皮膚科には外用剤や内服薬が効かない全身の皮疹で悩む患者さんが毎日来ます。
病気はおしなべて原因がもしわかれば、それを取り除くことができれば軽快します。極論を述べれば、原因の除去のみで治療が必要ない疾患を診断できるかどうかが医師の腕のみせどころです。薬を処方しないので病院の経営にはマイナスです。
尊敬する北里大学名誉教授の西山茂夫先生の言葉があります。まず”中毒を疑え”です。中毒とは薬物を含めた化学物質を指します。公害も含みます。薬物性であることを見逃すと、難しい遺伝性や代謝性疾患の鑑別に入り込み(間違った診断の袋小路に迷い込む)、多くは原因不明の疾患になってしまいます。水俣病などの公害の原因究明の経緯がその例です。著名な教授達が大事な化学物質を見逃し、遺伝性疾患などの診断学の袋小路に迷い込みました。原因不明の熱も、原因不明の皮疹も、原因不明の肝障害も、原因不明の腎障害も、原因不明のしびれも、最初に疑うべきは化学物質であり、多くは常用薬、漢方薬、健康食品です。やめる順番は命の維持に関係ない順であり、健康食品や漢方が最初にやめるべき候補に挙がります。
今回の紅麹による腎障害を最初に疑った日本大学の阿部教授の気づきは素晴らしいと思います。
ちなみに西山茂夫先生は中毒が否定されたら、次に感染症と癌を除外するようにと述べておられます。アレルギーやリウマチなどの膠原病や代謝性疾患や遺伝性疾患などは最後の鑑別疾患群です。
批判を受けている最中の小林製薬に対して現時点であれこれ言うのはずるいかもしれませんが、キズドライ(キズは渇かした方が早くなおる・・という誤解 日照りの田んぼに草は生えないのですが・・・)など、なんとなく一般の方がよさそうと思うようなアイデア?商品を出す企業文化には以前から懸念を感じていました。コレステロールが高いならコレステロールを下げる(安全性が厳しく担保されている)薬を病院で処方してもらえばいいと思いますが、きちんと評価されていない商品に手を出すのはなぜなのでしょう?病院で処方される本当の薬に頼らず、なんとなく副作用の少なそうな製品で健康になろうと思う気持ちはちょっとわかります。でも、病院で処方される薬も薬局で簡単に手に入る健康食品も化学物質なんですがね。健康食品の広告はTV、新聞、ネットで重要な資金源であり、今回のような事件が起きないと検証記事を出しにくいのでしょうね。トクホと機能性表示食品の表示も紛らわしいですね。安全性が担保されていない商品にお上はお墨付きを与えてよいのかと日々思います。