2020年大晦日(3)

1年を振り返っています。

7月 紅白はJUJU。そしてエールから、福島行進曲、長崎の鐘。7月は記事が書けませんでした。一体何をしていたのかスケジュールを確認しました。遊んでました。30年ぶりに知床を歩きました。生まれて初めて道路上をゆったり歩くヒグマを見ました。でかかったです。知床の散策路には人気がなかったので、スマホから音楽を流して歩きました。ウトロのウニはとてもとてもおいしかった(ウトロ漁協婦人部食堂:おすすめです)。尻別川上流でキャンプして釣りをしたり、積丹でキャンプしてカヤックしたり。 紅白はGreeeN。顔が出てる。キセキ、やっぱりいい曲だな。そして嵐。

自然のハッカの葉いっぱいの半露天風呂にいれていただいた

8月 同じ種類の蚊に刺されても反応が違う理由について書きました。紅白はLISAの炎。お盆は松本で自然を楽しみました。いつも賑やかな川が、やはり静かだった。お山の診療所(2018,2015、2013,2011)も今年は閉鎖で、いけませんでした。

9月 紅白は髭男。記事は外用剤を混ぜることの問題を2回にわたって書きました。混ぜることは利便性が増す(種類の違う薬を2度塗りしなくてよい)場合もありますが、(私が個人的には)受け入れにくい外用剤の混合処方をよくみます。たとえば抗真菌剤(水虫のくすり)とステロイド、もっとすごいのは水虫の薬+抗菌薬(ゲンタシンやアクアチムなど)+ステロイド、これにさらに非ステロイド系の消炎剤、なんてのもあります。とくに抗菌外用剤の使い方が緩すぎるのではないかと思います。耐性菌(薬に効かなくなる菌)が増える危険がないかとても心配です。ご批判があれば是非お寄せください。

2020年大晦日 (2)

1年を振り返ってます。

4月 紅白はディズニーメドレー、ディズニーランドからだ。記事はCOVID19による皮膚症状について書きました。皮膚に編目模様やしもやけ様の皮膚症状が報告されました。これらの症状は皮膚科的には血管がつまる、あるいは血管の壁が傷む免疫現象がウイルス感染によっておきることが予測され、身構えました。その後解析がすすみ、普通のウイルス感染(はしかなど)で多いブツブツ型が多いことがわかってきましたが、じんましんなどもあり、(とくに特別は皮膚症状はなく)熱+全身の皮疹の患者のすべてがCOVID感染の可能性があると思うようになりました。また、手荒れについて書きました。利き腕と反対の手の方があれている場合は注意が必要です。

5月 紅白は福山さんが出て、すぐに合間のニュースになりました。記事は、古本屋で見つけた「日本の色」(大岡信 朝日選書(1976)版講談社(1980)版)という本の解説や「色」について思うところを書きました。近くの山によく行きました。

6月 リアルな研究会・学会・講演会がほとんどなくなり、代わりにWEB講演が増えてきました。記事は、マダニに喰いつかれたときの対応や注意する感染症についてまとめました。今年はマダニに喰いつかれて受診した患者さんがたくさんいました。1週後にまた来た方もいました。猫が家に持ち込んでくるのだそうです。紅白は瑛人の香水。そしてPerfumeだ。結成20年だそうです。すごいなぁ。そしてBABYMETAL。そして郷ひろみ。

 

 

2020年大晦日(1)

大晦日になりました。紅白歌合戦も始まったので今年を振り返ります。

1月 お供え餅の写真で新春の挨拶だけの記事で終わってしまった。高麗大学から交換留学生を迎えたり、治療方針が大きく変わった乳児血管腫(イチゴ状血管腫)のミニ研究会を開いた。映画はいつものキノでリンドグレーン。 長靴下のピッピなどを書いた童話作家の伝記。 美しい映画だった。 ★★★★。 息子ラッセを演じた子役の演技が素晴らしかった(ドキュメンタリーのようであり、セリフもしぐさも完ぺきだった)。子供が怒って物を投げるときは、(大人と同じように)きちん?とした心の怒りや強い葛藤があるんだ、ということに今頃気づいた(映画は登場人物と一体になれるからわかるんだね)。

霜から生き延びた庭のハーブを全部ぶち込んで無水鍋

2月 手や指が荒れて、細かいひび割れができたときはポリウレタンフィルム(防水フィルムとして売っている)の絆創膏やシールをおすすめする記事を書いた。安く買える百均での購入を勧めていたけれど、一時材質の異なる製品が目立ち(患者さんには袋の裏の材質名を確認して買っていただくようにお話ししていた)、ポリウレタンフィルム製がなくなってしまった。でも夏過ぎからまた店頭でみかけるようになり安心した。高知に講演で呼んでいただいた。これが今年最後の空路での出張になるとは思ってもみなかった。紅白はさだまさし。

