母斑(ぼはん) 母に責任はない

母斑(ぼはん)は一部の皮膚の生まれつきの異常・・・あざ、のようなもの・・・の意味です(医学的な定義にはいろいろあって、もっと複雑ですが、簡単に言えば)。

病名としては、

色素性母斑(黒:ほくろ)、扁平母斑(茶色:へんぺいぼはん:コーヒー牛乳色のシミ)、脂腺母斑(黄色:しせんぼはん:赤ちゃんの頭部にできる生まれつきの部分的な脱毛としてみられる)、太田母斑(青:おおたぼはん)・・・・などがあります

赤ちゃんに起きた何らかの異常を母親のせいにする・・そんな時代がありました。“母斑”という言葉は明治に西欧の医学を輸入して、和訳して長い間使われてきた言葉であり、皮膚科医には使い慣れた用語です。とくに“母親からの遺伝”という意味で使ってる皮膚科医はまずいないと思います(個人の印象です)。だから、病名に“母”という文字が入っているのはよくないのではないか・・・という意見は昔からありました。

これらのことを歴史的に詳細に検証した素晴らしい論文があります。

村田洋三、「母斑」という用語について、皮膚の科学2018年6月号

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春と夏がいっぺんにやってきた

鹿だったようです。円山の緑が美しいです。

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キクラゲサイン

これで鑑別はOK! ダーモスコピー診断アトラスー似たもの同士の鑑別と限界ー(MB Derma(デルマ)) ムック – 2019/4/11

ダーモスコピーとは皮膚科で使用する拡大鏡で、偏光レンズが入ったルーペです(いろいろな機種があります)。ホクロの診断などに用います。保険も通っています。私がダーモスコピーによる診断法の存在を知ったのは30年ほど前のことです。私のお師匠さんがある論文を紹介してくれたのが始まりだったような記憶があります。皮膚科医は100年ぐらい虫眼鏡で皮膚を観察してきたので、偏光レンズを加えたところで大きな変化(新しい所見の発見)が起きるとは最初は思いませんでした。でも、偏光をかけると見たことのない模様がたくさん見えたのです。皮膚科学にとっては久しぶりに、そして一度に、たくさんの形態学的所見が目の前に現れたのです。見えたものに特徴があれば、適切な名前を付けたくなります。身の回りで近似している物の名称を使うと共通認識が得られやすくなります。新しい名前を考えるのは楽しい作業です。

基底細胞がん(きていさいぼうがん)という皮膚がんがあります。そのがんの端に薄茶色の帯が紅葉の葉やオーロラのように取り巻く所見が見えることがあります。昆布のようでもあります。もっと言うとまさにキクラゲだと思ったわけです。キクラゲサインだ、と提案しましたが、軽く却下されました。形態学上の名称には世界中の医師が共通して思い浮かべられる名称が必要なのです。現在はleaf-like structuresという名称で呼ばれています。

主にヨーロッパと日本の少数の施設で始められたこの検査によって発見?された多くの所見について、それぞれの施設でいろいろな名称がつけられて解析されていました。勝手勝手に付けられた名前を統一するため、2000年代初頭にローマで会議が行われました。それぞれが思い入れのある用語を差出し、相手の提案する名前に譲歩し、そして日本で名づけられた名称のいくつかも国際的に認められました。その後、さらに所見の意義の解析や名称の統一が進みました。インターネットの進化がそれを可能にしたのではないかと個人的には感じています。2000年ごろには(記憶があいまいで、間違っているかもしれませんが)送られてきたA4版カラ―画像をモニターに表示するのに30分以上かかったような記憶があります。それでも遠く離れた国間で、ほぼリアルタイムに同じ画像を見ながら議論できるということは1990年代には困難でした。

個人的には、自分が最もしっくりくる近似物を脳内に格納していくことが形態学的診断学では有効だと思っているので、”キクラゲサイン”は(私の頭に中には)まだ生き残っています。今でもこの所見が見えると「やっぱりキクラゲだよなぁ」と思うわけです。ダーモスコピーの書籍を編集させてもらいました。4/11発売予定です。

