週末は癌の会議(ESMO asia)でシンガポールにいました。メラノーマに対する薬剤として開発された免疫チェックポイント阻害薬(自分の免疫反応を負に調節する機能を抑える薬:つまりブレーキを効かなくしてアクセルをふかして免疫を強くして癌細胞を攻撃してもらおうという薬)は、その後、メラノーマ以外の癌にも使われるようになりました。
今回のお題は、免疫療法が効きにくい状況、冷たい腫瘍(cold tumor)についてです。
朝の散歩で植物園に来ました。バオバブのオブジェ、結構いいです。
熱帯の夜を有名なホテルのわきを通って帰ります。
町中が完全にクリスマスです。
免疫チェックポイント阻害薬(自分の免疫反応をマイナスに調節する(抑える)機能を抑える薬:つまりブレーキを効かなくしてアクセルをふかして免疫を強くして癌細胞を攻撃してもらおうという薬)によって強くなった免疫はがん細胞だけでなく、正常の臓器も攻撃してしまうので、いろいろな自己免疫疾患(じこめんえきしっかん:自分の免疫が自分を攻撃してしまう)が起きます。良いこと(癌が小さくなる)と悪いこと(薬による副作用)の出方は個人個人で違います。両方出る方、良いことしか起きない方、そして残念ながら悪いことしか起きない方もいます。良いことが起きそうな方を事前に予測するマーカー探しが世界中で行われています。効く場合と、効かない場合とで何が違っているのか?ということが少しずつ分かってきました。
本題に入ります。表題の「冷たい腫瘍:cold tumor」とは・・・
免疫チェックポイント阻害薬として現在承認されているのはオプジーボ、キイトルーダ、ヤーボイの3つです。これらの薬は直接癌細胞を攻撃するわけではありません。自分の免疫(主にリンパ球:がん細胞を攻撃する兵隊)に活を入れて攻撃してもらう薬です。つまり、現場(がん)にリンパ球(兵隊)がいないことには効果は出ません。このリンパ球が現場にいない(少ない)腫瘍を冷たい腫瘍、cold tumorと呼んでいます。現場にリンパ球がいない、免疫チェックポイント阻害薬を使っても、活をいれるべき兵隊がいない、がんを攻撃する戦争(炎症)が起きない、癌は小さくならない・・・ということになります。炎症がおきると(ばい菌やウイルスの感染の時に起きます・・・本来の免疫の仕事です)、赤くなり、腫れて、熱くなります。リンパ球がいない状態は熱くならない状態なのでcoldです。現場(がん細胞とその周囲)に兵隊を呼び込む方法が模索されています。薬が効きやすい状況をどうやって作り出すか、ということも大事なのです。