3月 感染症の世界史、という本を紹介し、COVID感染対策についてちょっと書きました。振り返ればまだことの重大さを自分自身はあまり認識できていなかったと思います。レゲエの神様 ボブマーレーとメラノーマについての昔の記事のリバイバルを載せました。紅白は鈴木雅之。大滝詠一は今年よく聞いた。夢でもし逢えたら ・・・逢えるまで眠り続けたい・・・

監修した雑誌が発刊されます

研究室の仲間たちと総出で協力して書き上げました。皮膚がんの疫学や症状、治療法、(メラノーマで開発が始まった)新しいがん免疫療法の最新の情報やサンスクリーン剤(日焼け防止)などについてまとめました。今年の記念になる仕事になりました。明後日(2020/12/30) 発売です。

美容皮膚医学BEAUTY 第25号 特集:皮膚がんの診断と治療 

【特集にあたって】

この10年間で本邦の皮膚がん登録者数は年間15000人から30000人に倍増しています。主な要因として高齢化が疑われています。したがって、この増加傾向は今後20年間続き、患者数はさらに1.5倍ほどに増加すると予測されています。一方、皮膚がん死亡者数は年間2000人程度であり、すべての臓器のがんのなかでは最も5年生存率が高く、皮膚がんの90%以上は手術のみで完治します。したがって早期発見が重要です。

皮膚がんの最も重要な原因は長期の紫外線曝露であり、したがって皮膚がんの多くは顔面などの露出部に発生します。一般にシミと呼ばれる疾患の多くは日光黒子や脂漏性角化症といった良性腫瘍ですが、悪性黒色腫や基底細胞癌、ときどき光線角化症(SCC in situ)が紛れ込んできます。また、悪性黒子の30%は日光黒子(シミ)と同居して認められます。また、黒や褐色の病変を気にする患者さんは多いですが、頭頸部に限れば、じつは赤い腫瘍のほうが悪性である確率は高いと思います。顔面の赤色を呈するがんの代表は光線角化症(表皮内がん)と有棘細胞癌ですが、悪性黒色腫と基底細胞癌も色を欠くと赤色を呈します。レーザーや凍結あるいは焼灼などでは組織診断ができないため、施術前に正確な診断と患者さんへの説明、画像の記録が必須です。また、患者さん自身によりスマートフォンなどで皮膚病変を記録しておくような啓発も大切です。時間の経過で変化した所見が観察できて診断上有用です。さらに、患者さんがシミの治療を希望して受診された際は、他の部位、とくに頭頸部全体の診察を合わせて行うと皮膚がんの早期発見に役立ちます。

本号では、顔面に好発する皮膚がんの特徴、診断法としてのダーモスコピー、予防としてサンスクリーン剤を取り上げました。また、2014年、免疫チェックポイント阻害薬のニボルマブの世界初の承認後からがん免疫療法の新しい時代が始まりました。皮膚がんはがん免疫療法が効きやすい因子の1つである腫瘍遺伝子変異量が多く、全臓器がんのなかで上位を占めています。そのため皮膚がんはがん免疫療法を開発するうえで重要な位置を占めています。そこで、現在急速に進化しているがん免疫療法の新知見についても紹介しました。

この特集が読者の皆様の診療に役立つことを願っております。

宇原 久(札幌医科大学 医学部 皮膚科学講座 教授)

【目次】

〔特集〕
1.皮膚がんは増えているのか
2.顔のシミや色素細胞母斑にはどんな疾患が隠れているのか―とくに日光黒子と悪性黒子、色素細胞母斑と基底細胞癌との鑑別点について―
3.日光角化症の診断と治療
4.有棘細胞癌の診断と治療
5.基底細胞癌の診断と治療
6.悪性黒色腫(掌蹠・爪・粘膜以外)の診断と治療
7.悪性黒色腫(掌蹠・爪・粘膜)の診断と治療
8.皮膚がんと腫瘍免疫
9.皮膚悪性腫瘍の薬物療法の進歩
10.紫外線から皮膚を守る―サンスクリーン剤―
11.ダーモスコピーの基礎

髪の毛がぬける 頭皮を観察する トリコスコピー

皮膚科では主に黒や茶色のシミ、ホクロ、癌、の診断に拡大鏡を使います。現在は偏光レンズとライトがついたルーペやカメラで診察します。ダーモスコピーといいます。3割負担の方で1回240円、1割負担の方で70円ぐらい、とても安い検査です。