爪水虫(爪白癬)の治療 2019年春

爪の水虫(爪白癬、つめはくせん)はなかなか治しにくいタイプの水虫です。

長い間、爪白癬はイトラコナゾールやテルビナフィンの内服で治療してきましたが、この数年の間にしばらくぶりに新しい薬が出てきました。1つは塗り薬(外用薬)のトリアゾール系薬エフィナコナゾール(商品名:クレナフィン)とルリコナゾールの高濃度製剤(商品名:ルコナック)です。もう一つは飲み薬(内服薬)のホスラブコナゾール L-リシンエタノール付加物(商品名:ネイリン)です。関連の講演会を何回か聞く機会があったので2019年3月31日時点の状況をまとめてみました。何回かの講演内容を参考にしていますが、この記事に間違いがあれば私に責任があります。

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生命は海に生まれ、陸に上がった だから舌癌は白くふやける

口の中のただれ(潰瘍:かいよう)のために皮膚科を受診する方は少なくありません。舌癌は表面が白くふやけていたり(白斑症はくはんしょう)、赤くただれたように見えます。白くふやけたり、赤くただれても癌とは限りません。癌以外にたくさんの病気があります。でも30年以上皮膚科をやっていて、舌癌を疑って歯科口腔外科に紹介した患者さんは2‐3例しかありません。今回はなぜ口の中のがんは白くふやけるのか?です。

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もう1‐2回いたぶられるだろうけど、間違いなく、春の予感がしてきました。東京から出張して来た方にはわかんないだろうなぁ。気温が+になったんだ。

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口内炎が治らない 皮膚科でも対応できます

比較的大きな病院の外来の入り口には、「どの科にかかったらよいか?」ということを案内する窓口が用意されています。看護師長レベルの方が日替わりで対応していることが多いと思います。どの科にかかるのがベストかを決めなければいけないので総合診療科的な診断能力とその病院にある各科の得意分野などを把握している必要があります。重要な役割です。

口内炎は症状から大きく2つに分けると、1㎝以下の丸く白く深い口内炎(アフタ性口内炎)とそれ以上の大きさの(形が丸くない)ただれに分けて考えるといいと思います。前者はけっこうよくあって、1-2週で治ります。治ってしまうようなら問題ありません。医学生に「アフタ性口内炎と言えば?」と聞くと「ベーチェット病です」とすぐ答えます。・・・がベーチェット病は稀です。もっと注意しなければいけない口内炎は後者です。口蓋(こうがい:口の中の天井の部分)、頬の粘膜、歯肉や舌がただれてなかなか治らない。まず皮膚科医が考える病気は頻度順(よくある順)に・・・天疱瘡、扁平苔癬、薬疹>>>膠原病、免疫不全>>>>>癌、です。最初の、天疱瘡、扁平苔癬、薬疹は皮膚科が扱う病気です。口の中のただれで治りにくい場合は皮膚科も候補にいれていただくとありがたいです。

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朝が明るくなってきました。

急にしもやけ(シモヤケ、凍瘡)になった 高齢の女性

昨年末の冬の入りは、なんとなく暖冬でしたが、ちゃんと帳尻を合わせるように年明けから寒くなりました。リスクとは悪いことが起きる確率ではなく、良いことと悪いことの幅を示しているので、悪いことがあるときっと良いこともあります(いつ良いことが起きるかわかりませんが)。逆もありです。

今回は、今までなんともなかったのに、一昨年から、去年から、今年から、寒くなると手の指に痛痒い丸い赤いできものができるようになった。シモヤケでしょうか?という患者さんが時々います。60歳以上の女性・・・・が多い。

シモヤケは普通の病気ではありません(個人的な意見です)。シェーグレン症候群などの膠原病が隠れている可能性があります。シェーグレン症候群は”抗核抗体”が陰性でも否定できません。抗SS-A抗体の有無を調べないとわかりません。

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しもやけになった!痛くてかゆい冬の皮膚炎 ・・・以前は春になってもシモヤケがあれば膠原病を疑え!と教わりましたが、冬にできても変だと思います。この記事訂正します。

シモヤケと縦横縦横の亀甲文字

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今月の札幌は晴れる日が多く(だから寒いのですが)、気持ちがいいです。近くのスキー場です。

早朝の駅も好きですが、空港もいい感じです。羽田には雪がありません。寒いところに住んでいると幸せの閾値が下がります(幸せ度が高まるということです)。

 

