーマの細胞にもある確率で、増殖に関係するある遺伝子(BRAF)に変化が起きていることがわかっています。ベムラフェニブはBRAFが異常なメラノーマののみ、その増殖を止める薬です。BRAFに変異がない場合は効きません。細胞に増殖の命令を出す指令系統はたくさんがありますが、複数のルートの中で(途中)で、変な指令を出している奴が1人であれば、そこをたたけば増殖は抑制されます。
でも、癌細胞だってだだやられっぱなしにはなりません。癌細胞自身は「俺はがん細胞だ。みんなに迷惑をかけている。まことに申し訳ない。」なんて自覚していませんから、正常の組織のように、なんとか生き延びようとします。1本の司令伝達路の途中が切れれば、バイパスを作ろうと努力します。ある癌に対してよく効く薬が開発されても、しばらく使っていると効かなくなる(耐性:たいせい)のはこのような「がん細胞が何とか生き抜こう」とする努力によります。薬がなるべく長く効かせるにはどうしたらよいのか、というのが現在の新薬の大きな課題です。
ちょっと前の論文ですが、ベムラフェニブをメラノーマに使用するときに、効果が落ちてきたら一旦使うのをやめて、間欠的に使うと強い耐性ができなかったと(いつまでもだらだら使える)という面白い報告がありました。
Modelling vemurafenib resistance in melanoma reveals a strategy to forestall drug resistance
早朝散歩
カモの親子 みんなに大事にされています
ミシガン湖 海のようです
高層ビルのてっぺんが雲に隠れます
シカゴに来ました
米国臨床腫瘍学会(ASCO)に出席するためシカゴに来ました。ASCO(アスコ)は癌の診療に関する世界最大の学会です。毎年シカゴで開催され(シカゴが米国の中央部に近く集まりやすいからとのことです)、4万人ほどが集まります。毎年、治療方針が変わるような大型(多数の患者さんで検証した)の臨床試験の結果が発表されます。インパクトの強い順に発表形式が変わりますが、特に重要な研究は本会議場で発表されます。プレナリーと言います。毎年数題程度が選ばれますが、2011年は5題のうちの2題がメラノーマの新薬に関する発表でした。肺がん
や消化器がんや婦人科がんや血液のがんなどが圧倒的に多い中で、メラノーマがベスト5に入ることはとてもめずらしいことです。その後この2題で発表された薬はすぐに米国で認可され、治療選択のトップに踊り出ました。日本でも臨床治験が行われています。今年はどんな発表があるのでしょうか。たぶん日本でもいくつかニュースになるかもしれません。楽しみです。
シカゴ美術館前 暑いです 突然のものすごい夕立にたくさんの方が美術館に逃げ込みました
ホテルはループという最も古い地域にあります ガス灯が健在です
味のあるビルが林立しています
ソウルにいます
今週末はソウルにいます。韓国の皮膚病理組織学会が呼んでくれました。皮膚科の専門医を取るための研修と研究会を兼ねた会議です。時々ジョークも飛び交う楽しい会でした。朝早くから70例の標本をまず自分で見ておいてから検討会と教育講演が行われます。みんなまじめです。若い先生たちが一生懸命勉強する姿はいいですね。英語もみんな流暢です。おいて行かれないように頑張らないといけないと思いました。ちょうど20年前に私の勤める病院を訪問してくださった韓国の重鎮の先生ともお話しができました。20年。言い古された言葉ですが、過ぎてしまえばあっという間ですね。
今回の準備のために、若いころに勉強したいくつかの教科書の中でしばらく目を通していなかったものをもう一度読みなおしてみました。うーん。理解できるようになった部分が少し増えた感じもしますが、ちょっと自信を失った部分もありました。ついでにamazonで絶版になっている教科書を中古で何冊か仕入れました。いずれも20年以上前の出版物です。
さて、ソウルは緯度が高いので涼しいのかと思っていましたが、日本と同じように昨日と今日は暑く、初夏のようです。ただ風はとても気持ちいいです。
関連記事:アッカーマン先生と皮膚病理
早朝の市場。散歩の途中に寄りました。
働く車(バイク?)
年代ものです。結構美しい。
検索ワード
ブログにはアクセス解析というツールがあって、日々のアクセス数や検索単語など見ることができます。普段参照することはほとんどありませんが、先月,当ブログを訪問するきっかけとなった検索ワードは何が多いか見てみました。
1.蜂に刺されたらどうするか?
2.爪の黒い線
3.手の皮が(丸く)むける
5.口唇が腫れた
6.おでき
6.手首のしこり
7.口角炎
8.酒さ
9.アレルギー(納豆、毛染め、ふきのとう)
10.血が止まらない
11.カバキコマチグモ
12.とびひ
13.メピレックス(傷に張る被覆剤です)
14.妊娠とステロイド外用剤
15.プリックテスト
苺の花 子株が外へ外へと移り、ほとんどの株が路上に
ブルーベリーの花
越冬したハーブが領地拡大競争を開始 左からローズマリー、オレガノ、タイム、ミント、パクチー、ルッコラ(白い花) 個人的にはパクチーにがんばってもらいたい
皮膚がんの統計
国内における直近の皮膚がんの発生と死亡者を調べる必要があって、ネット上で検索しました。皮膚がんのような希少がん(発生の少ないがん)の公的な疫学情報を単純にgoogleやYahooなどの検索サイトで探すのは結構大変です。いろいろなサイトがヒットする割には目的の情報にたどり着きにくいのです。例えば、皮膚がんx発生率、などで調べていただくとわかると思います。
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菜の花も最後です 夕暮れにできた影が水墨画のようでした
良い季節限定の書斎
ミツバチが来るとうれしい
ダニと牛肉と抗がん剤
アレルギーを含め、免疫反応は物質のとても小さな部分(抗原)を認識して発動します。その小さい部分が同じなら、まったく違う物質でアレルギーが起きてしまいます(交叉といいます)。例えば桃を食べて息苦しくなった患者さん(口腔アレルギー症候群:OAS)はもともと白樺の花粉のアレルギーがあり、白樺の花粉と桃に共通の抗原成分があったために桃で症状がおきる、などです。今回はセツキシマブ(商品名アービッタクス)という大腸がんや頭頚部がんのお薬にアレルギーを示す患者さんは牛肉や豚肉にもアレルギーがあったというお話です(高橋仁ほか、臨床皮膚科67(5)、2013)。
週末は京都に呼んでいただきました。ついでにゴッホ展と壬生狂言を見てきました。
京都は新緑に包まれていました。良い季節です。