この検査はホクロ以外にも、いろいろな病気の診断に有効です。(保険収載されていないので患者さんの負担はありません) たとえば、

・・・爪の甘皮の出血(黒い点にみえる)、甘皮の後ろにループ状の血管拡張爪などがあれば手の血行が悪いことがわかります。手指が冷たく、紫や白になることをレイノーといますが、膠原病(こうげんびょう:自己免疫疾患じこめんえきしっかん・・・自分の免疫が自分を攻撃してしまう病気)である全身性エリテマトーデス(SLE)、リウマチ、多発性筋炎・皮膚筋炎、強皮症、シェーグレン症候群、などを疑うサインになります。

・・多くの爪に薄い茶色の線が入っていて手が冷たい場合も上記疾患の可能性があります。

・・・乾癬は赤い小さい点々が規則正しく並んでいます(拡張した血管をみています)・・・湿疹との区別に使えます。

まだ、たくさんありますが、前置きが長くなったので本題の脱毛の観察へ

以下、本記事とは関係ありません。『スペシャルズ! ~政府が潰そうとした自閉症ケア施設を守った男たちの実話~』/9/11(金)公開

「笑顔を忘れちゃだめだよ」・・素晴らしい作品でした。ラストシーンもいい。おすすめです。☆☆☆☆

毛の観察にダーモスコピーを使う方法をトリコスコピーと呼ぶ場合があります。

・毛の根本が先より細い(ビックリマーク!に似た毛):円形脱毛症の活動期(まだ抜けが進んでいる・・・脱毛部分がまだ広がる可能性が高い)
・産毛が生えてきていて、産毛だが根元が先より太い・・円形脱毛症の活動が終わり、攻撃のない毛が生え始めている・・・「治り始めてきたようだね」と患者さんにお話しできます。
・小さい出血点が散らばっている・・・抜毛しているかもしれない(抜毛症:思春期とその前後のお子さんなら小児科の先生と相談する)
・点・・以下が多いですがこれだけで区別できないことも結構あります。でも参考にはなります。
黄色:油の黄色:男性型脱毛、 角化物の黄色(角栓):円形脱毛症
黒:壊れた毛(半分は円形脱毛症)
白:一部なら正常。多数あれば瘢痕性脱毛(lichen planooilarisなど)
産毛+黄色点は男性型脱毛
!毛+黄色点は円形脱毛症
産毛のみで黄色点なしは休止期脱毛:急に起きた場合は甲状腺の病気、手術や出産の後など、体調が落ちているときにおきます。

髪の毛が抜ける 薄くなった トリコスコピー

髪の毛に問題がおきて皮膚科を受診する患者さんは少なくありません。このブログでも何度か取りげてきましたが、今回は関連記事の再掲と皮膚の表面を偏光レンズで拡大して観察する方法、ダーモスコピー(次の記事で)を脱毛している部分で観察するととても診断に役立つ、ということを書きます。

まず、これまでの関連記事から 検索全体のまとめはココ

男性型脱毛(だんせいがただつもう、若はげ、わかはげ)にまつわるウソ(12年前の記事)・・・現在も何んとなく言われている伝説を利用した宣伝は少なくないですね・・・「なんとなく言われている・・自分もなんとなくそう思っている」というところを突くのが上手です。

男性型脱毛(だんせいがただつもう、若はげ、わかはげ)に効果がある程度証明されている治療法(12年前の記事:価格の変動や新規の薬などが記載されておりません。少し現在と異なっている部分があります)

お薬による脱毛・・・原因となっていても、変更しにくいお薬もけっこうあります。

円形脱毛症の治療・・・かぶれさせて治す・・・今でもよく使います(保険が通っていないので医師と患者さんの間でPL法に抵触します。きちんとして説明同意を得て行う必要があります。自費です。病院によって異なりますが私の知る範囲では2000円から3000円ぐらいの設定が多いと思います)。

札幌は紅葉真っ盛りです。

外用剤(塗り薬)を混ぜるということ(2)

(前の記事より続き) [皮膚科医必携! 外用療法・外用指導のポイント]MB Derma デルマ (大谷道輝先生))yより

皮膚の塗り薬は本来1つの製剤ごとに安全性と安定性が確認されて世にでてきます(保険収載)。しかし、利便性(2種類の薬を塗るのは面倒)から現場では混ぜて処方することがあります。でも、まったく異なる薬を混ぜるので注意が必要です。