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平成30年大晦日

今年も最後の日になりました。朝は近所の日帰り入浴施設”お殿様の湯”に入り、露天風呂で雲一つない空を見上げていたら、入ってきたおじいさんに「今日は寒いねぇ」と声をかけられました。「晴天ですからねぇ」と答えたら、「そーだねぇ」とおじいさん。まったりと、そして午前中に入浴している罪悪感を少し感じながら「しわせだなぁー」と思ったのでした。

さて、今年を振り返ります。

1月 新年のご挨拶と故大野乾先生の書籍をもじって「大いなる仮説」でパンダの模様とシャムネコの模様について。今一つでした。

2月 札幌2年目に入りました。アレルギーの原因検査のパッチテストで何が調べられるのか、について書きました。パッチテストはかぶれや薬疹の原因を調べるとても優れた検査ですが、セットになっていない日常品(化粧品、石鹸類など)について調べるときは大変手間がかかりますが、とても安い検査です。21種まで1個160円、22種以上検査した時は3500円(これに個人の支払い率、通常3割をかけると個人負担は1種類当たり50円ちょっとになります。特に皮膚科医が常勤している機関病院以外の皮膚科でこの検査をやっている皮膚科の先生は本当にご苦労だと思います。

3月 教授の新任や退官の記念学会で発表することの怖さや大切さについて個人的な感想を述べました。紅白は星野源のSUNだ。このヒトぐらい働いたらよい仕事ができるだろうな。

4月 Visual Dermatologyという皮膚科の雑誌の4月号は毎年新人向けの特集を組みます。今年はありがたいことに編集を依頼いただきました。私の施設のスタッフの総力を挙げて”皮膚科の問診術”と題して企画しました。抗PD-1抗体による癌の免疫療法が癌治療を変えて4年経ちました。どのような条件を持つ方が薬が効きやすいのか?という点が調べられています。肥満の男性は新薬が効きやすいのではないか?という記事を紹介しました。

5月 東京に次いで二番目に札幌にできたメラノーマ患者会に呼んでいただきました。とても良い経験になりました。新しいお薬の開発を行う上で重要な治験の探し方について書きました。毛染め剤が合わなくなってしまったときの代替品について書きました。

6月 毎年6月初旬は皮膚科最大の学会と世界最大のがん治療の学会ASCOが重なって開催されます。どちらも重要な情報を得て勉強できる会議です。あわただしいですが今年も両会議を楽しむことができました。昨年末に抗PD-L1抗体という3番手のがん免疫療法剤がメルケル細胞癌という、これまた非常にめずらしい皮膚腫瘍に保険適応になりました。メルケル(Merkel)細胞がんについて書きました。

7月 紅白はミルねーさん。懐かしい。がん患者さんにはいろいろな皮膚のトラブルが起きます。癌の雑誌に皮膚のトラブルの見方や対応について書きました。夏に出やすい皮疹について書きました。北海道の夏は美しく、そしてそれを楽しめる期間は限られています。今年もなんとか2回、海で遊ぶことできました。天売は天気が悪かったのですが行ってよかったです。よい思い出になりました。

8月 紅白はPerfumeだ。毎年映像がすごいなぁ。

皮膚炎の形が幾何学的なときは外からの原因(かぶれなど)を疑う、という記事を書きました。

昨年に続いて3回目の積丹半島カヤックに出かけました。陸路ではいけないシシャモナイの滝が落ちる海岸に上陸できました。今回はニューヨークから参加のご夫婦と一緒のツアーでした。来年はお子さんたちを連れてくるそうです。気にいったんですね。昨年はシンガポールからカップルが参加されてましたので、ニセコだけでなく、積丹も世界から注目されつつあるのかもしれませんね。本当にいいところなんです。紅白ではけん玉成功。ギネス記録。セカイノオワリ、サザンカだ。オリンピックはずいぶん前だったような感じがする。

今年もお山の診療所に行けました。昨年より軽く登れたのですが、下山時に登山口手前の平らなところでこけました。頭の中と足腰の間のギャップが広がっているようです。

9月 WHOが出している皮膚腫瘍の分類の改訂4版が出ました。メラノーマとほくろの項に参加させてもらいました。何年か前にメラノーマの病理診断についてソウルで話さないかと、当時の皮膚病理の理事長のお誘いを受けたのがきっかけです。相当のストレスでしたが、何とかこなした後には一つのハードルを越えたような達成感がありました。その後、その時に知り合った韓国の先生方と親しくなり、太田(テジョン)に呼んでもらったり、今回のオファーに繋がりました。出会いは大切です。

お薬手帳を病院に持って来てもらうことの大切さを書きました。大きな揺れがあって、北海道は停電になりました。病院には緊張が走りました。関係者のサポートに感謝します。電気がないことの大変さを実感しました。停電の街はとても静かでした。電力が回復して横断歩道に音楽が流れ始めたときに現実にもどったような不思議な感じがしました。多くの方が被災されました。お見舞い申し上げます。

紅白はサブちゃんの祭だ。

10月 ヨーロッパのがん治療学会に行きました。突然訪問したミュンヘン大学皮膚科で退官寸前の教授とドイツ皮膚科学会のレジェンドにお会いすることができ、ご著書をいただきました。一緒に行った友人に、(ちょと大げさなたとえですが)アリアンツ・アレーナに見学に行ったら、偶然廊下でベッケンバウアーに会い、彼にサイン入りのユニフォームをもらったみたいなもんだ、と言われました。紅白は松田聖子だ。若いころ(失礼)と歌い方が同じなのがすごい。

ずっと治験でかかわってきたチェックポイント阻害薬の開発の始まりを見つけたお二人がノーベル賞を受賞されました。治験を始めるときに関係者で集まったときの会議の熱さを思い出しました。

11月 顔の皮膚がんを色からから解説しました。フレデリー・マーキュリー、ボヘミアンラプソディはよかった。紅白は椎名さんと宮本さん。かっこいいなぁ。曲の終わりに椎名さん「良いお年を」でしょうか。ユーミンはひこうき雲からやさしさに包まれたなら。小さい頃は神様がいて・・・眼に映るものはメッセージ。うん、いい。次は星野源。

12月 記事が書けない月になりそうだったので天皇誕生日を挟む連休になんとか、仕事による手荒れについて書きました。米津さん、生の声が聞くことができたと家族が盛り上がっている。いい曲だ。次にMISHA、うまいなぁ。ゆず。そしてうわっ布袋さんだ、石川さゆり、天城越え。嵐、そしてサザン。勝手にシンドバット、懐かしい。なんとか精いっぱい生きたな、と思ったので、今年はまずまずとします。明日から来年だ(あたりまえだ)。

手荒れとお仕事

皮膚科に手荒れの患者さんがたくさん来ます。手全体がカサカサして、指先がひび割れているけれど、赤みやかゆみがなければ、お湯と洗剤による皮膚の保湿成分の流出によるものと考えます。これは頻回に手を洗ったり、素手で洗剤をいじっていれば誰にでも起きることです。でも手が赤く、かゆければかぶれが起きています。家事で起きるこ場合はなんとか予防も可能ですが、現在従事している仕事が原因の場合はなかなかやっかいです。仕事は生きていくための生業だからです。今回は職業による手荒れについてです。
参考:Monthly Book デルマ、2018年12月号の特集(達人に学ぶ“しごと”の皮膚病診療所“(産業医大 中村元信先生編集)より
よし、冬がきたぞ、・・・・と。まだ余裕があります。

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欧州臨床腫瘍学会(ESMO) 2018 ミュンヘン

ヨーロッパでがん治療に関する最大の会議がESMOです。今年はミュンヘンです。初めて来ました。主にメラノーマのセッションに出ています。どんな病気でも同じですが、新しい治療薬が出てくれば、どちらがいいのか、再発したらどの薬に変えたらいいのか、効果はどうか、副作用は?・・・といった疑問がたくさん出てきます。治療する患者さんの数が増えてくれば、だいたいの傾向が見えてきますが、最初は手探り状態です。今回のESMOでも、そのような疑問に対する答えになりそうなデータが出始めていました。新薬の治験の結果もちらほら。

いいフレーズだ、と思った。

晩秋ですね。札幌よりちょっと寒いけれど、晴れていて気持ちいいです。