混ぜると効果が落ちるかもしれない組み合わせについて説明します。

関連記事:研修医のころ教えてもらった軟膏学と包帯の巻き方

記事とは関係ありません。kitakitsune@utoro (石狩浜の野良犬じゃないです為念)

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外用剤(塗り薬)を混ぜるということ(1)

今日は連休の最終日です。当地は気持ちよく晴れて、まさに秋晴れでした。先週届いたMB Dermaという雑誌の特集号 [皮膚科医必携! 外用療法・外用指導のポイント]は外用剤についてでした。外用剤は皮膚科で最もよく使うお薬です。外用剤(塗り薬)は同じようなチューブに入っているので似たような感じにみえますが、全く効果の異なるたくさんの種類があるのです。今回は軟膏を混ぜる、ということの是非についてです。

昔から皮膚科医は自分が良いと思ういくつかの種類の軟膏を混ぜて独自の製剤を作ってきました。先輩に昔の皮膚科の外来は独特のにおいがしていたと聞きました。(現在のように科学的に効果が証明された薬が少なかったため)経験に基づいた様々な薬効があるとされる外用剤を外来で混ぜていたからです。ホーローの板の上で(油絵につかう)パレットナイフで軟膏を混ぜる光景も見たことがあります。皮膚科医にはそれぞれ自分が最もお気に入りの混合があるのです。

しかし、チューブに入った外用剤は、メーカーが安定性(時間がたっても品質が変わらない)を証明し、お上に承認されて、世に出てきます。よもや別の種類の軟膏と混ぜられることをメーカーはまったく想定していません。

異なる二つの外用剤(軟膏)を混ぜるとき、組み合わせによっては、効果が落ちたり、安定性(保存性)が落ちたりします。前振りが長くなりましたので以下は次の階層で。

記事と関係ありません。この夏の思い出

@yorozui river

@shakotan

 

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蚊に刺された 腫れ方は個人個人で違う

今日、当地は雲一つない晴天で、でも心地よい風が吹いていて、なんとなく秋がしのんできているような感じがします。夏はもう終わってしまうのでしょうか(昨年は10月頃まで暑かったのでわかりませんが)。今年の夏も休日は自然の中で(必然的に人ごみを避けて)過ごしました。毎年吸血昆虫に多大な寄付を行っていますが、今年もたくさん刺されました。良く行く露天風呂につかっているときに右腕に痛みを感じ、3-4㎜程で、ずんぐりむっくりした小さな蝉のような黒い虫がかじりついていました。ブユが自分を吸血するところを初めて確認しました。アブと同じでかじって吸血するようなので痛いのです。2日ほどヒリヒリして(もちろん)腫れて、今は硬いしこり(痒疹ようしん、といいます)になっています。

今日のお題は、蚊に刺されたときに、すぐにかゆくなって腫れる場合と数日経って腫れてくる場合があり(小さなお子さんは明らかに虫刺され様のぶつぶつが出ているのに、この2-3日は外に出ていない・・とお母さんが言うことがあります)、その理由についてのリバイバル記事です。たかが虫刺されですが、何かにアレルギー(合わなくなる)ときの初期の反応(感作かんさ、と、誘発ゆうはつ)と何度も繰り返していると症状が軽くなる状況(脱感作、免疫学的寛容)を考えるうえでとても面白い現象です。2007年、13年前の記事です。

蚊に刺された!赤ちゃんとお爺ちゃんで反応が違うわけ

子供の手足にすごく痒い腫れものができた。虫刺されかな?外にも出ていないのに。 これから虫に刺される季節が来ます。蚊などに刺されると痒く盛り上がった赤い発疹ができます。特に子供では、大型で水ぶくれになったり、じくじくした状態になるなど、大人に比べて激しい症状を呈します。また、症状に気づいた日は1日家にいて、外には出なかったと言う患者さんも時々います。また、初めて訪れた場所で虫に刺され、それまでにない激しい症状が起きて皮膚科を受診し、「この土地の虫は毒が強い」と不満をもらした患者さんもいました。 ・・・虫の種類と個人の問題だろうと思っていました・・・ しかし・・・

この虫刺されとその後にできる痒い皮疹の出現時期に関して、なかなか面白い報告があります。(大滝倫子先生、昆虫・ダニ刺咬とアレルギー反応、皮膚疾患を起こす虫と海生動物の図鑑、皮膚病診療増刊号、協和企画、2000)より

まず、蚊に刺されて赤く腫れるのは蚊の唾液に対するアレルギーであると言われています(蚊の唾液自体が反応を起こすのではないようです)。 したがって、初めて刺されたときは、原則として反応は起きません。(アレルギーは、人間関係と同じ・・・相性の良さ悪さは初めて会った時点ではわからない・・・少しお付き合いしてから相性が悪いと判断する・・・嫌だと反応する・・・これがアレルギー)

Mellaby(英国の学者)の実験:外国に出たことのない英国人を選び、英国にいない蚊に刺させてみた。

1. 1回目・・・小さい出血のみで反応なし。

2. 何回か刺された後・・・刺された直後はなんともなく、数時間してから反応が出始め、1-2日で最高に達し、1週間で治る。

3. さらに刺されていると・・・刺された直後から痒い皮疹が出るが1-2時間で消失。しかし、数時間後から再発し、1-2日で最高に達し、1週間で治る。

4. さらに刺されていると・・・刺された直後から痒い皮疹が出るが1-2時間で消失し、その後は反応なし。

5. さらに、さらに刺されていると・・・反応が全く出なくなる。

つまり、刺される回数によって、始めは遅い反応のみ、次に早い反応と遅い反応の両方、その後は早い反応のみ、さらに何度も刺されると反応なし(虫に刺されてもなんともない)という経過をとることがわかりました。

大滝倫子先生が1-63歳の日本人で調べたところ、乳幼児では遅い反応のみ、青年期にかけては早い反応と遅い反応、壮年期にかけては早い反応のみ、その上の年代では反応なし、が多かったと述べておられます。さらに、刺された回数の少ない乳幼児ではかなり激しい反応を示すこともわかりました。また、旅行先などで今まで刺されたことのない蚊に刺された場合も、乳幼児と同じように激しい反応を起こすことが知られています。

これで、子供の虫刺されは症状が激しく、また時に刺された記憶がないこと(刺された直後は反応がないので)の理由がわかりました。夏休みにおじいちゃんの家で3世代が同じ蚊に刺されても、反応は世代ごとに違うということが普通に起きうるということです。 このお話は蚊に留まらず、ヒトがある物質に対してアレルギーを獲得していくときにどのような免疫学的経過をたどるのか、という問題を解決するモデルの1つになりうる、非常に奥の深い現象です。目の前にある現象をジーと良く見ることが大切なんですね。妙に納得。

以下、記事とは関係ない夏の思い出です。

よい丸茄子が採れたので(私のsoul food)オヤキを作った obon@mizukuma base

ちっちゃいのがひっかかっちゃった でも美人だったので写真を @date-north

 

マダニに喰いつかれた どうする?(1)

先々週(5月後半)からマダニにとりつかれた患者さんが来るようになりました。虫を付けたままの方、引っ張って取ったけれど刺し口(口器)が残ってしまった方などです。私はマダニの種類は数種類程度かと思っていましたが、国内には47種類もいるんだそうです。内、喰いつかれるなどの被害の報告のあるマダニは18種類とのことです。(日本皮膚科学会HP: https://www.dermatol.or.jp/qa/qa19/q02.html)

 

 

マダニに喰いつかれても取れば済むことのように思われますが、問題はある種のマダニが持つ菌です。菌が刺されたときに体に入って問題を起こすのです。

ライム病:シュルツェマダニがもっているボレリアというスピロヘータ(梅毒の原因菌が属する菌類です)が感染しておきる病気(最初は刺されたところを中心に丸や輪のような発赤がでる。いったん消えてから顔面神経麻痺や関節炎などが起きる・・・最初の皮膚症状はいったん消えるけれど、しばらくしてもっと重大な問題が出てくる・・・という点は梅毒と似ています。むしろ刺されてから時間がたって症状が出るので原因がわかりにくいです。コネチカット州ライムというところで関節炎を起こす小児が多発し(当初リウマチ熱?と間違われていた)、ある小児科医がマダニとの関連性を明らかにしてこの名前がつきました。

 

重症熱性血小板減少症候群 (SFTS)

文字通り恐ろしい症状を起こし、死にいたることもあります。現時点で患者さんは関西以西に限られていますが、北海道を含む東日本のダニにもウイルスが確認されています(厚労省の説明サイト:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000169522.html)。これはウイルスですので、治療薬がまだありません。今、コロナ(OVID-19)で話題になっているアビガンの効果が期待されています。

 

マダニによる回帰熱

ライム病と同じようにボレリア(ライム病とは異なる)による感染症です。シュルツェマダニ(ライム病と同じ)に刺されて感染します。2013年に北海道で国内第1例が報告されました。“回帰“かいき”の字の通り高熱と平熱を繰り返します。

 

長くなったので、マダニに喰いつかれたときの対応は次に記事で説明します。

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